プロローグ
「――好きだ……」
青い空、白い壁に囲まれた空間で、波の音に消えてしまいそうな微かな声が聞こえた。
此処はセフィド王国の敷地内にある野外の訓練場。わたし達二人は、少し離れた場所で向かい合っている。つまり、耳鳴りはしても、波の音が聞こえる海でもない。
「王国最強の騎士団長と、若き天才魔導士団長! どっちが勝ってもおかしくないぞ」
「ああ……観てるだけなのに、手が汗で濡れてるぜ」
臭いセリフを吐いている野次馬たちよ……若き天才魔導士が最強の騎士に勝ってもいいのか?
わたしは今、年に一度陛下が主催している娯楽――もとい、王国騎士団員と王国魔導士団員による模擬戦の真っ只中だったりする。
しかも、わたし達で最終戦。勝敗は25対25でわたし達にかかっていた。
「陛下、どちらが勝つと思われますか?」
「どちらでも良いが……。やはり、歴史も長く年功序列としてはシャルール騎士団長と言いたいところか」
わたしは今、遠くの声まで拾える魔法を使っている。だから、だいぶ離れてる王妃様や王様の声も拾えちゃう。魔法って最高ー!
色々あるんだけど、簡単に言うと魔法士団のが数も少なくて歴史も短いんだ。
だから、魔導士団員の数に合わせて50人。団長を入れて51人なんだけど。見世物としても長いのは良くないからね?
そして、わたしと向かい合っている相手はルス・シャルール騎士団長。サラサラの短い黒髪が特徴的で、睫毛の長い切れ長の瞳も最高なんだよね。まぁ、わたしにとっては高嶺の花だ。男の人に贈る言葉として適切かは定かじゃないけど。
それでいて高身長で、軽装の白い団服でも分かる無駄のない肉体美――。今のわたしよりも10センチは高い。
彼は平均10歳で魔法を発現させるこの世界において8歳という早さで目覚め、すぐに頭角を現した。
魔法が普通の世界で唯一個性が現れる現象を『固有魔法』と呼んでいる。同じ系統の魔法でも、用途が違ったり、些細なことであっても何かが違う面白い魔法だ。
「睨み合って全然動かなくないか?」
「あー……氷の人形と、堅物剣聖だからな」
氷の人形と、堅物剣聖。わたし達の異名。
これは少し後回しにして。
彼の固有魔法も『絶対付与』と呼ばれる特殊なもので、魔法を付与することが出来る。彼はどんな武器にでも魔法を付与することが出来て、それを自分の手足として扱えた。あれ? だけど、武器以外に付与している姿は聞かないなー。
この国だけでなく、彼に勝てる騎士はいないだろう。それもあって、彼は陛下から一つの称号を得ていた。
『剣聖』。彼の、本当の二つ名だ。
称号を得るだけの魔法と剣術で多くの功績を残す彼は、堅物でも有名である。
だから堅物剣聖って呼ばれていたり。
そして、そんな彼と手合わせをしようとしているのが魔導士団長のわたし、アンク・ファクティス……実は偽名。
今まさに――わたし達は向かい合って戦うところであって……唐突の告白⁉
いやいや、場面を考えて?
わたしがわざわざ彼のことを解説しているのも、そんな人が告白って? という現実から逃避しようとしているからだ。
考えなくても分かるよね? 絶対に告白をする場面じゃない。だけど、堅物でいつも険しい顔つきの彼の表情が、少しだけ綻んでいるようにすら感じる……。
うん、本物だ……。
いや、でも……万一、わたしの聞き間違いの可能性が大では?
その可能性を見いだそう。
だって、魔導士団長である〝今〟のわたしは――男、だから!
皆さん、ご無沙汰しています。新作投稿始めました。こちらの作品は完結確約となります。本日は、5話まで更新します。少しでも楽しい、興味あると思っていただけましたら、ブックマーク登録していただけると大変嬉しいです。更新日は、あらすじをご覧ください。よろしくお願いします。




