28大狼との食糧探検記山編
バクバクバク。
大狼が、干した怪魚の肉に美味しそうに喰らいついている。
いやあ、いい食べっぷりだねえ。
……それにしても、この子のご飯、これからどうするかな。
先日倒した特大の怪魚。その肉はあまりにも大きく、一度では到底食べきれなかった。
腐る前に塩漬けにでもしようかと考えたのだが、塩分の摂りすぎはよくないだろう。
そこで大鹿に相談したところ、何やら不思議な力で肉の水分を抜いてくれたのである。
おお、すげえ!
思わず感心していると、大鹿から冷めた視線を向けられた。
……何だよ。
血を吸う剣を持っているやつが、何を驚いているんだ。
そんなことを言いたげな目だった。
いや、あれは俺がやっているわけじゃないんだけどな。
ともあれ、これで数日はもつ。
……数日は、だ。
なくなったら、また魚を捕りに行けばいい。
しかし、毎回あんな怪魚が現れるとも限らないし、川に行けば必ず魚が捕れるという保証もない。
そもそも、あんな大物を毎回相手にするのもどうなんだろう。
うーん。
うーん……。
答えが出ない。
ああ、頭が痛いぜ。
……ないけどね。
仕方ない。
森を歩きながら、食べられそうなものを探してみよう。
こうして、大狼のご飯を探す探検が始まったのだった。
*
まず目についたのは、倒木の根元に生えていたキノコ。
おお、立派なキノコじゃないか。
これ、食べられるんじゃない?
大鹿に見せてみる。
……。
睨まれた。
あ、駄目ですか。
そりゃそうだよな。
毒キノコかもしれないし、適当なものを食べさせるわけにはいかない。
食べ物でふざけちゃいけないね。
気を取り直して、次へ行こう。
しばらく歩くと、今度は枝いっぱいに実をつけた木を見つけた。
おお、果実!
これはよさそうじゃないか。
大鹿に確かめてから、大狼に一つ差し出してみる。
大狼は鼻先を近づけ、くんくんと匂いを嗅いだ。
そして、ぱくり。
おっ、食べた!
どうだ?
美味しいか?
大狼はもう一つ食べると、満足したのか顔を背けてしまった。
え?
もういらないの?
そんなには食べられない?
そっかあ。
まあ、果物だけで腹いっぱいにはならないよな。
困った。
こいつ、体が大きいから食べる量も相当なものだ。
何かこう、腹持ちのいいものはないだろうか。
そんなことを考えていた、そのときだった。
大狼が突然、駆け出した。
お、おい!
どうした!?
慌てて後を追う。
しばらく進んだところで、大狼は足を止めた。
そこには、見上げるほど大きな葉を広げた植物が生えていた。
太い茎が地面から何本も伸びている。
なんだこれ。
葉っぱ、でかっ!
俺の体がすっぽり隠れそうなんだけど。
大狼はその根元に鼻先を押しつけ、前足で地面を掻き始めた。
ザッ、ザッ、ザッ。
……ん?
ここ掘れワンワン?
いや、狼だけど。
何か埋まっているのか?
大狼がこちらを見上げる。
その目は、妙に期待に満ちていた。
えー、掘るものなの?
とりあえず、大鹿から授かった蔦の杖を手に取る。
鍬みたいな形にならないかな。
そう考えると、蔦がするすると動き始めた。
先端が平たく広がり、土を掘り起こせそうな形になる。
おお!
鍬だ!
本当にできた!
便利だなあ、これ。
……また大鹿に呆れられそうだけど。
まあ、いいや。
さっそく掘ってみよう。
ザクッ。
ザクッ。
土は思ったより柔らかく、鍬がすんなりと入っていく。
しばらく掘り進めると、茶色い塊が顔を出した。
お?
なんだ?
周囲の土を慎重に取り除く。
すると、丸くごつごつした大きな塊が現れた。
……芋?
これ、ジャガイモに似てるな。
いや、待てよ。
この大きな葉っぱと太い茎。
どちらかというとサトイモか?
昔、畑で見たことがあるような……。
さらに掘ってみる。
すると、大きな塊の周囲に、小さな塊がいくつもくっついていた。
おお!
親芋と子芋みたいじゃないか!
……いや、そもそもこれ、本当に芋なのか?
見た目だけじゃ分からないよな。
大狼が鼻を鳴らした。
そして、掘り出した塊に勢いよくかぶりつこうとする。
待て待て待て!
まだ食べられるか確認してないだろ!
静止が間に合わずかぶりついた。
んーまー食べられると言うことか。
よかったな!
ガリッ。
ゴリッ。
……すごい音だな。
それ、硬くないの?
大狼は構わず食べ続けている。
まあ、美味しそうだからいいか。
それにしても、ずいぶん大きな芋だ。
一つで結構な量がある。
これなら、魚が捕れない日でも腹の足しにはなるかもしれない。
……ん?
待てよ。
親芋と子芋。
ということは……。
これ、植えたら増えるんじゃないか?
確かサトイモって、芋を植えて育てるんだったよな。
ジャガイモもそうだ。
だったら、これだって増やせるかもしれない。
大狼を見る。
大狼は二つ目の芋にかぶりつこうとしていた。
あっ!
ちょっと待った!
全部食べるな!
いくつか残しておけば、もっと増やせるかもしれないんだぞ!
……。
大狼が首をかしげた。
ああ、そうだよな。
そんなこと言われても分からないよな。
よし。
じゃあ、いくつか持って帰ろう。
それで、試しに植えてみようじゃないか。
上手くいけば、食べ物に困らなくなるかもしれない。
そう考えると、なんだか楽しくなってきた。
ふふふ。
まさか異世界に来て、農業を始めることになるとはな。
……いや、待て。
俺、今は人間じゃないんだった。
首なし騎士が畑を耕す。
しかも、食べるのは狼。
……何だ、この状況。
まあ、いいか。
美味しいものが増えるなら、それに越したことはない。
よーし!
目指せ、食糧自給自足!




