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<完結>ダンジョンコンサルタント~魔王学院ダンジョン経営学部のエリートが劣等生女子とともにポンコツダンジョンを立て直します  作者: 楊楊
第三章 対決!!勇者パーティー

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ジメジメニート

取りあえず、ジメジメニートことニールさんを訪ねることにした。

ニールさんは、スタッフ用の宿泊施設に引きこもっているらしい。アーティストはかなりの高給取りなので、質素な生活をすれば30年位は生きていけるそうだ。

ニールさんの部屋を訪ね扉をノックする。出てきたのは青年の魔族だった。それになりに整った顔をしているが、髭や髪は伸び放題でボサボサ、目も虚ろな感じで、生気がない。本当にこの人が敏腕アーティストだったのだろうか?見る影もない。


「どちら様ですか?」


「私は「ダンコル」のダンジョンコンサルタント、ナタリー・ヒューゲルと申します。クリストファーさんから依頼を受けてきました。お話だけでも・・・・」


「とりあえず中にどうぞ」


何とか話だけは聞いてもらえるようだ。

私は今までの経緯などを話した。ニールさんも現状について心配していたようだった。


「そうなんですね。でも私にはどうすることも・・・・。それに、こんなみっともない姿をクリスさんやお嬢様に見せるわけにはいかないので・・・・」


ここで私は本題を切り出した。


「なぜこんなことになってしまったのですか?資料を見る限りでは、ニールさんは優秀なアーティストで、将来を期待されていたと思うのですが・・・」


「ありがとうございます。こうなってしまったのも訳がありまして・・・・」


二ールさんは話始める。

ニールさんは、ダンジョンマスターとしていきなり採用されたわけではなく、スタッフとして採用されたみたいだった。それにダンジョン経営学部は卒業していない。地道な努力が認められ、クリスさんの覚えもよく、ちょうどアーティストに空きができたので、サブダンジョンを試しに任されたそうだ。そして、キノコがメインに取れる採取型ダンジョンがヒットして、敏腕アーティストまで上り詰めた。

全て独学だという。


「ダンジョンは上手くいったのですが、他のアーティストに比べて独自性がなく、そこがコンプレックスというか、なんというか・・・・なので、クリスさんに無理を言って、ダンジョン協会の短期研修に応募したんです。それがそもそもの始まりでした・・・」


(またダンジョン協会なの?)


「当時は新人ダンジョンマスターのランキングでも上位だったので、意気揚々と研修に臨んだのですが、のっけから洗礼を受けました。『君には個性がない』、『基本ができていない』『ただ運がいいだけ』と罵られ、高額の教材を売りつけられました。そして、研修で習ったことや教材通りにダンジョンを作ったら大失敗してしまいました」


ギルドの資料を確認すると「ジメジメニート」は高評価を受けているのに、大失敗したダンジョンは「猿真似ゴミ野郎」とか「寄せ集めのクズ」とかの名前の候補が上がっていた。本当に酷い評価だ。


そしてニールさんは泣き出した。


「こんなことになるなら、研修なんて行かなければよかった。もっと活躍してお嬢様と・・・」


ニールさんがダンジョン協会の研修を受けて、より高みを目指そうとしたのには訳があった。ルキアさんに恋心を抱いていて、クリスさんに認められ、ルキアさんと釣り合いの取れるアーティストになろうと思ったからだ。


「それに最近お嬢様は、ダンジョン経営学部の同期の男にご執心らしいし・・・。一体どうすればいいんだ・・・」


(どうしたらいいんだろうか?)


「分かりました。なんとかします」


そうは言ったものの、全く解決策が見付からない。とりあえず、ニールさんを落ち着かせて、色々と話を聞いた。大分打ち解けたようで、気軽に話てくれるようになった。


「ところで独学とお伺いしましたが、何か参考にされたダンジョンとかあるんですか?」


「そうですね。特にこの本は参考にしました。この本を書いた著者は以前こちらでアーティストをしていた方で、高名な研究者だと伺っています。出版された本はだいたい読んでますね」


ニールさんが差し出した本を見る。ここに解決策がありそうだ。



「初級ダンジョン学入門」ミランダ・マース著




ニールさんを訪問した後、私はクリスさんとルキアさんと話すことにした。現状の報告と今後の方針を決めるためだ。クリスさんは快く応じてくれたが、ルキアさんは不機嫌な感じだった。

私が現状を報告するとルキアさんが沈痛な顔で話し始めた。


「そんな・・・ニール・・・ごめん。ヘンリーさんのことは勘違いなのに・・・・」


「えっ!!ルキアさんはヘンリーさんが大好きじゃなかったのですか?」


「この馬鹿は何を勘違いしてるの?私がヘンリーさんを好きだなんていつ言ったの?」


私は勘違いをしていたようだ。ルキアさんによるとクリスさんの態度やダンジョンの様子から何とか改革しないといけないと思っていたらしい。そこで目を付けたのがヘンリーさんだった。ヘンリーさんをクワトロメイズに引き込めば解決できるかもしれないと思うようになったらしい。

(ヘンリーさんに目を付けるあたりは、ルキアさんは優秀なんだろう)


しかし、思うようにいかず、色仕掛けで迫ってみたがこれも上手くいかない。そんなところに学年最下位でポッとでの私がヘンリーさんと仲良くしていることにかなり腹が立ったようだ。


「ルキアはすでに気付いていたんだね」


「当たり前よ。これでもお父様の娘なんだから」


ここで私はヘンリーさんの真似をして話始める。


「問題点は分かりました。整理しましょう。つまり、


1素晴らしいメインダンジョンの構築

2アーティスト間の不仲の解消

3ニールさんの復活


が依頼ということでよろしいでしょうか?」


「そ、そうね。それでいいわ」


「私もそれで構わない。娘が辛く当たって悪かったね」


「私も悪かったわ。就職まで妨害して・・・」


「気にしないでください。これでも私は一端のダンジョンコンサルタントですから」


「ところで、どんな解決策があるの?」


ヘンリーさんなら自信満々に解決策を提示するだろう。しかし私は、ヘンリーさんではなかった。悩んだ末、こう答えた。


「検討します・・・・」

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