2杯目 紅茶とお菓子とお客様紹介
本日もセントルローズ公爵夫人によって、3人の貴婦人達が茶話会に招待されている────
1人目はリレイア子爵夫人モイラ・ゾルテナ。51才になった彼女は、16年前に15歳年下のリレイア子爵に嫁いでいる。肉づきの良いぽっちゃりとした黒髪で厚化粧──どう説明するとしても…………よくいる中年淑女的容姿。
2人目はジュリナ・アーバンセーン。大陸でも指折りの大富豪の妻で、本人も化粧品の企業を経営している。
この世界の貴族は働くことを恥のように伝える風習があるが、ミスター・アーバンセーンの富の力は既に王族も認める程で、上流階級も無視出来ない。しかも妻であるミセス・アーバンセーンは元侯爵夫人だった。
彼女は背が高く妖艶なスタイルと熟女的魅力を持っている。ブラウンの髪で瞳が大きくとても印象的な…………美人だ。
3人目はダレス男爵夫人ケイティ・カトマンド。結婚4年目で24歳。淡い金色のウェーブのかかった髪で空色の瞳だ。間違いなく可愛らしい要素がそろってはいる。だが、眼鏡をかけている上、ドレスのセンスが あまりよろしくないことで知られている。
ダレス領は農作物も綿花も取れる良い土地だが、王都からは離れた地方の小さなエリアで──いわゆる田舎と見なされがちだ。
先々代セントルローズ公爵夫人ヴィエラは、この3人と同室に入ることを非常に陰鬱に感じた。
彼女達3人が公の社交の場ではそっぽを向き合っていることは明らかだった。何か原因があって仲が悪いわけではないようだが、お互いに合わないと分かるのだろう。
孫の嫁はこの3人をわざわざ一つの檻の中に入れて、恋話をさせようとしている。だが雰囲気の悪さはすでに表れていた。
恐ろしいことにならないといいが────
ヴィエラは1人用ソファで溜め息をつき、紅茶の準備をするマリアの姿を見つめた。
マリアは今日はどうしても、紅茶にハーブをブレンドしたかった。選んだのはカモミールで、相性の良いアールグレイの茶葉と合わせて熱いお湯を注いだ。
カモミールの林檎のような甘く優しい香りは、ストレス軽減・緊張緩和の効能があると言われているのだ。ハーブの抽出も意識して、蒸らし時間は4分とした。
今日のお菓子は料理長と念入りに打ち合わせた結果、フェアリーケーキとバタフライケーキとなった。この2種類はどちらも──いわゆるカップケーキである。
定番家庭菓子だが、嫌う者はまずいない。切り分けたりする刃物も必要ない。
甘味を控えめにした小さいサイズのシンプルなフェアリーケーキを一皿に沢山盛り付ける。
もう一皿にはバタフライケーキだ。カップケーキの上部をカットし、バタークリームやホイップクリーム、カスタードクリーム等を絞り、カットしたケーキ部分を蝶のようにのせる。粉糖も振りかけられ、ドライフルーツも宝石のように飾られた。
全ての準備が整い使用人達が出て行くと、マリアは意を決して顔をあげた。
いつもと同じように この茶話会での秘密厳守についてを説き、そしていつも同じように最後の一言を告げた。
「さあ、素敵なお茶会の始まりよ」
(さて、素敵なお茶会になるものかしらね……?)
ヴィエラは密かに心の中で呟いた。
さあ!第二回茶話会の火蓋が切って落とされました!
カーン!←ゴング鳴ってます




