第147話:黄金の着水、江戸川の空を統べる者 ― 速水誠、衝撃の優勝ゴール ―
2030年4月23日、16時50分。
ボートレース江戸川、第12レース・優勝戦。その第1マークは、もはや競艇場という枠組みを超え、人知を超えたエネルギーが衝突する「神話の戦場」と化していた。
チルト3.5で天高く舞い上がった1号艇・速水誠。
その頭上を、佐賀の龍王・大峰幸太郎の噴煙が覆い、下からは守屋あおいの氷壁と河合準の冷気が突き上げる。
「墜落か、それとも接触による大事故か――」
数万人の観衆が息を呑み、実況が絶叫を上げたその瞬間、世界の時間が、あたかも誠とシロの二人だけに許された「一瞬の静寂」の中に閉じ込められた。
誠の腕の中で、極限まで圧縮されたマブイを全身に溜め込んでいたペキニーズのシロが、ゆっくりと、しかし力強くその天を仰いだ。
古代から受け継がれた魂の記憶が、シロの瞳の中で黄金の炎となって燃え上がる。
「……行くぜ、相棒」
誠の囁きに、シロは短く、しかし大地を揺るがし、江戸川の底に眠る古代の龍をも呼び覚ますような声で叫んだ。
「フゴッ!!!」
それは、単なる犬の鳴き声ではなかった。
シロの全存在から溢れ出した純度100%の黄金マブイが、39号機の底面に集中し、臨界点を超えて爆発的な**「マブイ・プラズマ噴射」**へと変貌したのだ。
「なっ!? 機体がさらに空中で再加速した!? 慣性も、空気抵抗も、全てを無視して突き進んどる!!」
大峰幸太郎は、自身の機体が誠の黄金の余波によって弾き飛ばされる感覚に驚愕した。大峰が全力を注いで展開していた「佐賀の特製噴煙」は、誠が放つ圧倒的な光によって一瞬で分子レベルまで浄化され、中川の上空にはただ、どこまでも透き通った黄金の航跡だけが残された。
「シロ、今だ! 俺たちの、山口支部の意地を……この一瞬に!!」
誠は空中で、ハンドルを全身の力で左へと切り込んだ。
シロの咆哮によって得た爆発的な推進力。それを全て、旋回エネルギーへと強制変換する。チルト3.5の機体は、まるで目に見えない「空中のレール」の上を走るように、急角度でバンク。大峰の煙幕も、河合の冷気も、坂田の嗅覚差しさえも、その「高さ」と「速さ」には届かない。
誠の39号機は、誰もが入り込めない「神のインコース」を空中で描き、そして――。
――ドドォォォォォン!!!!!
江戸川の水面が、黄金の衝撃波によって爆ぜた。
水しぶきの一粒一粒が夕陽を浴びて宝石のように輝く中、誠の機体は完璧な角度で着水。
着水の瞬間に生じる失速を、誠はあえて「泥を深く掴む」ことで解消した。
異常振動症によって研ぎ澄まされた誠の感性が、水底の泥の粘性をグリップ力に変える。
「掴んだ……泥の力を!!」
黄金の機体は、バックストレッチに抜けた瞬間、ロケットエンジンのような再加速を披露。2番手の大峰、3番手のあおいを、1艇身、2艇身、3艇身……瞬く間に4艇身以上引き離し、絶対的なセーフティリードを築き上げた。
「速水誠、独走!! 1マークでシロと共に空を駆け、江戸川に黄金の軌跡を描き切った!! これが山口の、泥の王者の……いや、空を統べる新たな王の力だぁぁ!!」
からくり競艇公式YouTube『カササギ』PV最終確定
> 【完全制覇】速水誠、マブイ開花賞優勝! シロの咆哮が江戸川に伝説を刻む! 視聴者数・累計PVは驚異の4億2,000万を突破!! 新たなる『黄金の時代』の幕開けだ!!
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PVのカウンターは、もはや計測不能な速度で回り続け、全世界のボートレースファンが、この23歳の若者の戴冠に立ち上がった。
2周目、3周目。
誠とシロの絆が生み出す黄金のオーラは、周回を重ねるごとに密度を増していく。
背後で必死に食らいつく大峰の「王者の意地」も、守屋あおいの「嫉妬の氷河」も、今の誠の前では、王者を祝福するパレードの紙吹雪に過ぎない。
そして運命の最終ターンマーク。
誠は桜吹雪が舞う中、最も美しく、最も力強いモンキーターンを決め、そのままゴール板を駆け抜けた。
「ゴールイン!! 優勝は速水誠! 江戸川を黄金に染め上げ、堂々の完全制覇!!」
4. 終幕:夕暮れの誓い
【江戸川マブイ開花賞:最終リザルト】
| 着順 | 選手名 | 状態 | 総評 |
| 優勝 | 速水 誠 | 完全覚醒 | 今季SG初戴冠。黄金の時代の始まり。 |
| 2着 | 大峰 幸太郎 | 感服 | 「完敗バイ。誠くん、あんたが本当の『空』を見せてくれた」 |
| 3着 | 守屋 あおい | 執念 | 「次は、私の隣に釘付けにするから……!」 |
| 4着 | 坂田 結衣 | 脱帽 | 「あの嗅覚、私を超えていたわね……」 |
ピットに帰還した誠を待っていたのは、涙と笑顔の嵐だった。
「師匠ぉぉぉ!! おめでとうっす!! 4億PVっすよ! 宇宙一のレーサーっす!!」
野田あかりが泥だらけの誠に泣きながら飛びつき、瓜生俊樹が静かに、しかし熱い握手を求めてくる。
塩田まなみが「よくやったわね、誠くん」と、聖母のような笑みでその頭を撫でた。
誠は、黄金の紋様が静かに消えていき、いつもの「フゴフゴ」と鼻を鳴らす、少し眠そうなシロを愛おしく抱き上げた。
「……シロ、俺たち、やったな」
夕暮れの江戸川。
オレンジ色の空に、一番星が輝き始める。
誠の戦いは、ここが終着点ではない。
SGの1冠目を手にした彼が見据えるのは、全マブイレーサーの頂点。
黄金の翼を広げた山口の龍と一匹の犬の伝説は、この江戸川の地から、世界へと羽ばたいていく。
江戸川死闘編、完結




