短編15 『We love petanimals』の活動録その1 後編
帝都の店が立ち並ぶ街角の一角、車の通行が封鎖された広い道路の上できえあああぁぁぁっっ!!っとけたたましい雄叫びをあげながら、大きな翼で黄金の身体を持ち上げるように飛び上がり鋭い蹴爪を高々と突き出し襲い掛かるゴラドン。迎え撃つべく並び立つ兵爵達はその鋭い爪から身を守るように数人が盾で防ぎ、残るメンバーは左右へと退避した。これが開戦の合図となった。
「さて、どうやって戦いましょう?いつもならハーレー君が音頭を取ってくれるんだけど」
「でしたら僭越ながら、私達お客さんメンバーの指揮は私がやらせていただいても?」
「はい構いません」「貴様ほどの実力なら」「お願いします!」
他の三人の承諾を得たペットの猫を肩に乗せたままの金髪の女性ユリコは剣を抜き、水色のドレスをなびかせると優雅な立ち振る舞いで他の兵爵達よりも前に出る。そして他の三人の女性達の位置を確認するように見回す。だがそんな余裕そうな姿はゴラドンの目によくとまり襲っていた兵爵からユリコを標的に切り替えた。ゴラドンは勢いよく兵爵を蹴り飛ばしその勢いでユリコへと襲い掛かった。だがユリコは剣で受け流すように蹴爪の軌道を変えひらりと躱し、そのうえでそのままくるりと一回転し足の付け根にそのまま一撃を叩き込んだ。
「それではカエデさんとプラノさんは上空から援護を、ベルレラさんは私が隙を作るので強力な一撃をお願いしますね」
ユリコの指示に三人は頷き、朱色のロングストレートな髪のプラノは自らの背中に生えている真っ赤な翼を広げ、和服姿の黒髪の女性カエデはペットであるゴラグーンのチトセに跨り二人がゴラドンよりも高く飛び上がった。そしてゴラドンの背後からカエデは弓を、プラノは炎の魔法を放ちゴラドンを攻撃する。だがゴラドンの背にはなんと中年の男がぶら下がっていた。
「うわぁぁ!!やめて、やめてくれぇぇえ!!」
男は暴れるゴラドンの背に必死にしがみついて離さない様子にプラノもカエデも攻撃をいったん中断してしまう。だがゴラドンは二人の攻撃をうっとおしく思ったのかぐるりと身体を振り向かせぎろりと睨む。
「行かせませんよ!!」
注意を外されたユリコはすかさずゴラドンに不意打ち気味に、飛び立とうとした翼に一撃を叩き込む。それは飛び立とうとしていたゴラドンにとって翼に力を込めたタイミングであったために攻撃を受け翼に力が入らず銃身が傾きずしりと倒れ込んだ。
「今だライトニング!!っは!!」
まさにこのタイミングを見計らっていた黒い軍服にも似たような服装に身を包んだ銀髪の女性ベルレラがライトニングと呼んだ立派な一本角を生やしたユニコーンに跨り右脇にランスを構えまさに馬上槍騎兵となり力強く手綱をひいた。ライトニングは力強く駆け出すと真っすぐにゴラドンへと向かい
「アリオスの聖戦!!」
ユニコーンが出せるであろう最高速でゴラドンの身体に二つの穴が穿たれ、ゴラドンは苦しみ悶えるように雄たけびを上げた。効果は絶大であったがまだ理性的であったゴラドンはついに怒りから狂暴化し荒れ狂うように暴れ出した。当然ユリコにも激しく襲い掛かろうとするが、すぐに兵爵達が間に割って入りゴラドンの攻撃から守った。
「助太刀ありがとうございます皆様、ですが大事なお客様にトラブル対応をしていただくなど我が騎士団面目丸つぶれ。お客様のお困りごとに弊騎士団員一同全力を以てサポートしていきます!!」
おそらくみんながお世話になった『We love petanimals』騎士団の団長と思われる眼鏡をかけた小太りの男を中心に周りの兵爵達はゴラドンから距離を取るように展開し、団長が合図を送ると…お店のガレージが開き中から一斉に人より一回り大きい犬や翼のない強靭な足腰を持つゴラグーンなどのペットが一斉に走り出し兵爵達は全員ペットに跨り取り囲むように走り回りゴラドンを翻弄した。ゴラドンが暴れながら攻撃を繰り出しても兵爵を乗せたペットたちはひらりひらりと躱し隙を見てゴラドンに攻撃を叩き込む。その動きはまさに犬のような群れで生活する動物の狩りを彷彿とさせる見事な連携であった。
「ひぃぃ!やめっ…やめてくれぇぇ…俺にあたったらどうするんだよ!怪我したら、俺が怪我したら責任とれるんだろうなぁ!?」
そんな騎士団の攻撃にたじたじになりながらも暴れ回るゴラドンの背で振り回されながら必死にしがみついて離さない男が叫ぶ。だがそんな声は誰の耳にも響かない。むしろ男がしがみついている事でゴラドンの背に攻撃できずに鬱陶しささえ感じていた。
「くそっ…あの男がしがみついていて決定打に欠けるな…もういっそあの男ごと刺した方が」
「…いくら問題を起こした張本人と言えどそれはいけません…どうにかして手を離してくれさえくれればなんとか出来るのですが」
皆がゴラドン討伐に手を焼いているとついにしびれを切らしたのか突然ゴラドンが上空に飛び上がったのだ。その様子を上空からうかがっていたプラノとカエデがすぐに対応にあたった。
「まずい!他の場所に移動すれば被害が拡大する!!ペット交代ーっ!!」
団長の一声でガレージから今度はペガサスや翼があるゴラルーンが飛び出し兵爵達の元に駆け寄り、兵爵達は次々と乗り換え始め翼を広げ空へと飛び出した。またニアを含めた餌を抱えた非戦闘店員もガレージから駆け寄り残されたペット達をすぐ宥めてあげながらガレージへと連れ込んでいた。そして一足先に上空でゴラドンをなんとか抑えていたプラノとカエデに合流し全員で抑え込んでいた。
「ひぃー…助かったぁ…ガーランドもヨハンもいないとなると真正面で戦うの怖いわー」
「まぁまぁプラノちゃん。私達は後ろでゆっくりやらせてもらいましょ」
二人が距離を取り引き続き弓と魔法で攻撃していると、ゴラドンは空中で激しく暴れ狂った末についに背中にいた男を振り払い宙に放り投げられたのだ。
「うわああああああぁぁぁぁぁぁあ!!?」
男の叫び声が辺りに響き渡り一気に戦況が変わった。落下する男を救助するか暴れるゴラドンに対応するか、一瞬の迷いの中で真っ先に動いたのはゴラドンで、驚くことに空中に放り出された男の腕を嘴で咥えてキャッチしたのだ。
「はぁっ、はぁっ、ほ、ほらみろ!こいつは俺の言う事なら何でも聞くんだ!!お前らが話を聞かないから…」
だが次の瞬間、ぶつりっっ…と鈍い音と共に男の身体は咥えられた嘴のところから嚙み千切られ、鮮血を飛び散らせながらまた落下し始めたのだ。その光景に周りのみんなは呆然と見ている事しか出来なかった。ただゴラドンの表情がどこか、妖しくニヤリと笑ったようにも見えたのだ。
だがそんな事も束の間、再度ゴラドンが急降下し男をさらに食らいつこうと襲い掛かる。
「っっ!みぃちゃん!!」
ユリコは即座に剣を高々と掲げると、なんとユリコの肩に乗っていた猫がすぐに剣先に登り器用に立つと、猫がじっと落下する男を見つめた。その瞬間ゴラドンの嘴が男に挟まれるその時なんと男の身体は何もない空中でかくんと真横にずれそのまままるで引っ張られるようにユリコの傍にゆっくりと降ろされた。男は呆然と目をかっぴらいたまま動揺して何も反応できなかった。
「皆さん!被害は出てしまいましたが今こそ好機です!!これ以上の被害を出さない為にも!今!ここで!一気に仕掛けましょう!!」
ユリコの一喝でショッキングな光景に気を取られていた全員が奮起し、まずは団員達が一斉に攻撃を仕掛ける。プラノも自身の得物であるフォークを構え突撃し背中に突き刺す。さらにカエデもチトセに襲わせ鋭い爪でゴラドンの翼をズタズタに引き裂き、カエデもゴラドンの目に矢を命中させた。もはや戦う意思も削がれたゴラドンが逃げ惑うように地上に落ち走ろうとするところをユリコの剣舞が足をズタズタに切り裂いた。そして完全に動けなくなったところを、ベルレラの槍がゴラドンの心の臓を貫き完全に動かなくなったのだ。
「…犯人の容体はどうだ?」
「とりあえず応急処置のおかげで命に別状はありませんが…精神的ショックの影響か酷く衰弱していますね。立ち直れるかどうか…」
事件収束は思いのほか早かった。ゴラドンによる被害は物損程度で済みしかも公共物ばかりだった。人的被害も一人だけで済み兵爵達の軽傷程度で済んだ。戦闘中に来ていた国衛兵爵達が事後処理を早急に済ませ穴の開いた道は封鎖され後日復旧するとなりゴラドンの回収をして解散となった。
「み、皆さん…お疲れ様です、ありがとうございました!」
解散とは言え疲れたペット達を一度休ませるために店の休憩スペースで寛ぐ4人の元にニアが飲み物とお菓子を持って駆け寄ってきた。
「ありがとうニアさん、でもそんな気を遣い過ぎたら身が持たなくなるわよ」
「でも…戦闘が苦手な私に代わって皆さんにあんな危ない事…それに、あの人だって…」
「…あの男は自らの責任の代償を払わされただけに過ぎない。野生動物を飼うと言う事のな」
「ペットを飼うと言うのは可愛いからとか、欲しいから、便利だからとかそんな単純な話ではない。命を預かると言う事。ペットが人間社会に溶け込めなかったときの責任を取ると言う事。彼が口にしていた『テイム』というものがどのような力があるのかは分かりませんが…生き物を人の意のままに操ることなんて出来ていいわけがないのです。きっと彼との関係は表面上でしかなかったのでしょうね」
「そうね…かつて異界人が野生動物を連れ込んできた古い事件でも無害そうなゴラドンが飼い主が見ていない隙に子供を食べていたことがあったって話らしいからね…野生動物は私達とは敵対した関係。完全に無力化でもしない限りは私達を襲うために関係を利用しようと考えているのかもしれませんね」
「とはいえ私達もペットが人を襲う可能性が0だと言い切れることは無いのですよ。お腹が空いたから…躾が足りずいう事を聞かない…そう言う事も珍しくありません。だからこそ、生き物を飼う私達飼い主は同じ街の住人の為にも…そして守るべきペットの為にも、責任を持ち義務やルールを守り命を大切にしないといけないのですから」
そういいながらユリコは猫のみぃちゃんを、カエデはゴラグーンのチトセを、ベルレラはユニコーンのライトニングを、優しく撫でペット達もそれに応えるように顔を摺り寄せるのであった。
「…私家畜の資材買いに来ただけなのに、この疎外感~…」
「あらごめんなさいプラノさん、でも家畜だっておんなじことよ」
「そーじゃなくてぇ~~~…」
「あの…お店のペット達撫でていきますか?」
「撫でるぅ~…」
次回投稿日未定




