ダンジョン戦争 3
まず最初に行ったのは、ドライスタ様がオルマン帝国軍部隊に龍神神殿でお言葉を述べることだった。ドライスタ様たっての希望だった。お言葉自体は2~3分で終わり、すぐに
「今日はスパイス料理を所望するぞ。新しいスパイスをドロップアイテムに加えたからな」
と言って、ロイさんの料理を要望していた。これではまるで、タカリのようだ。
そして、私達はというとオルマン帝国軍の戦力分析を行った。私がオルマン帝国軍作戦本部でこっそりと写し取った資料を複写してみんなに配った。
「ナタリーさん流石ッス!!スパイみたいッス」
ダクネスに褒められた。これでも私は情報部隊の隊長だからね。隊員は人間ではないけど。
資料を見て今後の方針を決める。
ヘンリーさんは言う。
「副官が言ったとおり、各パーティーの実力が均衡するように編成してますね。それにパーティー編成に特徴があります」
ヘンリーさんが言うには、各パーティーに一人は冒険者ランクでいうA~Bランクの隊員を入れている。活動中のパーティーと照合するとパーティーとしての戦術はA~Bランクのメインアタッカーを生かす戦術だ。Aランクの剣士がいるパーティーなら、剣士が攻撃しやすいようにサポートし、Aランクの弓使いがいるパーティーは弓使いがしっかりと対象を狙えるように他のメンバーが守備的に活動する。
「ざっくり言えば、メインアタッカーの攻撃を無効化すれば、対処可能ということです」
次に意見を出したのはダクネスだった。ダークドワーフで、ダンジョンの構成や罠担当ならではの意見だった。
「メンバー表を見るかぎり、この部隊は斥候部隊員の数が、他の部隊員と比較して少ないと思うッス。なんで、斥候部隊員を入れていないパーティーがあるので、そんなパーティーは罠が有効だと思うッス」
「ダクネス殿はいいところに目を付けたな。オルマン帝国軍の弱点の一つとして、専門化されすぎているというのがある。罠解除などは斥候部隊員に任せっきりになっているのが現状だ。これは他の部隊にも言えるが、魔法も剣術も得意という隊員は珍しい。特に近年では、集団行動が重視されているからな。ヘンリー殿やミランダ殿のような万能型の隊員は特殊部隊にしかいないだろう」
ダクネスは褒められて嬉しそうだ。
次に発言したのは、エリーナだった。これも的を得ていた。
「せっかくナタリー先輩が持ってきた資料を有効活用してはどうでしょうか?特にメインアタッカーとなる部隊員には綿密な分析を行って、弱点を突いた攻撃をすればいいと思います」
「そうね。でも魔物の動きをマニュアル操作にしないといけなくなるから、かなり忙しいわよ」
これにタリーザが答える。
「私にやらせて下さい。これでも、ダンジョン経営学部では戦闘関係の単位はほぼトップでしたから」
タリーザさんによると、軍略には興味があり、元々が戦闘が得意な種族というのも影響しているらしい。
意見が出尽くしたところで、ミランダ社長が指示を出す。
「まず部隊との戦闘については私とタリーザでやるわ。足りなければヘンリー君とロンメルさんに応援してもらう。ダクネスは私達に有利な構造物と罠の設置をお願い。
エリーナは部隊員の細かな能力分析とそれらに有効な魔物の選定をしてちょうだい。
ナタリーちゃんは・・・作戦本部で変わった動きはないか、引き続き情報収集をしてね」
私のときだけ、少し間があったのは気のせいだろうか?
「それと今回の総合的な指揮はロンメルさんに任せるわ。ヘンリーさんはそのサポート。部隊で言うところの将軍と軍師みたいなものかしら?」
そしてミランダ社長は冗談めかして言った。
「それでは将軍!!お言葉をどうぞ!!」
「諸君これは我々の誇りを掛けた戦争だ!!気合を入れて望め!!」
骸骨騎士様もノリに合わせてくれた。チームの雰囲気はいいようだ。
それからは、かなり忙しい日々が続く。
「7番、11番、13番、32番、41番のパーティーが植物系エリアに接近!!7番の槍使いがメインアタッカーです」
「了解!!グレートコングによる投石攻撃で牽制します。隙ができたらグレートボアの突進で仕留めます!!」
「鉱山エリアに来たパーティーは、斥候部隊なし!!ダクネス、罠を発動させて」
「了解ッス!!」
新人の3人だけで何とかなっている。凄く頼もしい。エリーナの発案で、部隊員に番号を付けて管理している。メインアタッカーには1~10の番号を振っているので非常に分かりやすい。
エリーナが司令塔でそれに合わせて、ダクネスとタリーザが動いている。
今のところ特に問題はないので、情報収集に出る。
私はいつものように「新風亭」で優雅にお茶をしながら、フワフワ鳥のフワッチを使って、作戦本部の会話を盗み聞く。総合ギルドの本部と作戦本部が置かれているギルドの支部では距離は離れているが、フワッチなら問題ない。安全を優先して、私は「新風亭」にいるのだ。決して、飲食のメニューが充実しているからではない。
「今日あたり、攻略できると思っていたんだが無理そうだな」
「そうですね。ここはいい町なんで、滞在は苦になりませんが、早く帰って家族に会いたいですね」
「おい!!そんなこと言ってたら、またダンカン将軍に怒鳴られるぞ!!」
「す、すいません・・・」
「まあ、3組目の攻略パーティーが出るのも時間の問題だな。休憩時間にお土産でも買っておくか」
油断しきっている。
1週間経過した。
未だに攻略パーティーは出ていない。私はというと情報収集以外は雑用係として過ごしている。
「ナタリーちゃん!!食事の準備をして!!タリーザは疲労が溜まっているからヘンリーさんと交替していいわ」
「ありがとうございます。ナタリー先輩、お茶ください」
「は、はい、どうぞ」
「ナタリーさん。こっちは手が離せないので、サンドイッチみたいな軽くつまめる物を持ってきてほしいッス」
「クッキーとサンドイッチをここに置いておくわ」
「ありがとうッス」
どうもおかしい。エリーナに至っては、私を完全に下に見ている。
「ナタリー先輩!!早く昨日の戦闘記録と情報をまとめてください。情報は鮮度が命ですよ」
「ご、ごめんなさい・・・」
更に1週間経過した。
スタッフの連携も取れ、個々の仕事にも慣れてきたので、最近ではダンジョンボスにもたどり着かせていない。
私は決して雑用が嫌なわけではないが、気分転換のため、情報収集に出る。
いつものように「新風亭」で優雅にお茶をする。
「おかしい、おかしいぞ!!1ヶ月で4組の攻略パーティーを出して、栄えある10組目の攻略パーティーに名を連ねるはずが・・・」
「このままではダンカン将軍の顔に泥を塗ってしまう」
「ハインリッヒ副官、どうしましょうか?」
「仕方がない。スペシャルチームを組もう」
スペシャルチーム?聞き慣れない言葉だ。帝国軍部隊は何かやってくるみたいだ。
やっと私の活躍の場が来た。
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