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恐怖はAIから始まる  作者: ことぶき神楽
第二章 断片の収集

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第20話 冥界

「悪霊はAIと一体となっている」

 常磐道のその言葉に、野々村、有江、陽人の三人は明らかにつまらなそうな顔をしている。

「ありきたりですね」

 有江が言葉にしてしまった。

「AIと一体であろうが、倒すべきは悪霊本体ですよね。AIが動くサーバー機ごと片付けられませんか」

 今からでも、準備をしてオフィスに向かいましょうと、有江は先走る。


「いや、そう簡単ではなさそうです。今までの挙動から、悪霊はネットワーク上に存在しているようです。しかも、そのネットワークは冥界と繋がっていると考えられます」


「ネットワークは冥界と繋がっている」

 常磐道のその言葉に、三人は明らかに理解できないといった顔をしている。

「何を言っているのか、わかりません」

 有江が言葉にした。


「悪霊は一か月前から現世にいます。そして、今日までに信号やカーナビを操作して事故を引き起こし、ダンプの運転手や足場作業員、誘拐犯、警察官、そして先ほどのトレーラー運転手に憑依し、命を絶たせています」

 ソファに戻りながら、常磐道は話を続ける。

「冥界に戻らずに、これだけのエネルギーを断続的に使うためには、冥界と繋がる悪魔や鬼のようにエネルギーの供給源が必要なのです」

 野々村と有江もソファに戻る。

「野々村さんが、コンピュータと会話したのも、ウィルスやAIではなく、ネットワーク上の悪霊が語り掛けてきたのでしょう。姉乃さんの失踪も悪霊の仕業に違いありません」


「♯今井予言も悪霊が投稿したのですか」

 眉間にしわを寄せながら野々村は常磐道に尋ねた。

「厳密に言うと、悪霊が投稿したものではなく、AIに指示したものだと思われます」

「なぜですか」

 有江は間髪入れずに尋ねた。もはや、取材対象は野々村ではなく、常磐道になっている。

「昨日、野々村さんに見せていただいたSNSの#今井予言のアカウントは、@imai_prophecyでした。imaiは、I'm AIですね」

「ダジャレですか!」

 それも悪霊の指示なのか。そんなふざけた悪霊がいるのだろうか。


「悪霊はAIに指示し、世論を『AI反対』に導いています」

「人々がAIに傾倒した方が、悪霊は影響力を行使できるのではないですか。なぜ、反対のことをするのでしょう」

 野々村は、疑問を口にする。

「悪霊には、目的があるのでしょう」

 常磐道も自信がないのか、それ以上のことは口にしない。


「ネットワークが冥界と繋がっているなら、わたしたちの手には負えないのではないですか」

 有江は、フードの両耳を摘まみ、風を送り込みながら言った。

 ネットワーク上を自在に動かれては、エネルギーの滞留を検知して対処することができないことを意味している。

「そう、私たちに勝ち目はありません。しかし、おかしいと思いませんか」

 常磐道は、手を組み考えている。


 ビデオを撮影しながら、陽人が左手を挙げている。

 有江が指を差し、振り向いた常磐道に陽人は答える。

「攻撃が地味です」

「正解です。地味で弱いのです」

 常磐道は、悪霊の攻撃が強いことを期待しているのか、有江には真意が見えない。

「この世界のネットワークを支配できるのなら、信号を変える程度の使い方はしないでしょう。人工衛星の一機も落とせばいい」

 確かに。

「それは、何を意味しているのでしょうか」

 話についていこうと野々村は真剣に聞いている。


「ネットワークが冥界と繋がっていることは、この悪霊しか知らないということです」

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