表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/24

別れのとき

僕には将来の夢ができた。

歯医者さんになりたい。

そして町の歯医者さん、白瀬先生と働くんだ。

先生の歯を全力で削ってやる。


「先生、僕は歯医者さんになるよ」


はははと先生は笑う。


「そんな立派な仕事じゃないさ。人生は長い。ゆっくり考えないといけないよ」


今日の僕は本気だ。

しかし先生は仕方ないといった口調だ。


「それなら歯医者の腕というのを見せてあげよう」


しまった!

僕が思うやいなや、治療室の椅子に押しつけられ、白衣のお姉さんがエプロンをかける。


「全顎抜歯だ!インプラントが必要になる!オールオンシックスでいこう!」


目隠しのタオルがかけられると、何か物音が聞こえる。


もうだめだ!

両手に力を入れていると、タオルがとられた。


先生のそばにはたくさんの本が置いてある。

歯周病学、口腔外科学、予防歯科学、歯科補綴学。

難しくて読めない。


「君が大人になる頃には古くなってしまっているだろう。だけど僕との思い出だと思ってくれればうれしいね」


先生の教科書!

僕は涙が出た。


「先生、そんなお別れみたいなことを言わないでよ」


はははと先生は笑う。


「お別れなんだ」


先生は大きなかばんを取り出した。


「これから旅行に出かけてくる。たくさん勉強しないと、歯医者さんにはなれないよ」


先生はまた、はははと笑ってクリニックをあとにした。

すると怖いお兄さんが、入れ違うように現れた。


「先生なら旅行に出かけたよ」


お兄さんは舌打ちして出て行った。

残っている白衣のお姉さんにたずねる。


「先生はどこに旅行に出かけたの?」


白衣のお姉さんは首をかしげた。

旅行。

旅行なら帰ってくるはずだ。

だけど涙がこぼれる。


先生がくれた本を読めるように、僕はたくさん勉強するよ。


〜そのあとも人と別れるたび、僕は先生を思い出す〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ