光の洞窟
簡易の転移スポットで移動して、光のダンジョンに着いた。
現地で調査を行う。メンバーは私とヘンリーさんとミランダ社長だった。キョウカ様はしばらく休むそうだ。久しぶりの激務で疲れたらしい。
(あれが激務って・・・)
マスタールームで詳しくマルクスさんから事情を聞く。マルクスさんの奥様とお義母さんがお茶を出してくれた。薬草茶だったが優しい味がして美味しかった。
「気に入ってくれてよかったわ。ダンジョン産の薬草で、作り方はゴブリン族から教えてもらったのよ」
「紹介します。妻と母です。基本的にはここに息子のネロスを加えた4人で運営をしています。家族経営ですね」
簡単な挨拶が終った後、ダンジョンの詳しい構造などを教えてもらった。
1~5階層は鉱山エリア現在は誰も入場者はいないが、魔物が活性化する前はノーザニア王国の許可を受けた採取者がそれなりにいるらしい。多少のDPは稼げるみたいだ。
次は6階層、荒野のようなフィールドだった。
「ゴブリンも多少は住んでいますが、交代制で監視をするために常駐しているだけです。実際、ここで侵入してきた冒険者を撃退します。ゴブリンは基本的に7~9階層の森林フィールドに集落を形成して住んでいます」
そして、問題の10階層、洞窟のようなフィールドだった。
「ここにダンジョンボスがいます。元は森林フィールドだったんですが、これまたDPを大量に使って階層変換してしまいました」
話が途切れたところで、ヘンリーさんが質問する。
「ところで息子さんは?姿が見えないようですが」
「お恥ずかしい限りですが、引きこもっておりまして・・・・すぐに呼んできます」
しばらくして、若いこれといって特徴のない魔族の男性がやってきた。ネロスさんだろう。
「ちょっと挨拶くらいしなさい」
どことなく不貞腐れた感じがする。
「ネロスです・・・」
元気もない。
「もう怒らんから、事情を説明してあげなさい。それと契約の資料も持ってきなさい」
「分かったよ。話せばいいんだろ・・・・」
ネロスさんが語る。
ネロスさんはごく平均的な成績でダンジョン経営学部を卒業した。そこからは実家を手伝い、特に問題はなかったのだが、ダンジョンマスターを父親から引き継いで、しばらくして同窓会の案内が来て、久しぶりに行ってみることにしたという。
ネロスさん的には、ダンジョンマスターになったし、同級生にちょっと自慢できるかもしれないくらいな気持ちで行ったらしいが、馬鹿にされたみたいだ。
特にダンジョン協会に勤めているエリートタイプの同級生に馬鹿にされたみたいだった。
『いくらダンジョンマスターだからってピンキリだからな。お前のところのダンジョンは本部の評価もあまり高くないんだ。かろうじてマスター会議に出席できるくらいのDPは納めているけどな・・・』
『これでも色々と苦労はあるんだぞ。マスターは大変なんだ』
『でも、親父達がやって来たことをそのまま継続するだけだろう?男だったらダンジョンを大きくするとか、もっとランキングが上がるように頑張るとかあるだろ?』
『そういう思いがないわけじゃないんだけど・・・できれば、誰も見たことのない凄いダンジョンを作りたいっていうのが、夢と言えば夢かな』
『だったらいい話がある。ダンジョンボスをメインに売り出すんだよ』
ここが間違いの始まりだった。
話の流れで、高額な一点物のダンジョンボスを購入してしまったのだ。しかも、ダンジョンを崩壊させてしまうくらいに厄介なことダンジョンボスを。
ネロスさんの説明に対してマルクスさんが声を荒げる。
「だからってなんで、こんなダンジョンボスを買ったんだ?」
「前にも話したかもしれないけど、強力なダンジョンボスを軸に派手な探索系のダンジョンにしようと・・・だけど言われるがままに買っていたら、10階層を改装したあたりでDPが尽きちゃって・・・・」
ネロスさんの話では、「すぐに返せるから投資だと思ってさ。ここでDPを出し渋る小さい男じゃないだろ?」と同級生に唆されたそうだ。
するとダンジョンボスの資料を見ていたヘンリーさんが、渋い表情で話し出す。
「しかもこのダンジョンボスは、DPをダンジョンから自動で回収するスキルを持っていますね。ダンジョンボスに挑むパーティーが増えれば増える程、戦闘にDPを消費され、赤字になりますね。そのことは説明があったのでしょうか?」
「一応説明がありました。でもDP消費は微々たるものだって・・・ちゃんとした計算式の資料も用意してくれてましたし・・・・」
「この資料は間違ってますよ。桁が一つ足りません。現時点では証明ができませんが、意図的でしょう」
一同項垂れる。
しかし、ヘンリーさんは冷静な感じで話す。
「今までも説明でだいたいは分かりました。まとめますと、ダンジョンの再建、それとネロスさんの要望どおり、誰も見たことのない凄いダンジョンを作ることを課題にします」
やはりヘンリーさんは凄い。誰も見たことがないダンジョンコンサルタントがここにいる。
そんなとき、ビービーという警報音がなった。
「侵入者だ!!どうして?」
緊張が走る。マルクスさんはモニターを凝視する。
「もしかして討伐隊か?もうノーザニア王国が動き出したのか?とりあえず、ゴブリン達を避難させないと場所は9階層のシェルターだ、じっとしていればしばらくはやり過ごせるだろう。ネロス!!」
「分かったよ、ちょっと行ってくる」
私達はこの侵入者をマルクスさんと一緒に監視することにした。
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