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一片の花弁

「陽愛、来てくれ」

窓から庭園を眺めていると、蒼太が私を呼んだ。

そっと傍に寄り添うと、蒼太は私の髪に何かを挿した。

「一番最初に咲いた桜だ」

蒼太は私の頬にそっと触れると、優しく口付けをした。

「たとえ俺が戦場に行っても、ずっと陽愛を想ってる。

桜を見るたびに、陽愛を想い続ける」

愛しさを滲ませた視線が、その手が私を離さない。

「私が桜なら、蒼太は空ね」

そっとその手を包んで、空を見上げる。

何もかも吸い込んで、包み込んでくれるような青空。

「空を見上げる度に、わたしも貴方を想ってる」

何かを誓うような口付け。

この甘い時間が続いて欲しい。

これからも、ずっと。


「陽太、これをお前にやろう」

蒼太が冗談ぽく笑って陽太の頭を撫でた。

そして優しく小さな掌に何かを握らせる。

「それは…?」

紅い紐が陽太の手からはみ出ている。

「腕飾りだ」

陽太の掌の中に空色の珠が1つあった。

空色の珠に薄桜が描かれている。

「綺麗ね…」

小さな掌にそっと結ぶと、陽太はきゃっきゃと笑った。

光にかざすと淡く輝るそれに陽太は暫くみいっていた。

「それは俺と陽愛だ」

蒼太は私と陽太の手をとって、優しく笑う。

「その紅い紐が陽太だ。三人で一つ、そうだろ?」

蒼太の言葉に深く頷いて、笑う。

私たちは三人で一つの家族。

三人で一片の花弁。


私たちの出発の日はもう明日に迫っていた。




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