風に吹かれて
「陽愛、陽太、必ず無事でいてくれ」
私の手と陽太の額に優しく手を載せて、
蒼太は寂しそうに笑った。
「蒼太こそ、どうか御無事で」
手を握り返すと、蒼太は少し俯いてそして顔をあげた。
そしてゆっくり抱き締められる。
その肩に顔を埋めていると、
蒼太は私の首に何かを掛けて離れた。
「陽愛にも、これを」
首に下がるそれを見ると、陽太と同じあの空色の珠。
紅い紐で繋がれた薄桜の散るそれが太陽の光に反射している。
蒼太が袖口を上げるとそこにも同じ物が輝いていた。
「これで、ずっと一緒だろう」
気持ちが同じことはわかっていた。
それでも何か形になるものがあると少し安心する。
「戻ってきたら…俺と陽愛の石を陽太のに合わせる。
本来は三つついていた物を俺が分解させたんだ」
照れたように笑う蒼太を愛しく感じて、強く抱き締め返す。
「ありがとうね、沢山私達のために考えてくれて」
蒼太の温もりも、香りも、この力強さも、全てを一緒に持っていきたい。
「そんな泣きそうな顔するなよ」
蒼太が困ったように笑って私の額に口付ける。
「恋しくなっても、泣かないわ」
どうか今だけは笑っていられますように。
蒼太を無事に送り出したいの。
涙を堪えて、笑顔で彼を見つめる。
「そろそろ…行きましょうか」
汐里、夏海さん、田辺渚が支度を終えて待っていた。
「夏海さん、少しの間陽太をよろしくお願いします」
夏海さんに眠る陽太を預けて蒼太の前に立つ。
「どうか、無事でいて。
いつだって蒼太の無事を祈ってる…信じているわ」
その手を握って、少し哀しい色を滲ませているその瞳を覗きこむ。
「愛している…心からずっと、永久に」
皆の視線を無視して、蒼太は私に深く口付けた。
「何があっても…愛しているわ」
少し零れた涙を蒼太は唇でそっとぬぐって、もう一度強く抱き締める。
強く、強く抱き締められるほどに離れがたくなっていく。
そっと離れて、汐里達の待つ方へ向かう。
振り返って呟いたその言葉はきっと、届かずに風に吹かれて消えた。




