第039話 - 地下の奥深く
―陸神ホールディングス。
それはかつて、旧日本国でも有数の大企業として人々の間で名を馳せていた。
過去には倒産寸前の中小企業や航空企業を資金提供等で救い出したこともある。
外資系超大手投資ファンドでもあった彼らは、それだでも数千億単位での利益を叩き出す程であった。
その大手大企業は今―。
バタムッ
車のドアを潔く閉める。
「―寄って貰いたいところがある。」
大企業の回転軸に言われるがまま駅を越えて反対側の町へと出た。
「ここが今の本社だ。」
結城と斎藤二人は顔を合わせて戸惑った。
仕方なくもない、そこにあるのは「大手大企業」と呼べる建物では無かったのだから。
平野の広がる小さな道の一角に、それはあった。
3つの小さなプレハブ小屋。
それはまるで、どこにでも有りそうな見慣れた建物だった。
「まぁ、外見では騒がれても仕方ないか…これが本体じゃないからな。」
そういうと、経営者は慣れた手つきで鍵のロックを開け、「どうぞ」と言わんばかりに2人を小屋に導き出した。
「こ、これは…」
見た目とは正反対の厚さの鉄扉の後ろには、来るものを暗闇に導くかのような階段が続いていた。
3人は何も口を開かずに奥へ、奥へと進んだ。
「…こんな地下通路が、いわきの地下には沢山埋まってるってわけか…」
齋藤が最後尾でこう独り言を言った。
結城とその経営者は、なにも応えない。
暫くずっと暗闇の中を携帯で照らしながら歩く時間が続く。
薄暗さが、ただでさえ寒いこの鉄製の通路の空気を一層冷たくさせる。
陸神は、ある一定の金属製の壁の手前で立ち止まった。
「―ここだ。」
彼はそうだけ告げると、その金属製の壁とやらを思いっきり押して見せた。
「―これは…」
まだまだ若手の議員2人は、思わず口をそろえてこう言った。
目の前には、恐ろしいほどにだたっぴろい空間に、多くの人々が各個人のスペースでパソコンの画面とにらみ合っていた。
その姿は、かつて東京に在った「証券取引所」の姿を連想させる。
「―ここが今の陸神ホールディングスの中核だ、我々も東西紛争と大震災で多くの社員が殉職したがね…」
陸神は唖然とする二人とは反対に、冷淡とここの現状を語った。
見る感覚だけでも、その目の前には1000人近くの人々が持ち場に専念している。
過去に日本を取り巻くほどの大企業は、深い深い地下のそれまた奥深くに存在していた。
紛争から震災までの間、陸神本人はずっとここ福島県に滞在していた。
東京の惨状を地元テレビで確認した本人は、直ぐにここいわき市への本社転属を社員のみ、極秘に知らせていた。
しかしながら、震災で完全に都市機能を失った東京からやってきた社員は4000人のうちたった200名。
彼らは社員以外にも南関東地方の被災難民を中心に、低賃金を条件に正社員として雇っていた。
―そして、ここ福島県いわき市の「知られてはならない巨大地下空間」を利用して地上の一般市民にでさえ極秘で新たな企業体制を創り上げ始めていたのだ。
その「企業体制」と、この地下空間の存在は、もう少し後になって判明することである。




