第023話 - 精神的故郷
「サヤ~、ちょいこれ手伝えへ~ん?」
「いいよ~」
「陽三~!ごみ捨てしてきてや~!」
「えぇー」
「コォラ!サヤも手伝ってんだからあんたもやりんさい!」
出雲家の休日は朝から忙しい。
玲子さん達のお母さんに当たる人がご病気で亡くなられてからは、玲子さん自身が母親としてこのお屋敷の統括をしているらしい。
お父さんもいない中、一人でよく家の仕事をこなしてるなぁ、と思わず感心した。
『いただきます!』
多分、このお家に来てから初めてみんなで食べる朝食。
最初にここに来てから博多に行くまでの一人で食べる食事よりかは楽しくて、なにより美味しかった。
「なあなあ、おねーちゃん清水行かん?」
陽三がご飯を口にしながら唐突にこう言う。
「清水?」
私自身の土地勘狂いも災いし、場所がどこか分からない。
「清水寺やで。知らん?」
「ええんちゃう?私も行こかな。」
「サヤ、まだ京都の街廻ったことないでしょ?」
「あ、うん…そう言われればそうかな。」
朝食を済ませ、皿洗いを終えて唐突な計画で始まった外出の準備に入る。
気分はどこか遠足のような感じだ。
いつまで経っても見慣れない緑色のバスに乗り、清水と呼ばれる場所を今度は3人で目指す。
夏に当たる季節に突入した。
外はまるでスチーム付きの電子レンジの如く暑い。
バスの最後列で、3人だけが柔らかい座席に身を沈めている。
京都は、過去まだひとつに纏まっていた日本の時代から「日本人の精神的故郷」と呼ばれ、日々国内外問わず様々な人々がこの地を訪れていたという。
現在でも国交が盛んな西日本に含まれるこの街には、やはり様々な人々の姿があった。
「精神的故郷…かぁ…」
「日本の象徴は『富士山』てよう言われるけど、この街も案外象徴て言われてるんやで。」
そう熱く語るのは陽三だった。
「まぁ、現にここは首都なんやし、象徴には確実になってるやろな。京都人全員とは言わんとしても、首都が東京やった時でもここが首都だって思い込む人もいたやんね。」
玲子さんが詳しい解説をツッコミ気味で入れる。
土日という事もあってか、清水方面の道へは少し混雑していた。
ガラガラのバスとはまるで対照的に、満員のバスが隣の空いた車線に併走してくる。
京都らしい横幅の広い道路を、バスは一定の間隔で動いたり止まったりした。
表に出れば、私が行った博多や姫路や神戸と大差ない光景が広がる。
どこかで見たことがある様な風景が、窓の外を過ぎ去ってゆく。
たった1台のバスに乗るだけでこれだけの発見を見い出せた。




