第026話 - 重い腰、竹馬の友。
震災から遂に4ヶ月余りが経過した。
事態を改めて深刻に思い、ようやく重い腰を上げた政府は、5月20日に南関東並びに首都圏復興事業(関東復興省)を群馬県前橋市に配置。
旧首都圏を最優先とし、ようやく復興事業に取り掛かり始めていた。
6月23日。
札幌/青森/秋田/山形/仙台各地から配属された復興事業隊が南関東の主要都市に到着する中、1機の航空機から緊急通報が入った。
《こちら千歳から成田へ飛行中のEARTH ATTACKER1(磁場観測機。B747-8改造)、東京湾上空で磁力、磁場を異常観測しました。…地震の兆候です。》
成田に機能を移転した東京進入管制、本件を承諾の上政府機関に通達。
航空管制官の避難を開始。
気象局、本件を確認。
168時間以内の地震警報を東京都区部、伊豆・小笠原島しょ、千葉内房、神奈川湘南に発表。
復興省、消防庁は本件を確認。
人員最優先で、南関東への進行を中止。
しかし、地震警報が発表されたものの、避難するものはほぼ皆無に近かった。
電力も無ければ情報も正しく入ってはこない。
そんな状況で避難できた者は、電力と情報基地となる物を持っていた1部の被災者のみだった。
磁場の異常を観測してからちょうど24時間。
6月24日午後1時48分。
規模を数値化してM7.6 なる大地震が、再び関東地方を襲った。
震源は東京都港区夢の島近辺、すなわち、都心に最も近い埋立地の直下だった。
「ふぅ~…」
一身純白な少女の姿は、東京国際空港を望む川の向こう。川崎に在った。
明朝、羽田空港スラムを出発してから数日が経過していた。
今現在は南関東で最も西側の共同体「京浜被災者共同体」と偶然ながら合流し、横浜方面に移動している真っ最中だった。
ここに来ただけでも、羽田にいた頃よりは胸騒ぎが収まってきた。
ここ川崎にも、生き残って行くための食料や水は十分にあり、非常食に関しては余るほど残っていた。
「工場ベルトの方の火災も、ようやく鎮火したなぁ」
「雨が降っても収まらなかったのに、不思議ですね。」
「消えない炎はない、って所か?」
「ははは、そりゃお前『明けない夜はない』だろ。」
新宿の共同体とは異なり、ここは皆が役割を果たし、目的を持って明るく行動していた。
「あーおいっ!お茶飲まない?」
金髪の少女が、私にお茶を差し出す。
「あ、ありがと~」
彼女の名は 松江幸乃。
小学校の時に転校してしまった竹馬の友だ。
羽田から西側に移動している時に偶然再開した。
彼女も私と同じくして、震災で当時上野で買い物をしていた姉の行方を見失っていた。
「…幸乃のお姉さん、きっと他の共同体に居るよ。大丈夫だって。」
「ありがとう…」
「そう言えば、あおい。パパとママは?」
「…実は、地震より前に名古屋に行ってから連絡つかなくて…」
「あわ、ごめんっ。何も知らないで聞いちゃって…」
「ううん、全然大丈夫。」
「おぉ~い、幸乃、あおいちゃん。皆また移動するってさ。」
遠くから、幸乃の父親の声が聞こえる。
「それじゃあ、行こっか。」
良き友人に手を引かれ、再び歩き出す。
いままで頼れる仲間が居なかったので、幸乃との再開は嬉しかった。
「うん。」
そう言って彼女のペースに向けて歩き出す。
あの日と同じような、晴天の昼下がり。
悲劇は、やはりあの日の様に再び関東地方を大きくゆさぶった。




