ダンジョン戦争 4
私は、フワッチと感覚共有して、オルマン帝国軍部隊の作戦本部を盗み聞きしている。作戦本部はいつにもまして慌ただしく動いてた。
「パーティーの組み換え案はいつできる?」
「今日中にはできます。活動は明後日からになります」
「魔物の強さは変わってませんが、明らかに罠の難易度は上がってます。専門の斥候部隊員がいなければ、解除は厳しそうです」
「それは厳しいな。斥候部隊員は5人しか連れて来てないし、2人は新兵に毛が生えた程度の実力だ」
「攻略パーティーのメインだった剣士のモンドと弓兵のカレンはどうしますか?」
「組み込むことはできん。マルロ大臣からの指示で、予定より大幅に滞在期間が延び、活動資金が危ういらしい。資金調達の為に3分の1の部隊員は冒険者の真似事をさせられている。モンドとカレンはそちらの対応をさせる。二人がいなくても何とかなるだろう」
相当焦っている。因みにモンドさんはカーン子爵の次男さんだ。次男さんと戦わなくていいのは正直ほっとしている。更にスパイ活動は続く。
パーティーの編成案ができたみたいだ。副官が呟く。
「実質スペシャルチームが組めるのは3つだけか・・・」
「5人のパーティーに斥候部隊を組み込んで急遽6人パーティーにしている関係でどうしても・・・・」
「まあいい、とりあえず1組、このパーティーを派遣しよう」
私は急いでメモを取った。
ダンジョンに帰ると私はドヤ顔で報告した。
私はみんなの驚く顔を想像していたが、みんな冷静だった。
「とうとうきたって感じッスね」
「逆に言えば、そのパーティーさえ潰せばいいだけなので、ある意味やりやすいです」
「ところでナタリー先輩、詳しいメンバーを教えてください」
「じゃあ言います。2番の剣士、4番の弓兵、7番の槍使い、9番の魔法使い、11番の回復術士その5人に16番の斥候を編成しています」
(部隊員に番号を振ることを考案したエリーナは本当に優秀だと思う)
ミランダ社長は言う。
「各パーティーのメインアタッカーを集めた感じね。それに斥候部隊員も入れてるし、これはこちらも本気で行かないとね。魔物の運用は二人体制にしましょう。私とヘンリー君、ロンメルさんとタリーザでどうかしら?」
「我はそれで構わん」
「負担は掛かるけど、スペシャルチーム以外の対応はダクネスとエリーナに任せたわ」
そんな感じで、こちらも役割が決まった。とりあえず最初に来るパーティーの分析を行う。
「まず、2番の剣士だが速巧剣の使い手だな。スピードとテクニック重視でそこそこの腕だが、まだまだ甘い。連続攻撃の後に隙ができる。そこを狙え」
流石は骸骨騎士様だ。続いてダークエルフと人間のハーフのエリーナが言う。
「4番の弓兵は、威力も精度も高いのですが、連射ができません。味方に守ってもらって、しっかりと対象を狙える環境でなければ、力を発揮できないと思います。ダメージにならなくてもいいので、継続的に攻撃を加え続ければ無力化できます」
エリーナはダークエルフの血を引いているだけあって、弓については詳しいようだ。
「7番の槍使いは、守備力が高く、威力のある攻撃ができる反面スピードがない。タンクとして採用されているみたいですね。
9番の魔法使いは連射型ですね。4番の弓使いとセットで使うことで、互いの弱点を補わせるのが、作戦本部の意図でしょうね。
11番の回復術士と16番の斥候部隊員は専門職ですね。回復と罠解除以外は期待されてないので、戦力としては無視していいレベルですね」
ヘンリーさんの分析も的確だ。
「このメンバーでどのような作戦でくるか、こちらはどうすれば対処できるか、意見を出してくれ」
骸骨騎士様の指示で、更に深い作戦を練っていった。
そして3日後、スペシャルチームがやって来た。情報のとおりで間違いない。
作戦としては、ダンジョンボスまでたどり着くまでに撤退に追い込む。そのほうが「スペシャルチームをもってしもダンジョンボスにさえたどり着けない。お前らはポンコツ部隊だ!!とっとと国に帰れ!!」というメッセージを与えることができるからだ。
「スペシャルチームは飛行系エリアに入ったッス!!罠も解除されてるッス」
「予定通り、迎え討つのは植物系エリアね。飛行エリアは捨てて、分析に当てましょう」
注意深く観察する。スペシャルチームだけあって、結構な実力だった。エリアボスのビッグロックバードに対して、9番の魔法使いが魔法の連射攻撃で追い込み、4番の弓兵の狙いすました一撃で、地上に落とした。
すかさず、2番の剣士と7番の槍使いが物理攻撃で打ち倒した。
「連携も取れているし、侮れませんね。予定通り、植物系エリアで奇襲攻撃で仕留めましょう」
「そうだな。魔法使いと弓兵に仕事をさせないようにするにはそれが得策だろう」
一番警戒していたのは2番の剣士だったが、意外に魔法使いと弓兵のコンビも強力だった。エリーナは言う。
「魔法使いは連射に頼ってあまり威力はありません。弓兵も見立てどおり、連射はできませんから何とかなるでしょう」
飛行系エリアを攻略したスペシャルチームは、植物系エリアに入った。
なぜこのエリアを選んだかというと奇襲攻撃が掛けやすいからだ。木々が生い茂っており、魔物を隠すのに都合がいいのだ。
植物エリアに入るとスペシャルチームは休憩を兼ねて、ミーティングをしていた。一角兎を使って、会話を盗み聞く。
「副官も心配性だな。スペシャルチームを組ませるなんてしなくても、そのうち攻略できるのに」
「そう言うな。ダンカン将軍のためにも早めに攻略したいと思うのは当然だ」
「とりあえず、このエリアは大した敵は出てこない。俺の火魔法でちょちょいのちょいだ」
「調子に乗って、魔力を使い過ぎるなよ。せめてダンジョンボスまでは持たしてくれよ」
「回復術士としては楽でいいですよ。出番がないのは寂しいですが・・・」
呑気なものだ。
もう少しすれば、地獄を見るというのに・・・・・。
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