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東西故郷物語 ~Memories of Hometown  作者: ミサゴ
第2章 東を背にして
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第011話 - 炎の壁

本話からは、【残酷なシーンと・地震災害の描写】が含まれます。

苦手な方・精神的にダメージを受ける方はお読みにならないことを強くお勧めします。



○登場人物○


◆出雲サヤ(仮)♀ - 主人公。東側から闇バスで不法入国した高校生。京都で事故に巻き込まれ、玲子達に救出される。

◇浦沢 ♂ - 国民センター 国民管理課7番の担当。東京での震災経験について語る。




あの都市の「平和」はどこへ消え失せてしまったのだろう。


西の国の九州という南国に居住した今だから思えた疑問。


1923年9月1日、11時58分32秒。

この地はかつてにも、同じような災害に見舞われたことがあった。


しかし、「次にも同じようなことが起こる可能性がある」と分かっていた地でも、また同じ大都市は建設された。

―たとえ、どのような状況に置かれても。ここは日本の首都だから。



20XX年2月14日。

この日、首都では無くなってしまったものの、なんとか日常を過ごしていた、

―その生活が、8時27分。

一瞬にして切り裂かれた。





ふわっ。


車に乗っている筈なのに、体が浮き上がるように上下に揺さぶられる。

それに心揺さぶられている余裕は無かった。

ドドドドド…と、大地が唸りを上げる。

車が大きく揺さぶられる。

まるで、世界をひっくり返そうとするかのように。



直下型地震であったため、川崎・狛江・世田谷・杉並・中野・練馬・板橋にかけてに立ち並ぶ住宅街は、瞬く間に崩れ落ちていった。



朝の通勤時間帯、「阪神淡路大震災に匹敵する地震が来ても大丈夫」な構造に強化された高速道路群。

それらは、ガソリンと言う着火剤を大量に積んだ自動車の重みで、彼等ものとも破損か倒壊の運命にあった。

冬晴れの青空のもと、それとは対照的に…人を乗せたままの自動車が、闇色の地面へと落ちてゆく。


それは、地上でも同じであった。

地震の激しい(過ぎる)揺れにハンドルを取られたトラック等が、対向車に衝突するか、多くの人がしゃがみ込んでいる歩道に突っ込んだ。

「地震が起きたら直ちに車を路肩に寄せ、キーは掛けたまま避難しろ。」

防災心得の一つとして知られていた地震発生時のドライバーの対応。

これが出来たのは、冷静な行動をしたドライバーの乗る一般形自動車の一部のみだった。



東京・神奈川・千葉・埼玉・茨城では当時走行していた列車の70%余りが脱線した。

東京を象徴する鉄道路線…と言っても過言でなかった山手線。

脱輪し、脱線し、運悪く対向列車との衝突も多発し、50本の運行列車のうち39本の列車が事故を起こした。

自動車とは違い、進路があらかじめ決められていて、敷かれたレールの上をアクセルかブレーキで制御する鉄道車両。

左右方向に進路を変えられる訳もなく、1両が脱輪するだけで綻びから千切れてゆく布の如く脱線していった。

被害は北は小山。西は大月。東は成東にまで及んだ。


地下鉄は水道管の破裂・流入により各路線で水没が進行。

数万人が車内に閉じ込められ亡くなった。


幸いにも、新幹線での脱輪は数十か所で次発生したものの、強震地域が狭かったが故に人的被害は認められなかった。




と、直ぐに倒壊した家屋からは火が出始め、次第に大きな纏まりとなっていく。

いつしかそれは、23区から逃れようとする人々を阻止するかのように、一枚の大きな「壁」となる。


―そう、まるで、日本列島を東西に分断したあの壁の様に…


この瞬間だけで、関東大震災の105,385人、東西紛争の214,936人を大幅に超える、679,274人もの罪なき住民が、

建物から落ち、建物に潰され、人間に踏まれ、人間に圧され、大地に裂かれ、列車に轢かれ、車に轢かれ…ものの数分で亡くなった。

なおこれでも、仙台に首都機能が移動され住民がそちらに流れ込んだ故、死者数は後に新政府が発表した予想より43万人も少なかった。



浦沢は、瓦礫と死体と乗り捨てられた自動車を避け、営業運転のまま中野の実家へと向かった。



―「それで…?」

小さな窓に映る福岡の町を背景にとり、サヤが一言そう言った。

 「…はい、ダメでした。」



新宿までタクシーをひたすら飛ばした。

途中、体中にガラス片が突き刺さった人々を見た。

ビルやマンションから割れて落下したガラスが突き刺さったと思われるそれは、広島に原子爆弾が落とされたあの日の被害者の写真と同じように見えた。

余震で時々ハンドルがとられるが、焦りのあまり気にも留めなかった。



惨劇だった。



炎の壁を眼向うに、ただ呆然と立つしかなかった。

向かい側から強烈な熱を帯びた風が吹き込んでくる。

この時の気温を、何とか補助電源で生き延びていた新宿の気温計が記録している。


47.1℃―




挿絵(By みてみん)




いつしか空は、火災による煙で夜空とは程遠い闇に覆われていたという。





―時刻は昼。

浦沢は、その現実から逃げるようにタクシーに乗り込み、東京を後にした。

【震災の設定】

発生日付:20XX年2月14日木曜日

発生時間午前8時27分57秒

震源地域:木更津市から16.9km北側の東京湾北部

深  さ:海底より地下125km

規  模:マグニチュード8.1

各地震度:

◆震度7  - 東京都お台場一帯・江東区・大田区

◆震度6強 - 23区全域・東京東部・川崎市・横浜市・千葉市・船橋市・木更津市 等

◆震度6弱 - さいたま市・草加市・八潮市・横須賀市・千葉県北西部・内房・茨城県南部 等

◇震度5強 - 埼玉県南部・栃木市・佐野市・古河市・八王子市・相模原市・小笠原諸島 等

◇震度5弱 - 土浦市・つくば市・館林市・栃木県南部・群馬県南部・長野県南西部・茨城県南中部 等

△震度4  - 福島県南部・新潟県南部・長野県・山梨県西部・静岡県東部

○震度3  - 愛知県東部・岐阜県東部・福井県南東部・石川県・富山県・三重県


参考資料・文献:

・日本沈没

・東京灰燼記

・震災画報

・東京震災記

・関東大震災


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