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恐怖はAIから始まる  作者: ことぶき神楽
第二章 断片の収集

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第21話 正体

「他の悪魔や堕天使に知られたらどうなりますか」

 答えを薄々知りながらも、有江は常磐道に尋ねる。

「たちどころに、現世は悪魔たちに支配されるでしょう」

 思ったとおりの答えだった。


 そのとき、常磐道の背後に設置した観測装置がピーというアラーム音を発した。隣でビデオカメラを構えていた陽人が驚き、カメラを下に向ける。

「下根田さん、撮影を続けてください。悪霊がお出ましのようです」

 有江は、玄関に設置した機器が作動したことを確認して、アラーム音を停めた。

「悪霊は、礼儀正しく玄関から入ろうとしていますね。ホントに、この部屋には入れないのですか」

「システムは、悪霊のエネルギーを検知し、それ以上のエネルギーで電磁場を発生させますから、入ることはできませんよ」

 常磐道がそう説明する間にも、玄関のチャイムが何度も鳴り、玄関ドアを叩く音が響いてくる。

 ピンポーン、ピンポーン。ドンドン、ドンッ。ピンポーン。

 外を覗きに行ったところで誰もいないのだから、仕組みを知らなければ怖いに違いない。

 いや、仕組みを知っていても怖い。


 音が鳴り止んだ。

「諦めたようですね」

「悪霊はネットワーク上に戻ったのですか」

「そうだと思います。この部屋にもネットワークを介して入れば、エネルギーの消費は少ないはずですが、私たちが切断していますからね。悪霊も止むを得ず玄関に回ったのでしょう」

 野々村の疑問に常磐道が答えた。


「さて、悪霊の正体も当りが付いていますので、エネルギー総量の測定を企画部にお願いしましょう」

 常磐道は、量子通信機を取り出し、前面カバーを下にスライドさせた。液晶の画面が仄かに光る。

「わたしには、悪霊の正体に見当が付きません」

 有江は、常磐道に尋ねた。

 陽人もカメラを構えたまま、頷いている。

「そうですか。たぶん、ですけど、悪霊の正体は、野々村さんですね」

 野々村は何も言えずに、常磐道を見ている。


「コンピュータが言った『私は、君自身だ』という言葉を信じるのですか」

 有江は驚きを隠せない。

 悪霊がAIと一体であれば、なおさら、その言葉を信じてはいけないはずだ。

「状況証拠は揃っているのですよ」

 常磐道は、野々村に目を移す。

「野々村さんの会社『ソフト・クリムゾン』は、どなたが命名されたのですか」

「私……ですが」

 ダジャレだ! 有江は気が付いた。


「姉乃さんは、野々村さんの声が聞こえたと言っているのに、野々村さんはコンピュータを介しての声しか聞いていません。自分の声を聞いても、それは自分の脳内の声だと勘違いしますからね」

 常磐道は、量子通信機に打ち込みながら話を続ける。

「霊はどこでも通り抜けられるのですよ。それをわざわざ玄関から入ろうとするのですから、習慣とは恐ろしいものです」


 いや、待って。

 だって。

「野々村さんは、生きているのですよ」

 有江は、目の前の野々村を見て言った。

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