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奴隷日記  作者: 幽霊配達員
青の書
72/88

かまくらのぬくもり

 12月初めの大寒波。荒れ狂う雪風の中でみんなが悲鳴を上げながら屋根の雪下ろしに勤しむ日々が続いている。

 雪が降ること自体は珍しくないんだけれど、例年通りなら12月後半ぐらいからなんだよな。しかもこんなにも降り積もったのは魔女の世界に来て初めてだ。

 みんなにばかり働かせるわけにはいかないと俺もシャベルを持って屋根に登ろうとしたんだけど……まぁ一言で一蹴されてしまった。

 いや俺もひ弱な奴隷なことはわかってるんだけれど、もっとこう男を見せたい気持ちもあるっていうか……そんな役の立ち方も少しはしてみたいんだけどな。

 俺にできることなんて、温かくて栄養のあるスープを始めとした美味しい料理を作って待つぐらいだ。

 主に重労働を任せきってこんなので本当にいいのだろうか?

 悶々としながら外の景色を眺めると、今日は久しぶりに晴天を眺められた。

 地面に積もった雪に光が反射して、見ている分には温かそうだと錯覚させられてしまう。当然そんなわけはないんだけれど。

 休日の氷竜を寝かせておいたままみんなで朝食、出勤を見送ってから掃除と洗濯を済ませる。

 毎日やっているからすぐに終わってしまう。ゴミ屋敷だった頃に比べるとかなり住みやすい環境になったもんだ。

 お買い物はまだ禁止されてるんだよな。滑って転んだら大変だって。

 歩道にも雪が積もっていて足を取られるだろうし、そもそも整備されているかも怪しい。

 ある程度自由にはさせてもらえているけれど、雪の世界に閉じ込められているように何もできないのがもどかしい。

 或いは家に氷の鎖で繋がれている感じかな。鎖の長さまでしか動き回れない。

 本を読んで時間を潰そうにも文字が読めないし、凝った料理を作ろうにも材料が足りない。

 必要最低限の買い出しをみんなに任せてしまっていたから、その時の機転で余分な材料を揃えれていないのがな。

 ふと庭を眺めると一面の銀世界が広がっている。

 遊んでしまおうか。昨日までは吹雪いていたせいで俺てもそんな気分にはなれなかったけど、今日は穏やかな快晴。

 ちょっと寒いが、厚着をすれば大丈夫だろう。

 庭に出て早速雪だるまを作っていく。思ったより上手に丸まらない。球と呼ぶにはデコボコしすぎている気がするが気にしない。

 手間取りつつも2つの球を完成させて、2段に重ねようと……思ったより重かった。

 仕方ないから大小の雪玉を隣り合わせにして、昼寝をしている体の雪だるまを完成させた。もちろん表情も忘れていない。穏やかな寝顔を作った。

 次はかまくらでも作ろうか。

 シャベルを両手に雪山を築き、叩いて押し固めているところで声をかけられた。

 こめかみをヒクヒクさせている、とても怒った笑顔の氷竜だ。

 奴隷の分際で家事をさぼって遊んでいることに腹を立てているに違いない。お腹もすいているだろうから余計に腹が立っているはず。

 そう思っていたんだけど、投げかけられた言葉は「風邪を引いたらどうするの~」だった。

 どうも目を離した隙を突いて危険な事をしていたことに怒っていたらしい。とりあえず謝る。

 心配のしかたが吹雪みたいに冷たくて攻撃的だ。

 とにかく氷竜が起きてきたならかまくらなんて作ってる場合じゃない。すぐさまご飯にしなければ。

 家に戻ろうとしたら背中から抱き寄せられて、途中のかまくらを一緒につくりましょ~って提案されてしまった。至近距離の凄んだ笑顔を窺うに、拒否権はなさそうだ。

 氷竜が一緒になってかは早かった。あっという間に形を整えられて、スコップで中を掘り抜いて完成。

 見栄えもいいし中は意外にも寒くない。折角だからと七輪を中に運び入れて、氷竜と一緒にご飯を食べる。

 一緒に遊んでスッキリした分も相まって、険の取れた温かい笑顔を浮かべてくれた。

 たまにはかまくらもいいな。

 冷たい雪で覆うことで中をあたたかく守ってくれる。ドッシリと内に向けた優しさは氷竜に似ているかもしれない。

 寒く冷たいだけじゃないんだ。コーンスープを飲みながら思った。

 ついでに。横になっている雪だるまについては酷評を受けてしまった。

「あまりの恐怖で目を見開いて果てているような表情をしてるわよ~」とドン引き。

 安らかな寝顔を作るのって難しいんだな。

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