ブリスケット
最新エピソード掲載日:2026/11/07
「あと六時間だ」
恋人の実家へ昼食に招かれたベンは、皿を持ったまま固まった。
時刻は、もうすぐ正午。テキサスの庭では、巨大なスモーカーから細い煙が上がっている。
その前に立つのは、テンガロンハットにサングラス、貫禄たっぷりの親父。
黒いエプロンには、堂々と「KISS THE COOK」の文字。
「肉が決める。俺たちじゃない」
北部育ちの大学生ベンには、分からないことばかりだった。
ハンバーガーを焼くのも、BBQではないのか。
どうして薪の切り口を見せられているのか。
そして、冷えた瓶ビールを受け取った今、何時になれば帰れるのか。
恋人エマは、そんな二人を見て笑っている。
母親のマーガレットは、長くなりそうな話の合間にサンドイッチを運んでくる。
ようやく肉が皿に載る頃には、庭に明かりが点いていた。
「こんな柔らかい肉、食べたことないです」
親父は何も言わず、次の一切れを少し厚く切った。
薪を運び、火を眺め、誰かと同じ肉の焼き上がりを待つ。
いつしかベンは、この家の裏門の開け方まで覚えていく。
けれど、庭にいる全員が、いつも同じものを見ているわけではない。
楽しそうに話す二人の隣で、言いそびれたこともあった。
台所では、食卓を整える人にも、その人自身の一日が続いていた。
テキサスの庭と、一切れのブリスケット。
少し不器用な人たちが囲む、可笑しくて温かな食卓の物語。
恋人の実家へ昼食に招かれたベンは、皿を持ったまま固まった。
時刻は、もうすぐ正午。テキサスの庭では、巨大なスモーカーから細い煙が上がっている。
その前に立つのは、テンガロンハットにサングラス、貫禄たっぷりの親父。
黒いエプロンには、堂々と「KISS THE COOK」の文字。
「肉が決める。俺たちじゃない」
北部育ちの大学生ベンには、分からないことばかりだった。
ハンバーガーを焼くのも、BBQではないのか。
どうして薪の切り口を見せられているのか。
そして、冷えた瓶ビールを受け取った今、何時になれば帰れるのか。
恋人エマは、そんな二人を見て笑っている。
母親のマーガレットは、長くなりそうな話の合間にサンドイッチを運んでくる。
ようやく肉が皿に載る頃には、庭に明かりが点いていた。
「こんな柔らかい肉、食べたことないです」
親父は何も言わず、次の一切れを少し厚く切った。
薪を運び、火を眺め、誰かと同じ肉の焼き上がりを待つ。
いつしかベンは、この家の裏門の開け方まで覚えていく。
けれど、庭にいる全員が、いつも同じものを見ているわけではない。
楽しそうに話す二人の隣で、言いそびれたこともあった。
台所では、食卓を整える人にも、その人自身の一日が続いていた。
テキサスの庭と、一切れのブリスケット。
少し不器用な人たちが囲む、可笑しくて温かな食卓の物語。
第一話 肉が決める
2026/11/07 20:00
(改)