怪奇的一般美少女
お化けなんてないさ、お化けなんてうそさ。
俺はその歌が好きでよく歌っていた。家の中の暗い場所、夜の階段、トイレ、全てが怖かった。早く眠ればその恐怖から逃げられたが、昔から将来の事を考慮されて勉強に取り組まされていたため、寝る時間が遅くなる事は避けられなかった。
勉強でも漫画でもテレビでもゲームでも良いが、熱中している間はいい。だがやめた瞬間はどうだ。まだ両親が寝ていなくても、自分が両親より早く眠りにつける保証はない。いつかどこかで必ず一人ぼっちの時間はやってくる。そういう時にはあの歌を歌わないといけなかった。だって怖いから。
「お化けが欲しい!」
怖いのは知らないからだと、ある日思った。普段からお願いするプレゼントは全くと言っていいほど別物になって渡されるけど、それだけはどうしても叶えてほしくて未来を投資した。両親が俺のお願いを鬱陶しく思っていたのは分かっていたからこそ、もう二度とお願いしないという条件まで付けて。
「この子が、お化けだ」
まさか本当に両親が持ってくるなんて思わず、出会った時は思わず石化してしまったものだ。いや本当に……おかしな話だった。何より欲しいと思ってお願いをしたのに両親が本物を連れてくる事を信じていなかったなんて。
真紅で染め上げられた真っ赤な髪に、白無垢の引き振袖。この世の者とは思えない空気と、あの世の者とも思いたくない美貌に一目で釘付けになった。こちらに向けられたその笑顔を、誰がお化けと決めつけた?
「ルールを守ってくれ悠。いいか? まずあの子はお化けだから当然驚かしてくる。お前はそれに絶対に驚くんだ、驚いてなくても。次に正体を聞くな。名前はカゴメマコト。それ以上は知らなくていい」
あの時の父の目は今も忘れられない。俺を憐れんでいるような……慈しむような。
「最後に……カゴメマコトを好きになるな。守れるか?」
その発言の真意は今も分からない。父は死に。
俺は約束を、破ったから。
「貴方様をお慕い申しております、友人様。このカゴメ、いつまでも傍に―――」




