大量のガラクタの山から光り輝くLR武器を手に入れる
ポストに投函されていた一枚の広告。
<池袋支店ガチャの館。現在大大大ピックアップ中。今なら期間限定、聖光神剣エクスカリバーが引ける大チャンス?!>
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【一回千円、期間限定プレミアムガチャ】
LR排出率
聖光神剣エクスカリバー≪0.002% ≫↑PU
SSR排出率3%
トルネードアックス≪1%≫
覇王の闇杖≪1%≫
フローズンスピア≪1%≫
SR排出率10%
R排出率約86.998%
※レアリティRに関しては、ポーション等のアイテムを含みます。
※尚、上記の確率は計算上100%にならない場合がありますが、不正等は一切行っておりませんので安心してお買い求めください。
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財布の中身、一万円。
バイトの給料日まで残り二十五日。
先日、パチンコでウン万円擦り減らした貧乏人の俺に、一筋の転機が訪れた。
学生時代にダンジョン探索者を諦めてからもう随分と長い年月が経ってしまったが、今一度、人生の大逆転をかませる機会に巡り会えた……そんな予感がしている。
俺は自宅の片隅に放置していた擦り切れたジーパンのポケットの中にひっそりと入っていたなけなしの福沢諭吉を握り締めながら、池袋に存在するガチャの館に足を踏み入れた。
「諭吉。今日こそ俺を祝福しろ」
渋沢栄一?……そんな新参者知らんな。俺を幸福へと導いてくれるのは、シワシワによれてしまった年季の入ったコイツしかいない。どうにも歪な笑みを浮かべる諭吉だが、過去に四十万円という勝ちをもたらしてくれたのだから、必ず絶望の淵から俺を救ってくれるだろう。
超強力な武器さえ手に入れれば労せず大儲けできるはずだ。流行りのダンジョン探索でゼロからスタートするなんて面倒な努力をする必要なんてこれっぽっちもないんだ。
俺みたいなダメ人間でも一瞬で最強になれるチャンスを秘めた機械。迷宮協会が日本中の至る箇所に設置したガチャガチャマシーン、通称、プレミアムガチャだ。ちなみに千円で一回分の抽選が受けられる。
俺は諭吉を機械に挿入してレバーを捻る。十連だ。この一発に俺の魂の全てを注ぎ込む。絶対に負けられない戦いだ。勝て、勝つんだ。ここで全ての運を使い果たして構わない……さすれば道は開かれん。
一分後。
R【木の剣】
R【木の槌】
R【木の杖】
消耗品【ポーション】
R【木の剣】
R【木の盾】
R【アイアンヘルム】
消耗品【毒消し草】
R【木の槌】
SR【ブラストナックル】(Sレア以上確定枠)
「今度ガチャマシーンにしょんべんかけにきてやるから覚悟しとけよ……」
盛大に爆死した。出てきたのは銀色をした変な拳武器、メリケンサックに近い形状をしたブラストナックルというSR武器に加えて、有象無象のR装備と消耗品だけだ。SRは一見価値が高そうに思えるが、ダンジョン探索者が大量に蔓延る今となってはゴミ同然。そこら辺に捨てても何ら困らないし、むしろ邪魔でしかないレベルの産業廃棄物である。基本的に装備は武器屋で購入か鍛造、もしくはモンスターからのドロップしか入手手段がないため、結構集めるのが大変だ。
「やっぱ、簡単に夢は掴めないんだよな……」
冷静になって考えてみれば当然だ。数多あるソシャゲを遥かに凌ぐ渋い排出率。LR出現率は強気な設定の0.002%で全く当てさせる気がない上に、増産可能なSR以下の装備が減っていかないパチンコ仕様に仕上がっており、運が悪い奴は百万回やっても引くことが叶わない、ゲロ吐くレベルの理不尽マシン。これで目玉やらピックアップやら謳っちゃってるから頭がイカれてるとしか思えない。SSRが引ければそれなりに納得はするのだが、残念ながら叶わなかった。
俺は誰もいない無人の館内で、ただ叫ぶ。
「金返せ!」
俺こと日照卓郎二十三歳は、この年齢で早くも抽選に脳を焼かれてしまった底辺級のアルバイターである。世の中がダンジョン探索で湧き上がっている中、毎日のようにパチンコ店に足を運ぶ日々を繰り返していた。そんなドン底状態の俺に救いの手を差し伸べてくれる人間は誰一人としていない。親は依存症の俺を見限って、実家を追放されたっきり連絡を取っていない。こうなってしまったのは他でもない全て自分の責任だ。
「ちねっ、運営…………!!」
けっ、何がピックアップだ馬鹿馬鹿しい。
ガチャの館の隅にある大穴から、獲得した装備品とアイテムがベルトコンベアで流れてきた。
「これがブラストナックル……ね」
試しに装備してみたら意外としっくりくる。サイズ感もぴったりだ。まぁ武器なしでダンジョンに潜るより幾分かマシだな。
イライラの募っていた俺は、機械の前で拳を強く握りしめ、鬱憤を晴らすかのように一発だけ機械を叩く。
「もうガチャは懲り懲りだ…………」
ドンっと、もう一発機械を叩いたら、少し凹んでしまった。ブラストナックルを装備していたから、攻撃力は生身の素手よりもかなり高まっている。意外と脆いもんだ。
「こんなぼったくりガチャを建造する運営が悪いんだからな。壊されたくなかったらまともな排出率に変更しやがれ!」
まだ比較的温厚な俺だったから良かったものの、血の気の盛んな人間だったら、機械自体を破壊しようとするかもしれないだろうに。
「あっ……」
ガチャ全体をボーっと見渡す俺。クレーンゲームのようにガラスで覆われた巨大な仕切りの中に、大量の武器が所狭しと詰まっているのがよく見える。更に目を凝らして奥の方を覗いてみると、一際眩い光を放つ武器が偉そうに鎮座しているではないか。
「あれが聖光神剣エクスカリバーか……」
俺はおもむろに手に入れたアイアンヘルムを頭に装着して顔面全体を覆い隠す。ブラストナックルを装備したままの状態で、右手に木の剣を、左手に木の盾を持った。ジャージ姿で勝負を挑みにきた今の俺の立ち姿は、探索者とはかけ離れた、ただの変態野郎にしか見えないだろう。
「ふっ、俺としたことがこんな簡単な事すらも思い付かなかったとは……我ながら呆れちまうぜ!」
助走を付け、全力疾走でガチャへと近付き、ガラスで覆われた脆弱なガードをぶち破った。
「運営ざまぁーー!!」
中の防衛機能が作動して俺を狙って襲いくるも、全てをかなぐり捨てたギャンブラーの猪突猛進は、もう止められない。
「砕け散れぇぇぇえええ!!」
幾重にも張り巡らされた運営の罠を盾でガード。木の盾は脆くも崩れ去るが、下に落ちている木の盾を再取得し、身を守りながら最新部へとひたすら突き進む。剣だって使い捨てだ。アイアンヘルムは地味に硬くて頭をしっかりと守ってくれる。ゴミ装備にしてはやるじゃないか。
暴れたことによって見るも無惨な外観と化したガチャマシーン内部。更に奥深くへと入り込み――――ついに相対する神剣。
聖なる光を宿した究極の聖剣――――俺の手に渡る。
「これが最強の一振りか……!」
そして、足元に散りばめられていた大量の有象無象の上に、ボロボロに砕けて使い物にならなくなってしまったブラストナックルを容赦なく投棄してやった。
こうして、見向きもされなかったプレミアムガチャ第一弾のピックアップであるLR武器は、アイアンヘルムを被ったジャージ姿のイかれたダンジョン探索者へと渡った。犯行の一部始終をばっちりとドローンに抑えられていたため、世間が少しずつざわ付き始めた。




