第033話 - 安西商店
―12月31日、京都府。
今年もあと僅かとなった京都の町。
年越しを京都府で過ごそうと、多くの西日本の国民が集まり始めた今年最後の夕下がり。
「いやぁ~、どこの道も混み過ぎや!ちっとも通れへん。」
「あ、おかえり、玲子。」
私が玲子さんの事をさん付けせずに呼び始めたのもこの年末からだった。
「皆!年越しは安西商店やで!」
「えぇ~!?あんなせまっちいところで~!?」
陽三から激しい不満がブーイングとして漏れ出す。
「安西商店?」
「そそ、サヤには説明しとらんかったね。私の知り合いの店やねん。こんな狭い家よりも他の人と集まって年越しもいいかなぁ~って。」
玲子さんの猛烈な圧しの末、年越しはそこで決定した。
私にとって、「記憶上初めての年越し」となる。
問題のおじさんだったが、結局年末の仕事納めが追い付かず職場で年を越すことになったらしい。
いかにもブラック案件だ。
今年最後の日が落ちるにつれ、住宅街からは喋り声と笑い声が鳴り響く。
交通は混雑を増すばかりであった。
陽三曰く、特に今年の年末は何故か人が多いらしく、京都駅南口のスクランブル交差点では人だかりで交通止めが発生する有様だったらしい。
「サヤ、今年は特に大変だったやね。」
「…うん。」
「来年はきっと良い年になる、頑張ろ。」
暫く煌々と輝く京都の町を背景に、また2人で話していた。
空はもう闇に吸い込まれていった。
21時を過ぎると、出雲家3人の移動が始まる。
安西商店とやらはこの家を出てすぐ右の角にある小さな雑貨屋だ。
「こんばんは~!慎次いますか~?」
雑貨屋とは思えないほどここは混んでいる。
陽三は既に帰りたがりな顔をしているが、この貴重な機会を私は緊張して過ごしていた。
「あ~!れいちゃん、今呼んでくるわ~!」
置くから瓶のケースを持った少年が出てきた。
「お、出雲。久しぶりやな。」
彼は安西慎次。
小学校から玲子さんと同じ学歴を歩んでいるらしく、幼馴染らしい。
「よ!陽三。元気にしとったか!?」
まるでおじさんのような口調で不満げな陽三に声を掛ける。
陽三はもうすぐ中学生だというのに、ずっとそっぽを向いていた。
「そして…なんや出雲、新しい友達か?」
遂に挨拶が私の方まで飛んできた。
ここ最近怪しまれないように人と会話するのを避けていたから、それなりに緊張していた。
「あ、こっちは親戚のサヤ。ここに来るのははじめてやねん。」
玲子さんがすかさず助け船を出す。
「―ね、仕事落ち着いたら3人で少し話さん?陽三はDSやっててええから。」
年の変わり目の2時間前。
今年最後の緊張が、そこにはあった。




