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奴隷日記  作者: 幽霊配達員
黒の書
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途絶え蘇る未来

 花が咲き散りゆく季節のなか、俺はまだ重要なことを刹那家のみんなに話せないでいた。

 早く話した方がいいのはわかっているんだけど、打ち明け方を間違えたらとんでもないことになりそうな気がする。

 悶々と出口のわからない悩みを隠しながら、日々の家事をこなしていく。

 何も変わらない買い物の途中で、今日はスライムのリリー・Jさんと鈴に出会う。

 道ばたで御手洗家の二人と一緒にバッタリするのは珍しいって思ってたけど、どうやら鈴の方は俺に狙いを定めていたらしい。

「リリーを貸してあげる。奴隷棒名の儀は終えてるから、何を相談しても大丈夫」

 そう言ってリリー・Jさんを置いて一人で帰っていった。

 どうやら俺は、全然悩みを隠しきれていなかったようだ。気付いているのが端から見ていた鈴だけならいいけど……刹那家のみんなにはまだ勘付かれてないよな。

 切り出すのには時間がかかったけれど、リリー・Jさんに婚礼生誕の儀について相談を。初耳らしくやっぱり酷く動揺してた。

「80歳ぐらいまでしか生きれないなんて短すぎるよ」って叫ぶ。

 あぁ、やっぱり。生きている時間軸が違うんだな。人間なんて80も生きれば充分に天命を全うしたことになるのに。

 痕30年ぐらいしか生きれないって動揺しているリリー・Jさんに、やっぱり短いか尋ねたら物凄い剣幕で怒鳴られた。

 普段温厚なだけに、怒ったときの迫力は凄い。挙げ句の果てに一番短命なスライムの気持ちなんて俺にはわからないんだって嘆かれてしまう。

 動揺するとは思っていたけどここまでとは……ちょっと悪い事しちゃったな。本命の話を切り出しにくくなっちゃった。

 と思ってたら逆ギレ気味に「優太さんの寿命だって僕より長いんでしょ!」って迫られてしまう。

 とても言いづらいけれども、人間の寿命が80年ぐらいだと伝えたら顔がみるみる青ざめていった。

 多分俺はもう5年も猶予は残ってないって伝えると、動揺して泣き出してしまうほどだ。

 そんな一生じゃ短すぎるから、婚礼生誕の儀なんて止めてせめて80年ぐらい生きようって抱きついてくれた。

 俺の生を望んでいることが嬉しい。けども俺の中でその答えはとっくに出てるんだ。

 俺は元の世界で虐待を受けて育った結果、生殖器官をとっくに失っている。だから次の子供なんて望む事すら許されなかった。

 それがあらぬ形とはいえ、可能性が蘇ってきた。

 望んでるんだ。子供を。諦めていた未来を。

 怖いのは短命で死ぬことじゃなくて、次に何も残せず終わってしまうこと。

 それと、刹那家の誰に俺の未来を委ねればいいか……

 生きたくないと言えばウソになるけれど、それ以上に未来が欲しい。

 だから想ってくれるのは嬉しいけれど、俺がいなくなった後に恨みがましい悪霊みたいな存在にしないでほしい。

 少しの間でいいから、俺の子供を愛してほしい。

 リリー・Jさんに打ち明けたおかげで決意が固まった。まだ、迷いは残っているけれど。

 奴隷どうし支え合ってがんばっていこう。やり残したことを、少しでも減らせるように。そして未来のために、思い出をいっぱい刻もう。

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