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奴隷日記  作者: 幽霊配達員
赤の書
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優柔不断な死神からの宣告

 スーパーへ買い物へ行くと死神の山田さんが鮮魚コーナーでオロオロしていた。

 今晩は魚にするつもりだろうけど、メニューが決まらないといったところか。

 ちょっと助言したら即決で料理を決めたあたり、山田さんの自己判断力の低さに不安を覚えてしまう。

 メニューが決まって喜びのあまり俺の両手を掴んでブンブン振ってきた時には、そこまで喜ぶ事なのかと思ってしまった。

 で不意に、後一ヶ月もすれば俺が召喚されて一年になるって話を山田さんから切り出される。

 よく覚えてるなと思いつつ月日の早さに感嘆を覚えていると、切迫した勢いの山田さんに白骨化した顔面で迫られてしまう。

 慣れてきたとはいえ、さすがに恐ろしいな。奴隷差別にあたりそうな考えだけれども……

 ただ飛び出してきた内容が、思ったよりも切迫していた。

 召喚されて丁度一年目に俺は、亀夜に殺されるかもしれない。

 山田さんの主が亀夜と仲がいいからこそ、勢い余った忠告が飛び出してきた。山田さんの主も亀夜の徹底ぶりを心配しているんだと。

 心配しすぎだと思った。

 怒りっぽい氷竜でも、常に怒鳴っている千羽でも、力加減が苦手な子虎でもなく、あの冷静沈着で危険の欠片もない亀夜に殺されるだなんてないでしょ……と。

 そう、切り捨てられない情報が山田さんから飛び出してくる。

 どうやら亀夜は、一年を伏目に奴隷へ試練を与えているらしい。不適合なら当然、殺処分。

 そんな誰も突破した事がない、難攻不落の亀夜の試練が待ち構えている。

 そういえば少し前、俺の家族について執拗に尋ねてきてたな。ひょっとして、もう始まっているのか?

 悪寒を感じたというのに、汗が流れてきた。

 モワモワと闇に包まれるような実感が湧いてくる。

 俺、生き延びれないかもしれない。既に地雷を踏んでいる気がする。

 俺の絶望に気付いたのか、山田さんは言いすぎたと謝罪をしてきた。

 悪気がないのはわかってるし、心構えをできるといった面から寧ろ感謝をさせてもらう。

 何も知らなければ、スッと終わってしまっていた。

 今ならまだ、刹那家で過ごした楽しい日々を噛み締められる。

 宣告された残り時間を、大切に過ごさないと。

 だって召喚されていなかったら、楽しいすらわからなかったから。

 だから俺は、諦めてもいいよな。

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