第014話 - 帰路
○登場人物○
◆出雲サヤ(仮)♀ - 主人公。東側から闇バスで不法入国した高校生。京都で事故に巻き込まれ、玲子達に救出される。
◇出雲玲子♀ - 帰道際、事故に巻き込まれたサヤを救出した。偶然にもサヤと同い年。
◇出雲陽三♂ - 同上。小学生らしくやんちゃで活発的。
◇出雲勲♂ - おじさん。玲子と陽三の父。妻の死後、2人の子供のために姫路で働いている。
博多の、この路地裏の小さな店のラーメンは初めて食べるような味だったが、とてもおいしかった。
記憶をなくす依以前食べた料理を探しても、上位3位くらいには入るほどだった。
落ち着いたところで、気分を取り直し、会計を済ませ、店を出る。
外はまだ全然明るい。
「じゅ、11時…」
スマホのロック画面を見て、駅を発って以来時間を確認する。
早朝に着いてからまだ5時間しか経っていなかった。
体験談を聞いたり、たそがれたり、家族の事を想っていた事もあったかもしれないが、時間の進みが異様だと思うほど遅く感じた。
列島は冬に当たる季節を過ぎ、南から順々に春の陽気が広まってきていた。
九州の春は既に若干の暑さを感じる。
重い話も聞いたけど、折角来たなら少しばかり観光もしたかった。
が、どこかで「ここは別国だ」と思い拒んでいく自分が居た。
…しかも暑い。
姫路のおじさんにも感謝の礼はしたかったし、素直に諦めて博多駅へと向かった。
これも浦沢さんから聞いた話だが、福岡(博多)にはまだ日本列島が一つの纏まった国だったときの皇室が、東京での紛争戦火を避けるためそのまま移動された場所でもある。
港や空港も大規模で、西側は民会政府であるが国際交流は盛んだった。
その為、首都機能も当初は福岡と定める予定であったが、国民投票の結果京都が首都となったらしい。
しかし、景観が重視された京都より博多の方が高層建築に長けていた。
その為人口も京都より若干多く、社会的にも発展しているそうだ。
私としても、正直京都よりここの方が発展しているような気もした。
「こんな事言ったら玲子さんと陽三に怒られちゃうかな。」
特に何もしないままで博多駅に着く。
不慣れな手つきで新幹線の切符を買う。
【電子国民票カード を入れてください】
玲子さんが行きに夜行列車を取った要因がこれだろう。
在来線に比べて、新幹線はどうやら要人が多く使うために警備が過去よりかなり厳重になっているらしい。
受け取った国民票を、早速券売機に入れる。
一瞬ばかりの緊張。
…が、何事もなく切符は出てきた。
ほっと胸を何で下す。
新しく入手した国民票に少々不安を覚えていたが、どうやら本物だった。
―まぁ、本物じゃないものを国民センターから出されたらそれはそれで困るけど。
―流れていく車窓。
列車は広島を発ち、岡山駅へと向かう。
「おじさんとはお礼以外に何を話したらいいんだろう。」
ずっとそんなことばかり考えている。
窓の向こうには、新幹線の速さに追いつけない景色が一瞬で流れ去ってゆく。
遠くには、名前も知らない山々が連なっていた。
この速さに何とか追いつくのは、煌々と光る太陽だけだった。
新幹線の速度とは裏腹に、この日の時間の進みはやけに遅く感じる。
おじさんのもとへの道のりは、長くて遠い。




