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奴隷日記  作者: 幽霊配達員
黒の書
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奴隷の役割

 陽射しが少しずつ温かくなり、草花も鮮やかさを増してきた。ただし風は強い。

 そんな春一番と共に、刹那家の母親が奴隷を引き連れて遊びに来た。

 ゲンナリする氷竜にケロっとしてる千羽。いつも通りの亀夜に嬉しそうな子虎と全員反応が違うところがおもしろい。

 明るい理で明理(あかり)さんと読むらしい。ロングの艶やかな黒髪にパッチリした瞳。年齢を感じさせないプロポーションとかなりの美人だ。

 奴隷は赤い肌に鋭い牙と爪。背中にコウモリのような翼が生えた悪魔族だ。ケバブと自己紹介され、握手に応じる。手を取るのがちょっと怖かった。

 にしても奴隷の名前は、どうしてこうも美味しそうなものが多いのだろうか。

 明理さんもケバブさんも勝手知ったるやといった感じに家へズンズン入っていく。

 まず家の中が綺麗に片づいてる事に感動して、しっちゃかめっちゃかな頭を撫でられながら褒めてもらう。もうオーバーすぎる感謝感激の嵐。

 召喚されてくれてありがとうなんて言われる始末だ。

 で俺の部屋の魔方陣を観察した結果、発狂した。

 相当常識外れな魔方陣を描いたようで、よくもまぁこんな魔方陣でデキた奴隷を召喚できたわねと驚嘆する。

 そして、婚礼(こんれい)生誕(せいたん)の儀を無事に執り行えるのかと娘達に詰め寄っていった。

 初めて聞く単語について詳しく聞くと、まだ教えてなかったのと明理さんが声を上げた。

 娘達に詰め寄っている間に、ケバブさんがサラっと教えてくれる。

 奴隷には2種類の召喚理由がある、と。

 ひとつは寂しさを紛らわす為のお友達用。そしてもうひとつは、血を受け継いだ子供を作る為の……生贄。

 魔女は女性しかいない故に繁殖能力がない。故に子供を作るためには媒体が必要になる。

 婚礼生誕の儀を通じて魔女は生命力を揺るがすほどの魔力を、奴隷は肉体そのものを生贄に捧げて新たな生命を誕生させる。

 その成功率は奴隷の鮮度と育んできた日々、絆によって変動するらしい。

 成功は勿論そうだけども……失敗した際に奴隷はなんの糧になることもできずにただただ消滅してしまう。

 つまり次世代の魔女のために、身も心も全て捧げるも者が……奴隷だったんだ。

 衝撃を受けているとケバブさんからフォローをされる。

 生贄になるとはいえ今日明日すぐになんて事もない。奴隷の老いが始まるまではまだまだ時間があるだろう。短命の種族だとしても、まぁ40年ぐらい猶予はあるだろうと。

 そんなはずはない。40年後なんてほぼほぼおじいちゃん。老いなんてとっくに訪れている。聞き捨てならないのは短命の種族ってところだ。

 詳しく聞くと、スライムでも400年は寿命があるとの事。

 まさかと思い魔女の寿命を聞いてみると、その寿命約1万。人間の100倍以上。

 みんなに年齢を聞いてみると、全員見た目の100倍ぐらいの年齢をしていた。

 昔調べたことがある。人間は10代の後半から既にゆっくりと老いが始まっているって。

 子作りに最適な期間に当てはめればまだ余裕はありそうだけれど、もう俺の寿命は10年切っている事間違いない。いやもっと短いかも……

 みんな俺が大袈裟に衝撃を受けていることを笑い飛ばしている。

 笑い事じゃないって叫びたかったけれども、そもそも俺の寿命がどれだけなんてみんなは知っていないんだ。

 マズい、かもしれない。黙っていれば寿命をまっとうできるだろうけど、奴隷としてソレはありなのだろうか。

 子供を成すことが俺を召喚した目的なら、生に縋ることはみんなを裏切る行為に値するのでは……

 明理さんとケバブさんはでっかい爆弾を俺に渡しといて、悠々と帰っていった。

 生か……贄か……

 考える時間がほしいのに、その時間さえも短すぎだ。

 到来した春一番が、俺の心に留まってビュウビュウ吹き荒んでいるようだ。

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