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監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第二十一章 帰還編

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第五話 少し問題があるかもしれませんね

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 翌朝。

 アメリアは王城の廊下を歩いていた。


 隣にはミリア。

 少し後ろには護衛達。


 窓から差し込む朝日が床を照らしている。


 懐かしい。

 そう思う。


 だが。

 まだ少しだけ現実味がない。



「本当に行かれるのですか?」


 ミリアが聞いた。


「行きます」


「まだ休まれても」


「その場合」


 アメリアは少し考える。


「仕事が増える可能性があります」


 ミリアが額を押さえた。


「戻ってきましたね」


「?」


 意味が分からなかった。



 やがて。

 監査局の執務区画へ到着する。


 見覚えのある扉。

 見覚えのある廊下。


 記憶が少しずつ重なっていく。

 アメリアは静かに扉を開いた。



 最初に気付いたのは若い職員だった。

 書類を運んでいた。


 そして。

 固まった。


「……え?」


 アメリアは軽く会釈する。


「おはようございます」


 沈黙。


 数秒。

 さらに数秒。


 職員は書類を落とした。


「きょ、局長ォォォォォ!!」


 王城中へ響きそうな絶叫だった。


 監査局が止まる。


 完全に。

 見事なほどに。



「は?」

「今なんて?」

「局長?」

「局長って言ったか?」


 あちこちから声が聞こえる。


 次の瞬間。

 椅子が倒れた。

 書類が飛んだ。


 人が走った。

 扉が開いた。


「局長!」

「局長だ!!」

「生きてた!!」

「本物だ!!」


 雪崩だった。

 本当に雪崩だった。


 アメリアは少し後ろへ下がる。


「何でしょう」


「何でしょうじゃありませんよ」


 ミリアが即答した。



「局長!」

「おかえりなさい!」

「良かった!」

「本当に!」


 泣いている職員もいた。


 半年前。

 アメリアが消えた日を思い出す。


 誰も笑わなかった。

 誰も諦めなかった。


 それでも見つからなかった。


 だから。

 目の前にいることが信じられない。


 さらに奥から幹部達が出てくる。

 見覚えのある顔ばかりだった。


 そして。

 副局長が立ち止まる。


「局長」


「はい」


「……本当に局長ですか」


 アメリアは少し考える。

 本当に少しだけ。


「たぶん」


 副局長が天を仰いだ。


「たぶん!?」


 監査局がざわついた。


「記憶が一部曖昧ですので」


 静かな説明。


「ですがアメリア・フォン・アルフォードである可能性は高いかと」


「高いかとじゃないんですよ局長!」


 副局長が叫んだ。

 周囲が泣きながら頷く。


 しばらくして。

 ようやく少し静かになった。


 たぶん。

 少しだけ。


 アメリアは周囲を見回す。

 そして言う。


「では」


 全員が注目する。

 半年ぶりの局長の指示だった。


「業務を再開してください」


 沈黙。


「無理です!」


 即答だった。


「局長!」

「半年ぶりなんですよ!?」

「まず歓迎会です!」

「そうです!」

「今日は仕事になりません!」


 大合唱だった。

 アメリアは困惑する。


「ですが」

「駄目です!」


 さらに即答。


 その時だった。

 監査局入口付近がざわつく。


 振り返る。

 王城勤務の官僚達だった。

 さらに衛兵。

 侍女。

 近くの部署の職員。


 噂を聞いて集まってきたらしい。


「本当に戻ってきたのか……」

「局長だ……」

「生きてたんだ……」


 完全に見世物になっていた。


 アメリアは沈黙した。


 周囲を見る。

 職員達を見る。

 副局長を見る。

 ミリアを見る。


 そして。

 ぽつりと呟く。


「監査局とは」


 一拍。


「このような組織だったでしょうか」


 副局長が涙目で答えた。


「局長が育てた組織ですよ」


 監査局中に笑いが広がる。


 アメリアは少しだけ考えた。


 数秒後。


「そうでしたか」


 静かに頷く。


 そして。


「少し問題があるかもしれませんね」


 監査局はさらに笑いに包まれた。

お読み頂き、ありがとうございます。

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