イベント挑戦
フフフッ。お待たせしました。ホラー展開です。グロ耐性ない方はご遠慮ください。
どうしよう。教室に忘れ物をしちゃった。
取りに行こうかな。めんどくさいなあ。でもこの授業の単位ちょろいんだよなあ。
良し! 行くか~!
マリアは夜風に包まれながらも、学園へと急いだ。
な、何か嫌な予感がする。この邪悪な気配は・・・!?
この乙女ゲームの世界には裏ステージイベントが存在する。
それは何回もやり込んでいく中でヒントを集め、やっと始められるというもので。
あまりのめんどくささとこういったのがヒント(?)という意外さで攻略サイトにも”答えを知ってはもったいない”一点張りの闇イベント。
どうして今行われているの!?
そして、私が生きていた頃には、イージーモードしかクリアした人がいなかったはず。
とどめとばかりのクリア報酬の意味不明さ。
全くもってチャレンジすること自体がナンセンスと言われている。
実際私もクリアしてみたが、この邪気はイージーモードではなにのかもしれない。
一体何がどうなっているのだろうか!?
とにもかくにも後1時間は学園に何者も入る事は許されない。
私は事の成り行きを見届けずに寮への帰路についた。
*****
二つの石碑がある。右には”答えを知りたければ、臓器を捧げよ” 左には”答えを述べよ”それぞれ文字が刻まれている。
「カ、カリン!? これはどういう事だ。」
「答えを知りたければ、臓器を捧げよ・・・。ですわね。フフフ。なら簡単ですわ。答えは自分で探し出すまでです。」
「・・・。」
「これは恐らくフェイクですよ!? これだけ周りに悪魔の腐敗した心臓や臓器が沢山床から召喚されていること自体が固定観念に支配され・・・」
「わ、分かった。それ以上は良い。カリンの考えを信じてみよう。フッ。というか選択肢はもうないのだからな。」
「では行きましょうか。」
彼女の笑顔は時々恐ろしい。
足を動かす度に臓器が潰れて鮮血が飛び散る。
カリンの歩みに迷いは無かった。
吐き気がこみ上げてきたが、グッとこらえてみせる。気張るのだ私。彼女に無理を言ってついてきたのは自分ではないか。
カリンの足手まといになってはならない。
普段あるいている廊下にはまだ息を引き取って間もないであろう、羊たちの腸がカーテンのように連なっていた。
カリンは迷わずかき分けていくが歩を早くすすめ、私が盾になる事にした。
彼女はクスリと微笑み、会釈をしてきた。いや。恐い。可愛いけど、こんな状況だから恐怖しか感じないのだが。
鼻の奥がツンとキツくなる。
おれはハンカチを取り出し、彼女に空気が悪いから口に当てるようお願いした。
15分ほど歩き続けていたのだが。なかなか端にたどり着かない。おかしい。この方角が東塔だと勘違いをさせられていたのか?
窓から見る景色はキチンと動いている。私たちは今何をさせられているのだ。
「殿下。落ち着いてください。この廊下はループをしています。」
「何だって!?」
「あれですよ。殿下もご存知のメビウスの輪。でも、問題ありません。」
「今は3周目ですね。そしてこの腸のカーテンの変化は一つづつ起きていた。つまりは、斜め→45度の方角の腸が答えです。」
「・・・???」
「ええと。そうですね。この臓器をもって先ほどの場所に持っていくのが正解ですね。」
ヌメヌメとした感触に思わず背筋がゾクリとしたが、彼女に取らせたくなかったので、自分を奮い立たせ、天井から引っこ抜く。
その瞬間、辺り一面の穢れた風景が搔き消え、いつもの廊下へと戻った。
私はほっとした。となりのカリンの表情を見ると、何もリアクションがない。
どういう事だ?
「これじゃ足りないわ。何か見落としている。」
「あ、おい。やめろ!」
止める間もなく彼女は逆手の指の皮膚を嚙みちぎり、血をにじませる。
そして、腸の姿から姿を変え紐になったものを捻じ曲げる。そこに指を押し当て線を引いていった。
「これで、ようやく仕上がりましたわ。」
そして、ようやく彼女の目がギラリと輝いた。あれは獲物を追い詰めた肉食獣の目だ。
何が彼女をこんな危険な目に合わせようとするのだろう。
私は頭と抱え込んでしまった。出来れば彼女を危険な目に合わせたくない。
しかし私がいくら説得しようとも彼女は自分の信念を下に私を置いて行くだろう。
だが、私にも信念がある。いつか彼女一人の力で解決できない問題が出てきた時に・・・。
今から積み上げていく信用で彼女に頼ってもらいたいのだ。
カリンが両手で石碑へとリングを掲げ、ようやくイベント(?)とやらは完了したのだった。
>>ここから 選ぶのだ。最強の古代魔導書 もしくは 最強の育毛剤
迷わずカリンは、最強の育毛剤を選び取る。
おれはただとなりで見守っていた。
>> お間違いないでしょうか? YES or NO
>> YES
最強の古代魔導書は空へと溶け出している。
「それで良かったのだろうか。」
「ええ。」
「理由をお伺いしても!?」
「このイベント(?)とやらをしてみて、製作者側が受験者に対して、苦労させるための内容ばかりだったからです。図書室に文献だけを残して、指輪を探し出させ、それを校舎どなりの水鳥に食わせ、一週間放置し、さらに水鳥を捕獲し、胃酸で変容した魔素の光を反射させ、今回のイベントへの挑戦権の沢山あるうちの一つとしたりだとか・・・」
「製作者側からすると、直ぐに強くなれるためのものは最後にも用意しないでしょう。」
「その人側の思考で考えると確かに説得力は感じられるな。」
「それに私にはもう心当たりがついています。」
フフフッと笑う彼女に瞳は今日一いたずらっ子の目をしていた。そしてグルグルだった。(地雷系女子メイク)
「明日が楽しみだな。」
「いいえ。そう簡単にはいかないかもしれません。」
「これ以上の苦労が!?」
「今回は校内ダンジョンの探索であったりだとかの行動力を試されましたが、恐らく次は知恵勝負を挑む事になるはずです。」
彼女には一体どこまで見通せているのだろうか。
この世界にも占いで未來視できる魔術もある。だが、確定した未来は存在しない。
時間軸はいくつにも分岐しているからだ。
だからこそ、彼女の優秀な脳で起こりうる未来を見通しているのは、そんな魔術に頼るよりも余程未来に近い未来を見ているのだ。
「フフフッ。さすがだな。」
「いいえ。私が一見ふざけたことを言いましても、真摯に受け止めてくれる殿下の懐の深さにはかないませんわ。」
「ハハハッ。これは嬉しいな。私はカリン君に興味があるのだ。だからどんな話でも聞いてみたい。君の考え方は私は好きだよ。」
カリンの瞳孔が開き、珍しく目を泳がせる。
「ええっと。そのう。は、恥ずかしいですから。もうやめて下さい・・・。」
手の平をブンブン振り回す。
少しばかり顔を赤らめながら、君はそっと私の唇に人差し指を突き立てた。私が彼女以上に内心あたふたさせられたのは言うまでもないのかもしれない。
ゲームの攻略法を知っているから攻略できるのは当たり前・・・。でも、その材料が現地にあるのなら、ゲームの世界のキャラにも攻略できるはず・・・。そんな思いつきでこの話ができました。




