10 明かされる事実
色々と設定が出てきます!
舞台背景も見えてきます!
私たちが合流した時点で、ガネーシャ王国軍もおおよそ集結していたとのことだった。
開戦は近い。
陣全体がピリピリとした緊張感を放っていた。
そして私は、何故か王国軍の司令室へと呼び出されていた。
「お待ちしておりました、ハリス様」
「・・・今の私は平民です。そのようにされる謂われはございません」
部屋には行って早々に司令官が頭を下げてきた。
驚きのあまり、少し口ごもってしまったが、一体これはどういうことなのか?
事態を呑み込めないまま、司令官を訝しげに見ていると、
「おっと、そうでした。ではこれからの作戦をお伝えいたします」
「・・・ただの一平民に伝えても良い内容なのですか?」
「それも踏まえて、お話しさせて頂きます。その前にまずは・・・聖女様、お待たせいたしました。お入りくださいませ」
聖女!?
それはつまり、
「お久しぶりですね、ハリス様。以前よりたくましくなられたようで」
3年ぶりの、アレクサンドリアとの再会だった。
「では、時間もありませんので手短に説明させて頂きます」
3年ぶりのアレクサンドリアは、最後に会った時とは違い、穏やかな表情を浮かべていた。
私が傍に居るにもかかわらず浮かべるその表情は、何故か私の心に小さな痛みを与えていた。
「まず始めに、この軍はただいまを持ってハリス様の指揮下とさせて頂きます」
「・・・は?」
「もちろん、実際の指揮は私がさせて頂きます。そしてハリス様には現場にて功績を挙げて頂きます」
意味が分からない。
第一王子という肩書きがあったならともかく、何も無い一平民がどうしてそんなことになる?
困惑する私をよそに、アレクサンドリアが補足した。
「指揮官殿、それではあまりにも省略しすぎですよ。・・・ハリス様、あなたは加護無しではありません。本当の加護は『戦神の加護』です」
「それは!」
「そうです、だからあなたは『加護無し』と説明され、王籍を抜かれ、追放されたのです」
その加護の名前は知っている。
それこそ百年に一度しか現れない、最上級の加護。
それ故に周辺国全てから敵対されかねない、最も危険な加護。
だから、だからアレクサンドリアは。
「そうです。いずれ婚約破棄される身。であれば、ハリス様から思いを断ち切って頂く必要がある、そう、判断しました」
アレクサンドリアの口調はいつも通りで、しかし何かをかみしめていた。
「・・・それで、これまでの理由は全て分かった。しかし、だ。私が軍の司令官となったことがばれたら、条約違反と見なされかねないぞ?」
私が司令官にならなければ王都は蹂躙されてしまうだろう。
だが私が司令官になったことが発覚したら、他の周辺国まで難癖を付けて攻めてくることになる。
「だからこそ、私がこの場に居るのですよ、ハリス様」
何故、アレクサンドリアが?
「なぜ・・・?」
「『聖女の加護』はこの国の者にしか与えられない加護です。それ故に、癒やしの祝福以外あまり知られておりませんの。相性の良い相手に少しとはいえ力を貸し与えられることも、配下に多少の強化を与えることも」
「・・・まさか、まさか!」
「そのまさかですわ、ハリス様。『聖女の加護』配下強化の事実は既に広め始めております。その上で、対外的にはこの軍を率いるのは私、と言うことになります」
「もちろん、普通に考えれば強化の度合いは強くない、みなそう考えるはずだ。そこで、聖女様が前線に出て鼓舞を行うことでその力は増幅される、という『噂』も同時に流している。そうしておけば、相手はどこかの段階で聖女様率いる部隊をめざして集中攻撃する。兵士で押し切れないとなれば、間違いなく切り札の魔道大砲を出してくるだろう。その時、ハリス様の率いる部隊は魔道大砲の部隊へと急襲していただきたい」
「魔道大砲の部隊を撃破したとなればこの戦争は勝利となり、ハリス様達は恩赦を与えられて国内限定ではありますが自由に動けるようになる手筈です。なお、恩赦につきましては私から陛下に請願しいたしました。かつて愛した人への、せめてもの手向けとして」
「・・・! だが、君の部隊へ魔道大砲が撃ち込まれれば、君は・・・!」
「まぁ、私の命とこの国の民、どちらが優先かとなれば・・・仕方がありませんわ」
そう言い切った時の彼女は、何かを成し遂げきったという顔をしていた。
そんな彼女を見た私は・・・。
その後は日が暮れるまで打ち合わせを行った。
打ち合わせ後に司令室を後にしたとき、私の頬には何かがぬれた後があり、心に刺さり続けていたトゲがとれていた。
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