二人の聖女
ーーよし! 今日も頑張るぞ!
ラビィは作業所に置いてあった本から、アクセサリーの作り方を学んだ。本には細かに基本的な魔石の作り方や、細工の仕方が書いてあった。最初は不格好だったものも練習を重ねるにつれだんだんと形になってくる。
ーー忘れないように、学んだこと、教えて貰ったことは全部記録しよう!
ラビィは魔法が使えないので、ノートに記録を残した。
晴れたある日のこと。
お屋敷で黙々と作業していたラビィは、シリウスに気分転換にと外に連れ出されていた。
馬車が目的地に到着する。ラビィは真っ白なワンピースを着ていて、髪の毛に雪の結晶のヘアピンを付けている。シリウスも今日はコートに白地のシャツを着ていて……なんだかいつもよりカジュアルな装いだ。馬車を降りるときにさりげなく彼女の小さな手を引いた。
「ーーラビィさま。今日のお姿も可愛らしいですね」
勿論、彼らの周りには他の侍女たちもいる。
二人はそのまま商店街に入る。パンフレットを見ると、お食事処、お土産売り場、記念碑、展望台がある。公園を抜けた先の展望台に二人は進んで行った。
展望台の階段を手を繋いで上る。長い長い階段の先は、海や街が一望できる場所だった。
侍女にまっしろなもふもふのマフラーと手袋を渡される。
ーー風が冷たい。でも、すばらしい景色。
ラビィは街の様子を眺めていた。晴れ晴れとした青空。大きな海。潮風に乗って肌に触れる水滴。空には竜が大きな翼を広げて飛んでいる。
ーー竜って大きいのね。
ちょうど、鐘が鳴り、アナウンスが流れる。船が船着き場に到着した合図のようだ。
二人の後ろで様子を伺っていた侍女はシリウスにそっと声を掛ける。今日は彼の仕事の都合で教団にすぐに戻らないといけない。ラビィは少し残念な表情をしていた。
ーーシリウスさんはすごくお忙しいのに、時間を作ってくれたのね。
ラビィは会話中もずっと手を繋いでいたことに気づいて、帰る時に人込みに紛れてさり気なく彼から手を離した。
ーー間近で見る船って大きい。
船から人が荷物を抱えて降りて来る。
ーーこんなにもたくさんの人が乗っていたんだなぁ。
その時、いきなり手を握られた。
ーーんんっ?
船から降りて来る人に押されて、ラビィとシリウスとの距離はだんだんと遠くなっていく。
ーーええええ!?!? ちょっと、待って。私、帰らないといけないのに!
そして、彼女の体は船へと乗船する人の列へ押し込まれた。
ーーあっ。
シリウスを目で追っていた彼女は、彼の側に自分そっくりの人影を見た。
ーーシリウスさん。その人から離れて!
ラビィは自分のことよりもシリウスの身を案じた。ラビィの小さな体はそのまま、船に連れて行かれる。
その体は真っ暗な部屋に押し込まれた。扉は閉められて、外から鍵を掛けられた。背中で扉を押してもビクともしない、彼女の両手は再び光の輪で拘束されていた。
ーーなっ、なんで!?!?
船が大きく揺れる。ラビィはその振動で体勢を崩した。
ーーい、痛っ……!!!
彼女は頭を固い床にぶつけた。部屋は暗く、声も出ず、手も動かせなくて、絶望的な気分だった。
ーーシリウスさん……。
船着き場のチェーンはゆっくりと施錠された。




