最強の実力
戦闘シーンって難しいですね
敗れた道義を自身の持つ装備に変更した後、僕はウラノスへと駆けながら考えていた。宇宙神王ウラノスの能力。その名は万象皇訂。設定通りならば。
その能力は、世界を根底から覆す能力だ。
「我は設定する。『そこには既に焔があった』」
ーー瞬間、俺の身が再び炎に包まれた。それは先ほどよりもより熱く何より膨大であった。けれども、
「八大水龍王『1大』」
直後、炎が一瞬にして消え去った。
しかしそれを見ても尚、彼は顔色ひとつ変えず彼は未だに顔に張り付けた笑みを崩すことはなく、その姿はまるで掴みどころのない雲のよう。
有り体にいえば――気味が悪い。
まるで正体から何まで、何一つとして正体が明らかになっていないナニかを前にしているような、本能が訴える気味の悪さ。
「さぁ、準備運動はお互い終わったかな?」
呟いた彼の背後に巨大な炎が浮かび上がる。
その数は十、百、千……いや、それ以上。
あまりにも巨大な、そしてあまりにも多すぎるその力に思わず笑みが溢れる。
僕の姿を見て楽しげに笑った彼は。
「君はこれ如きで死なないだろう?」
瞬間、それらの炎が俺へと向けて襲いかかった。
「当たり前だ。炎天下:モード『焰滅』」
呟いた瞬間炎が霧散した。
「なるほど厄介」
言ってふむと頷いた彼は、パチンと指を鳴らしてみせる。
次の瞬間、玉座の目の前に三つの巨大な光が浮かび上がり、その中から純白のフルプレートアーマーが三体姿を現す。
「この力は曰ば世界の書き換え。だというのに、君はどこまで強いんだい」
――世界の書き換え。
それこそウラノスに許された唯一にして絶対なる権能。
「君なら知っているだろうが、敢えて言おう。宇宙神王ウラノスの神王たる所以。それはこの宇宙の――万物の【設定】を書き換え、操ることにある」
――その名も『万掌皇訂』
それが彼に許された、最強の能力であった。
世界の書き換え。
つまりは世界の【設定】の上書き保存。
実際に原初の神々である創世神に作られた、言うなれば【作り物の世界】を、その根底から覆すことの出来るクソチート。
だが……。
「それならば何故、俺の能力を無かったことに設定しない」
それに対して彼は何も言わない。いや、言えないが正しいか。
代わりに彼は3体のフルプレートアーマーをこちらに向かわせる。
「地母神 『大地隆起』」
突如、地面が水面の様に波打ち巨大な土の波が、フルプレートアーマーを飲み込む。その圧倒的質量にフルプレートアーマーは押し潰され光となって消え失せる。
こいつがただ僕を倒すためだけにここに呼んだのなら。きっと能力を消すだけでこの戦いは終わる。
というより、僕をここに呼ぶ必要はない。なら、なんでこんなところにまで呼んで戦いを挑むのか。
「お前が僕の力を無かったことにしない理由。それは・・・。お前が下界に干渉できなくなってしまったからだ」
その言葉に彼は、否定も肯定もしない。否、その無言こそが、肯定の証なのかもしれない。
「下界に干渉できないお前は、地球が壊れることを阻止できない。何よりお前はそれを看過できない。だからこそ唯一対抗できる僕の力を消せないんだ」
だがならば何故下界に干渉できなくなったウラノスが僕をここに転移すことができたのかという疑問も、既に解消した。
「ところで、柱でコソコソこっちを見てるあなたはなんなんですか」
「ギクリッ!?ば、バレてたかー」
すると後方の柱からタキシードスーツに身を包んだ紫髪の神が出てくる。
身長はおよそ156センチ程だろうか。彼女は笑みを崩さずこちらに歩み寄ってくる。
けれども、これで全員じゃないな。
見れば続々と人影が現れる。10人、100人と増えていき、やがて1000人以上にも及ぶ神々がこちらへと迫ってきていた。
いやどっか出てきてんだよまじで。
「狡智神以外にも、最高神と絶対神が全員。てより、中級を超える神の全員が集まってんのか。なに?僕のこと殺しにきたの?」
「主の器」
それを呟いたウラノスを見て僕は少し眉尻を上げる。
「曰く、その素質を持つものはどんな逆境であっても更なる力をつけて生還する。
曰く必ず歴史に名を残ることをする。
曰く。その素質を持つものはいずれ最強へと至る資格を持つ」
主の器。それはいわば、最強へと至るための前提条件。僕もそうだし、ウラノスだってその器を持つ者の一人だ。いや、僕のこれは仮初か。
「それで?それがどうかしたか?」
彼は俺の言葉にフッと笑うと。
「つまり、僕は今ここでさらに君に強くなってもらいたい。だからね、零」
ーー死んでくれ。
それが紡がれるより早く神々の軍勢は一斉に俺へと攻撃を繰り出した。
いつのまにか周りは既に囲まれ、思わず死を覚悟する程度には恐ろしい攻撃が放たれる。
各々の神が今放てる最高の技を。軍神が強化することでさらに威力を上げる。
その圧倒的な言葉通りの質量攻撃。
例え子供がみても、誰が見ても避けられないと、そう思うだろう。けれども、最強とは。
こんな逆境を逆境と捉えず強大な力で捩じ伏せる者のことを言う。故に、最強をその身で体現する彼は、
「陰陽天 『鬼神』」
その瞬間、1000を超える攻撃が、その一言で崩れ去った。
正確にいえば、その言葉を放つと同時にあたりに突き抜けた圧倒的な覇気。それが、神々の一撃を消し炭にした。
見れば彼の姿は道着から、新たな姿へと変わっていた。
黒と紅の着流しに、黒い羽織。
視界の隅に揺れる髪は銀色に染まっており、肉体活性が過ぎたか、後ろ髪が腰のあたりにまで伸びている。
額からは一本の黒い角が生えており背中からはダークレッド色の巨大なコウモリの翼が一対生えている。
視線の先には愕然と眼を見開く神々の姿があり、その姿を一瞥した俺は拳を構える
「不味いみんな!避けろ!」
ウラノスのその焦った様な声と同時に俺は拳を振り抜く。
「ホッ」
なんとも気の抜けた声と共に打ち出したそれはただの突き。けれどもその一撃は、目の前を更地にした。
ズガァァァァァァァァァン!!
けたたましい音と共にその神殿を破壊し、その拳が砕いた神殿の先の世界は、紫色の地に紫色の空。
天には赤い三日月が登っており、それが夜ということを教えてくれる。
見れば神々は、半数が地に伏した。
悲鳴などなかった。
地に伏したほとんどが中級神だが中には上級神も混ざっているみたいだ。
「安心しろ、加減はした。死んではないだろう」
まぁ、致命傷に変わりはないけどな。
この陰陽天『鬼神』は僕の持つ影神化、太陽神化、鬼神化。この三つを合わせることで発動する一種の奥の手。今回は加減したが下手すれば世界の一つくらい、一瞬で消せる自信がある。
これの上にもう一段階あるが、まあ使う必要性はないか。
神々を見れば皆一様に額に冷や汗を浮かばせていた。それはウラノスも例外ではないらしい。
俺はその光景にニヤリと笑みを浮かべると
「さて、初めての戦闘だ。最低でもそうだな。3割ぐらいは使いたいからな」
ーー精々頑張ってくれよ?
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