聞き分けがいい事の弱点
裏氷竜状態になって二日。遂に氷竜の休みの日に入り二人っきりの状態に。
今日は刹那家からのサポートなし、俺一人で対応をしなければならない。
機嫌が直ってればと祈りながら起床を待っていたんだが、二階から聞こえてくるドタドタと響く足音は氷竜の不機嫌を表していた。
寝起きで腹を空かしていて苛立っている可能性も高いから即座に昼食へと切り替えた。
無論冷やしたビールも忘れずに、だ。
無難に対応しているつもりだったけど怒鳴る怒鳴る。どうにも氷竜の機嫌の悪さが加速していってるように感じられる。
辛み酒を食らった挙げ句に飲酒を強要されて断ったら、嫌いだから相手をしたくないのかと凄まれてしまった。
あまりの威圧感に硬直してしまったら、溜め息一つ吐かれて部屋から出て行ってしまった。食べかけのチャーハンを残して。
これは、反省だ。手がかからないから大丈夫と思い込んでいたけど、氷竜は俺とつるめなくて寂しかったんだ。
ケンカを売りに行く覚悟を決めよう。賭けるのはちっぽけな奴隷の命だ。
そりゃ怖えよ。けど、今踏み込まなきゃ、今動かずに功を奏しても先が短くなる気がする。
追いかけて呼び止めた背中は冷たく感じられ、振り返って睨み付ける青の瞳は氷柱のような鋭さを感じさせられる。
腰を据えて話をしよう。
そう差し伸べた手は氷竜の氷魔法で切り裂かれる。ムチャクチャ痛くて、かじかんで、感覚がなくなっていって。
けども、手を伸ばして。
俺は万能じゃないから、察しなんてよくないから、言われないと気づけない。
冷たい狂気なんていくらでも感じてきた。ドス黒い冷気に常に晒されてきた。
けど氷竜の冷たさには、ぬくもりが残っているから。だから、温めようと思った。
正直必死で、何がきっかけになったかはわからなかったけど、氷竜は穏やかさを取り戻してくれた。
ホッと胸を撫で下ろしたまではよかったんだけど、氷竜は相当話したい事を溜め込んでいたようで、六時間ノンストップで話し相手をさせられるハメになるとは思ってなかった。
時計を見てから時間の経過に気付いて満足した氷竜は俺を解放してくれたけど、にこやかに脅し文句を告げられた時には背筋が凍る思いだった。
「みんなに害のある様な行動をしたら奴隷ちゃんを殺しちゃうからね~。忘れないでよ~」
緩い口調で誰よりも殺気を込めないでほしいよ感覚がバグるから。
千羽が帰ってくると、俺の怪我と氷竜の機嫌が直っている事について驚かれた。
そして俺の無茶な行動を伝えると「よく死ななかったわね。まっ別にアンタなんて死んでも構わなかったんだからね」
とよくわからない言い回しをされたよ。




