迫り来るもの
あけましておめでとうございます
「……ねえ」
「黙っててください……!」
ティアナは小刻みに震えながら、ドアの方を睨みつけている。迎え撃つようにもみえるし、逃げる準備のようにも見える。睨みつけているその瞳が一瞬だけ揺らいだ時、ドアが勢いよく開いた。
「きたっ!?」
開いたドアの向こうから、この前海辺で見たあの『影』のようなものがゆっくりと迫ってきていた。意思があるのかないのか、それすらも分からない『なにか』はゆっくりと、確実にこちらに迫ってくる。
「なに……またこれ……」
それが近づくごとに、言いようのない不快感、ネガティブな感情が頭を少しずつ支配してくる。ダメ、このままだとこの前みたいに……
「ティアナ……これ……」
特段広くもない部屋の中、逃げる場所もない。もうこうなったら一か八か、戦うしか……
「いつまでも怖がって逃げてるだけのアタシじゃないですからっ!! 今までの分、全部お返ししてやります!」
振り返った刹那、ティアナは『影』に向かって飛び込んでいき、その中心へ手を伸ばした。よく見ると、石のようなものが握られていて……
「死ねぇぇぇぇ!!」
かわいい声でそんなことを叫びながら、その石のようなものがティアナの手の中で爆発を起こした。……ティアナの手も巻き込まれてない?
ティアナの手ごと爆発した『影』……爆炎のようなものが晴れると、その姿は無くなっていた。だけど、ティアナの腕は……
「あれ、無傷?」
「あたりまえです。無策で自爆するほどの馬鹿じゃあありませんアタシは。それにしても……大したことないじゃないですか。ちょっと魔力を込めた爆発物で攻撃するだけで消えるなんて。アタシの銃は効かない……あ、もしかして……」
何を思ったのか、ティアナは突然わたしに銃をむけてきた。
「な、なに?」
「おバカなユイちゃんはアタシのこと、信じてくれますか?」
「は?」
「大丈夫、絶対死にませんから!」
そう言うのと同時に、ティアナはわたしに向けてなんの躊躇いもなく発砲してきた。ほぼゼロ距離でそんなものぶっぱなされたらいくら最強のわたしでも……!
「……!……?……あれ?」
「やっぱり……この武器……効かないんだ……この世界の理から外れた存在には……」
「え?」
ティアナは銃口を眺めながらそう呟き、こんどはわたしの方を見る。
「この武器も、あのクソ陰湿野郎も、ユイちゃんも……みんな、この世界の理の外の存在……じゃないですか? ユイちゃんって、どこからきた、何者なんですか? おバカな振りしてるだけで、本当は……この際だからお互いに全部はっきりさせるべきです。 アタシも包み隠さず全て話しますから」
「じゃあそのクソガキも正体を隠すための嘘?」
「え〜? アタシのどこみてそんなふうに思ったんですか?」
(性格は嘘じゃないのね)
あと、別にわたしも馬鹿なフリとかしてないけど。馬鹿じゃないし。
思わせぶりな態度でティアナは椅子に座り、上目遣いでわたしを見つめながら言う。
「ふふふ、何となくそんな気がしてたんです。ユイちゃんはなにか普通の人と違うって。ま、相手のプロフィールを見れるはずのあの道具で出身地が塗りつぶされてた時点で怪しかったですけど。確信したのはユイちゃんがこの武器……銃の使い方を知ってたからです。本来ならこの世界に存在しないはず、アタシしか持ってないはずのこれを……」
「ティアナはどこで銃を手に入れたの……っていうか、どうして『銃』がこの世界のものじゃないって知ったの?」
道の道具を見つけたとしても、それが別の世界のものだなんて発想は出てこないと思う。
「神サマが教えてくれたんです。異なる世界の力だって。天がアタシに与えた類まれなる力……そこらの雑魚とは違う、特別なアタシだけの力。……だけど」
(口悪……)
「その神サマはアタシに言ったんです。その力を持って世界に正しき鉄槌を。正義の粛清を与えよ、って」




