リアル鬼ごっこ その1
誤字脱字等があれば教えていただけると嬉しいです!
「踏み込みが甘いぞ、腕の力も入れすぎだ。」
「はい!」
「がんばれー!負けるなー!」
「勝てるわけないでしょ!」
ここ数ヶ月で少し変わったことがある、それは時々ティーナが僕の家に遊びに来るようになったことだ。
僕が父と打ち込み稽古をしているところの何がそんなに面白いのか分からないが、応援しながらじーっとみてくる。
応援は嬉しいのだが、如何せん気が逸れてしまう……。
「集中しろ」
気が逸れているとバレたらしく木刀で頭を軽く叩かれる、そこそこ痛い。
僕は腹いせに木刀で父の横腹を突こうとしたが、父に簡単に止められて、再度頭を叩かれる。
「甘い、力を込めすぎだ。
それに目線から狙いが丸わかりだぞ。」
「いで……、ちぇ〜。」
どうやらバレバレだったらしい。やはり父は結構強いのだろうか?
そもそも父は自分で学校をやめただけと聞いている。
今でも狩りをしてるのでブランクも少ないだろうし、実力で言うなら学校の生徒達よりも上なのだろうか?
「アトスの集中力も切れてきたし今日は終わりだ。ティーナちゃんと遊んでこい。」
どうやら関係ないことを考えてることに気づかれたらしい。
父のその一言と同時にティーナが笑顔で僕の方に近づいてくる。
「わかった……って、ストップ!ティーナストップ!」
その合図とともに僕の襟首を掴んで走り出すティーナ。
なぜこの子はこんなにも力が強いんだ……。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
最近僕たちが二人ですることは、神力を流す練習をして、ティーナが水の塊をぶつけてくるからそれを避けたり防いだり、あと鬼ごっこと昼寝が多い。
昼寝は遊びに入らないか?
あれからティーナのおかげもあって、道具に神力を流すことはできるようになった。
日常生活においても神力は使う。神導器という道具があり、これに神力を注ぐとその道具に応じた効果が現れる。
鍋を温めて料理をしたり、水を温めて体を洗ったり、道具の種類も多く、使いこなせるととても便利だ。
基本的に神術は誰でも使えるから、神力も当たり前のように流せる…………が、僕はそもそも神術を使うことができなかったので、神力を感じて流すようになるまでかなりかかった。
ティーナは大砲のような水を飛ばすことはできても、水を繊細に操ることはできないらしい。
ティーナは、神術をもっと繊細に扱えるようにしたいらしい。だから、お互いの訓練になる遊びとして、できるだけ小さい水玉を作って僕に飛ばし、僕はそれを避ける、という遊びを最近はしている。
最も、水玉と言っても大鍋位のサイズである。
周りに人がいると危ないので、こういったことをする時は村から離れた草原を使っている。
この草原には人も動物も滅多におらず、周りを気にしなくていいので、最近はとても重宝している。
最近はずっと、同午前に父と打ち込み、ご飯を食べて夕方までここで鬼ごっこをしたりなんだりする予定だ。
ティーナと並んで歩いていると、いつもは草や野花しか見えないこの場所に、草とも野花とも違うものが見えた、人?だろうか……。
「珍しいね、僕たち以外に誰かいるのかな?」
「そうだね〜、一緒に遊んでもらおー!」
水浴びの刑に処される者が1人増えてしまったかもしれない……。
静かに僕は合掌をした、隣から何してんだこの人みたいな目線を感じるような気が……。
そうして声をかけられる程度に近づいて、やはり人だったことがわかった。
相手も僕たちのことに気がついたらしく、驚いたような顔でこちらを見つめる。
「あれー?僕くん達なんでこんな所にいるのかなぁ?迷子かなぁ?」
「こんにちは!わたしとあーくんは遊びに来たの!」
とても高価そうな黒い服を纏った男か女か分からないような人だった。どこか掴みどころがない感じがする。
格好からして、僕たちのようなただの村に住んでる人ではないと思われる。
であればなぜこんなところにいるのだろうか?
「じゃあボクも混ぜてよぉ〜。そうだなぁ……鬼ごっこはどぉ?他になにかしたいことあるかなぁ?」
「鬼ごっこ好きだからいいよー!じゃあわたしとあーくんで逃げるね!」
知らないお兄さん?と鬼ごっこをすることになったらしい。
大人と鬼ごっこをやって逃げられた試しがないので勝てる気がしない。
目の前ではティーナが早々に意気投合したようで仲良くお話している。
「ティーナちゃんお水出せるんだねぇ〜!すごいすご〜い!」
「えへへ〜!私はしんじゅつ?を頑張ってて、あーくんは身体を鍛えてるの!」
「そうなんだぁ〜!じゃあボク追いつけないかもなぁ〜……ちょうどいいかな?
ねぇねぇ!ルールはボクが決めていいかな?いいよね!」
「いいよー!なに鬼するのー?」
「どうしよっかなぁ〜?」
僕たちは基本変わり鬼以外やったことがない。
そのため、どんなルールで遊ぶのか少し楽しみに待ってると……「決めた!」どうやらなにか閃いたらしい。
「じゃあ鬼は変わらずボク固定で、制限時間は他の誰かがここに来るまで、もしくは2人が死んじゃうまでね!」
「「え?」」
「じゃあよ〜いスタートー!!」
そんな叫び声とともに指を鳴らすと、その男は瞬きする間もなく消え、それと同時に空に穴が現れた。
その中から前にティーナが森で出した、湯船のお湯を丸ごとひっくり返したかのような大きさの水の塊が草原に落ちてきた。
塊のまま動いており、父から聞いたことのあるスライムと特徴が一致する。だがこんなにでかいとは聞いていない。
するとそのスライムは形を人に近いなにかへと姿を変え、僕らには到底逃げきれない速度でこちらへ向かってきた。
雰囲気からわかる、これは逃げないとやばい……。
僕は震えるティーナの方を見る。
「ティーナ逃げろ!そして僕の父を呼んできて!!」
「あ……いやぁ…………!」
「クリスティーナ!!」
ティーナから返事がない、魔物が怖くて錯乱してしまい、それどころではないのだろう。
僕達だけでは確実に勝てない、だから少なくとも父の元まで逃げなければ本当に殺されてしまうだろう。
どうやってこの状態のティーナを連れて父の元まで逃げるか考えていると、魔物が腕を大きく伸ばして振りかぶった。
「ティーナ!!はやくここから逃げ……」
瞬間、横っ腹に今までの人生で感じたことの無いほど大きな衝撃と激しい痛みを感じた。
それと同時に、僕は大きく空へ打ち上げられた。




