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奴隷日記  作者: 幽霊配達員
赤の書
13/14

知らない名前

 今日、死神と遭遇した。

 いやまぁ、俺と同じ奴隷仲間なんだけど、ちょっとこう、お迎えが来たのかなと勘違いしちゃったんだよな。

 2~3回倒れかけて迷惑かけてしまったけども。

 死神は山田さんと言って、主は亀夜と知り合いだった。

 山田さんの主を始め、奴隷仲間の主たちはみんな歴代の刹那家の奴隷達が長続きしなかった事を心配しているようだ。

 魔女が自らの奴隷を殺す事自体はなんら問題ないけれど、大量の奴隷を虐殺している事は異例なんだとか。

 だからこそ今世代の刹那家奴隷である俺は、気にかけてもらっているのだろう。

 ……たくさんのバケモノに囲まれる形なのは少々心臓に悪いのだけれども。


 お昼からはみんなの服を洋裁していたんだけど、俺の部屋あら物音が聞こえてきた。

 まさか泥棒……もしくは強盗?

 恐れ多いけど、何もしないわけにはいかないから確認する。

 少女だ。四歳ぐらいの魔女が俺の日記帳を開いていた。

 どことなく千羽に似た、オレンジ色の少女。

 どちら様か尋ねると困惑の呟きが返ってきて、なお戸惑う。

 話が進まない硬直。どうしようか悩んでたら、俺の日記帳に視界に映ってきた。

 日本語で書いてあるから魔女には読めない完全極秘の代物。

 俺の日記帳である事を伝えておもしろくないでしょと問うと、目を見開いて驚かれてしまった。

「あなた、名前は?」

 返ってきた返答に首を横に振って答える。俺はまだ名もなき奴隷。だから名乗れない。ちょっと言いそうになっちまったけども。

 逆に名前を尋ねたら「ぼ……私は、ちぃちゃん?」としどろもどろに愛称を教えてくれた。

 不思議な空気感だけど、不快ではない。

 ちぃちゃんは礼儀正しくて、どうやら迷子のようだ。

 一緒にキッチンで並んで料理をして、一緒にお昼を食べて、凄く美味しいと言ってもらえて。

 料理のレパートリーを増やしたいと言われた時には、なぜかレシピをノートに記して残そうって気持ちにさせられた。

 腹が落ち着いたところで、なぜ俺の部屋にいたか話を聞く。

 どうにも図書館に落ちていた呪文書を開いて軽く唱えてみたら、呪文が発動して俺の部屋に飛ばされてたと。

 魔女の図書館って怖ぇな。危険物を落としとくなよ。

 それから詳しく話を聞こうとしたんだけど、急にちぃちゃんの足下から魔方陣が浮かび上がって、二人して驚いている間にちぃちゃんはどこかへ飛ばされてしまったようだ。

 結局、何だったんだろうか。無事ならいいけど。また、会えたらいいな。


 夜、完成した服をみんなに渡したら様々な反応をしてくれた。そして最後に俺の分はと尋ねられた。後回しにしたと伝えたら呆れられてしまった。

 俺の服が一番少ないんだから堂々と作れって、千羽に命令されたよ。


 ―― ――


「ちぃちゃんって、誰?」

 お父さんの奴隷日記を翻訳してノートの書き映してたのはいいんだけど、知らない名前が出てきちゃったな。しかも、私と同じ名前。

「たまたま、だよね」

 不思議に思いながら、今日の翻訳作業を終えたよ。

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