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東西故郷物語 ~Memories of Hometown  作者: ミサゴ
第3章 静けさの町
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第025話 - 羽田



夜も深くなりつつある、旧都「東京」。

あの震災から、遂に3ヵ月が経過していた。

余談だが、西日本でこの災害が報じられたのはちょうど今頃である。



新宿に身を潜めていたあるグループが、徐々に西側へと移動を開始していた。

全東国民の行動は24時間年中無休でICチップにより監視されている。

移動が判明すると直ちに昼夜問わずにヘリがすっ飛んでくる。


『そっちは西側です。直ちに逆方向へ移動しなさい。』



ヘリからどデカいスピーカでこちらへと通達がなされるが、誰しもがその指示には従わなかった。

私達の班は「新宿共同体」。

男女計300名余りで構成される「逃げたくても逃げられない」民族が結集して作られたメンバーだ。



横浜を無理矢理に追い出され、孤立していた一ノ瀬もこのメンバーの一員として行動していた。

「羽田へ行こう。」

ある一人の若い男が、皆の前へ立ちこう言った。

辛うじて生き残っていた無線通信から、こちらと同じく被災者同士で結成された共同体が存在すると通達があったからだ。



ご存知の通り、羽田には震災前に国際空港として機能していた東京国際空港が存在していた。

ここに移動し、拠点を移しておけば新宿等の内陸部よりも食料も水分もあるし、生活が楽になるだろうと考えたからだろう。



皆、顔に「表情」なるものを持っている者は誰一人としていなかった。

家族を失い、親友を失い、愛する息子娘を失い…

様々な理由を持って皆がこのメンバーの一員として行動している。



京浜工業地帯跡地から燃え盛る炎は、皮肉にも電気を失った首都圏を3ヶ月近くも明るく照らし続けている。

鉄道も自動車も機能しなくなったこの地に、信頼出来る移動機関は自らの足を頼りとせざる負えなかった。



ケガ人を何人も抱えている新宿共同体。

歩けぬ者は放ったらかしに置いていかれるだけだった。

震災の日の私と同じ。

皆、羽田という希望に歩んでゆくだけで精一杯だった。



護衛隊のヘリも、私達のことを諦めていつの間にか消え去っていた。

羽田本島までは、かつて空港へのアクセスに利用されていた線路を、ただただ歩く。

途中脱線した車両から、白骨化の進む無数の遺体が窓から飛び出ていた。

鼻をつつく、吐いた時の饐えた臭い。



やっぱり過酷なのはどこも変わり無かった。

水没しかけたトンネル。

暗闇の中、自分の足許のレールや人の死骸を頼りに。前へ前へと進む。



やっとの思いで羽田空港のある羽田本島へ到着したのは、夜も開ける午前7時前だった。

駅の跡から動かぬエスカレーターを上へと登る。

地震と津波により空港としての機能を失った羽田空港には、駐機場や滑走路、ターミナル跡にまで広く無数の仮設住宅が立ち並び、朝早くから活気に溢れていた。



私たち以外にも、千葉やさいたまや相模地方から様々な人々がここに結集して超巨大なスラムを形成し続けていた。

案内人?が、優しく私たちを迎え入れてくれた。

でも、私はこんな所に居てはいけないような胸騒ぎがした。

ここで一息つきたいという思いに対して、体がひたすら前に進み続けるのを拒み続ける。








昼過ぎの羽田スラム。

夜通しで寝ていなかった新宿共同体のメンバー達が、晴天の空の元、ガラス張りのターミナルで雑魚寝をしている彼らの中に、一ノ瀬の姿は無かった。







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