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ゲーセンの輩  作者: 達磨
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第一話・ようこそ!新人くん!

 父親が、そのての趣味の人で。


 僕も幼い頃から、手を引かれてよく連れていってもらった。


 そこは、僕にとっての夢の国。

 たくさんの想い出がつまった宝箱。


 友達みんなに笑われたけど、僕は大きくなったら、そこで働きたいとずっと思っていた。


 いつか。


 きっと。





 この春。


 どうにかこうにかすべりこんだ大学に通うため、大学に近いとこに住んでいる、僕にとっては姉がわり、従姉妹のすみれさんの部屋にご厄介になることに。


「ふふん♪これで家事をしなくてすむわね」


 なんて、不吉なことを言ってたけど、まあ、お世話になる身だしね。

 すみれさんの部屋に、全く使用していない三畳の広さのロフトがあって、そこが僕の部屋になるのだ。


 え?


 すみれさん?


 うーん。客観的に見れば、美人なんじゃないでしょうかね。スタイルもいいし。

 男まさりな性格や、家事が苦手で、少々がさつなところが難点なのかなあ?

 ほんとの姉みたいに接してきたので、そんな対象として見たことないからなー。


 や。


 まあ、そんな話は置いといて。


 すみれさんは気にするな、なんて言うけど、やっぱり生活費の足しになるよう幾らかはお金を入れたいし、小遣いくらいは自分で稼がなきゃならない。


 てことで。





「あ、ここだ。《芸夢之塔》」


 昨日、面接申込みの電話を入れて、今日、約束の時間にゆとりを持って到着。


「うわー。ビルが丸ごとで、しかも全部ゲームセンターなんだ」


 そう。


 今から僕がバイトの面接を受けるのは、小さな頃からずっと憧れていたゲームセンターのお仕事。


 採用してもらえるかな?


 とりあえず、お店の人と話して取りついでもらおう。

 そう思って、店に入ろうとした矢先。


「ん?」


 が、ご、ごろごろごろ。


 どがっしゃあ!


 出入口の脇に、何故かダストシュートの排出口のようなものがあり。

 そこから、なにやら大きなずだ袋が転がり出てきた。


「ぬお!?な、何!?」


 突然のことに固まって呆けている僕の横を、


「一見さんかな?」


「だろうね。ちょっとやんちゃしちゃったんじゃない?」


「この店でか。はは、南無南無」


 などと会話しながら、常連さんぽい人達が苦笑いで通りすぎていく。


「………」


 ずだ袋がもぞもぞ動き、中から人が出てきた。

 なるほど。確かにちょっとやんちゃそうなお兄さんだ。


「ひいい!な、なんなんだよこの店!いかれてやがる!」


 わたわたと這いだしたお兄さんは、真っ青な顔で怯えながら、そのまま走り去ってしまった。


「………」


 うん。


 この店、なんかおかしいみたい。


 面接、どうしようかな。





「なるほど、基本的に平日は月水金の18時から閉店まで勤務可能。日曜日は、朝から勤務可能なんだね?で、他の曜日は勤務不可、と」


「はい」


「うん。健康そうだし、受け答えも気持ちいいね。よし、採用だ」


「へ?」


 店長さん即答!?


 なんと、僕の採用が決まってしまったらしい。


「君、これから時間ある?」


「は?あ、はい。このあとは特に予定はありませんが」


「なら、軽く店の中を案内がてら、早速勤務に入ってもらおうかな。ちょっと制服用意するから、待ってて」


「………」


 うえ!?


 もう!?今から!?


「あ、こころちゃん?ちょっと事務所いい?新人くん紹介したいから。あ、そうなの?なら、それ済んでからでいいから。うん、よろしく」


 混乱の只中にある僕を放置して、話はどんどん進んでいってしまう。

 店長さんは、インカムで《こころ》という名前の人を呼び出しつつ、事務所から出ていってしまった。


「………」


 急展開についていけない!





「サイズどう?動きにくいとかないかな?」


「えと、はい、大丈夫みたいです」


 制服に着替えて。

 店長さんと待遇面の追加説明を受けていると、事務所の扉が開く。


「てんちょー来たよー。その子が新人くんかね」


 振り返った僕の視界の下の方に女の………子供?


「紹介するよ。古参のバイトでね、源本こころちゃんだ」


 ちっさ!うわちっさ!


 ええ?古参?バイト?えええ?


「やあやあ。よろしく」


 っと。


「よ!よろしくお願いします!本日只今よりお世話になります!」


 び!と手を上げて挨拶してくれる源本さんに、僕も慌てて挨拶を返す。

 続けて自己紹介をしながら、まじまじと目の前のその人を凝視。


 身長が140センチくらいしかない。

 顔立ちとかも可愛くて幼い感じで、ぱっと見どこの小学生かと思ってしまった。


「………」


「………」


「ふむ。新人くんがなにやらしつれーなことを考えているようだから、一応、教えておこー。ちと耳をかしたまえ」


「へあ?は、はい」


 かがみこんだ僕の耳元で、源本さんがごにょごにょと自分の年齢を教えてくれた。証拠の免許証を添えて。


「………」


「………」


「マジですか」


「うむ。こんななりですが」


 むふう。


 初めてお目にかかる。

 これぞ合法ロ…


「はいはい○リとかペ○とか考えなーい。邪念を捨てるのだ。じゃないとパンチすっぞー」


 ばれてーら。

 あなたはエスパーかなにかですか?


「君のようなキャラの子の考えなどお見通しなのですよ?」


「………」


 僕って端からどんなキャラに見えてんですか。すげー気になる。


「んじゃてんちょー、連れてっちゃうけど構わない?」


「うん。よろしく頼むよ」


「ほいほい。では新人くん、ついてくるのだ」


「あ、はい」





「………」


 えと。


 フロアに出る前に、勤務に使う道具類を渡されたのですが。


 インカム。

 今や通信機器は必須だよね。こういうのも憧れてた。


 鍵束。

 ゲームの筐体の様々な箇所を開け閉めするためのアイテム。

 おおう。なんかこれ持ってると、ゲーセン店員って実感できるよね!


 工具。

 ベルトに通して使うケースに、簡易メンテをこなすのに最低限必要な種類を収めてある。


 まあ、ここまではいい。


「新人くんは技つかえないだろーから、しばらくそれ使いなよ。仕事慣れてきたら、いらなくなるからさ」


 わ、技?


 それはその、接客とかメンテとかの技術でない、何か不安な要素に思えるのは気のせいだろうか。


 僕は手渡されたそれをじっと見つめる。

 これで僕に何をしろというのだ。


 この。


 古びた《ガンコン》で。



 そんなに長くは続けないと思います。


 多分。

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