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<完結>ダンジョンコンサルタント~魔王学院ダンジョン経営学部のエリートが劣等生女子とともにポンコツダンジョンを立て直します  作者: 楊楊
第二章 新人コンサルタント

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防衛戦2

作戦を一言で言えば防衛戦だ。

いかに富を貯え続けたグリード子爵と言えど、500人の領兵を長期間賄い続けることは無理だという。なので、徹底的に守る。一般的に攻撃側が勝利するには防衛側の3倍は兵力が必要と言われている。こちらは何をどうしても100人に満たない兵力なので、そうするしかないと思われる。


予想として、グリード子爵もいきなり、全兵力で仕掛けてこないだろうとのことであった。そんなことをすれば、さすがにオルマン帝国の中央も黙ってはいない。貴族間の多少の小競り合いであれば、実質黙認している状況ではあるが。


防衛戦で一番怖いのは、物資が枯渇することだ。東南西はグリード子爵に抑えられているものの、北のベルンとの交易路は確保できている。ベルン側もネリス商会を中心として、物資を格安で卸してくれるようになった。普通なら、値段を釣り上げて儲けようとするのだが、そうはならなかった。ネリス商会の方は信義に厚い商会なのだと思っていたが、それだけではないらしい。


「領主様、ネリス商会としましても最大限協力させていただきます。つきましては・・・・」


「分かっておる!!燻製肉工房の東側の空き地は、好きに使っていい。まあ、勝てればの話だが」


こんな会話が聞こえてきた。ヘンリーさんの話では逆に信用できるという。商人、特にネリス商会は利がないところにまず動かないし、基本的に安全策を取る。グリード子爵に肩入れするくらいならこの地方からは撤退する可能性が高い。なので、ネリス商会が私達に味方してくれるということは、私達が勝つ可能性が高いし、こちらに味方したほうが得策と判断したのだろう。


訓練のほうも順調?だった。元大将軍なだけあって、骸骨騎士様ロンメルさんの教え方は上手い。


「攻撃よりもまずは守備だ。そこ!!前に出過ぎるな!!いいぞ!!その調子だ」


「はい!!教官!!」


もうすでに教官と呼ばれて、信頼を得ている。それに比べて、弓兵は地獄のような訓練をしていた。指導するミルカ様はかなり厳しい。キョウカ様の妹というのが頷ける。


「もっと速く!!正確に!!できなければ地獄の・・・・」


「先生!!もう腕が上がりません。無理です」


ミルカ様は弓兵に近付いて、ポーションを頭からぶっ掛けた。


「これで回復したでしょう。今のを後20セットね」


流石に骸骨騎士様ロンメルさんに止められる。


「ミルカ!!訓練で使い潰してはならん・・・。もっと愛情を持って」


「私が愛情を注ぐのはあなたとお姉様だけですわ」


(お熱いことで・・・・)


訓練に併せて、罠の設置も行った。

まず西の騎士爵領につながる街道、東の男爵領につながる街道を封鎖した。冒険者の中に土魔法が得意な兄弟がおり、その兄弟を中心にして街道を封鎖した。人力で解除しようとしても3日はかかる。街道が使用できないので、森の小道を通らなければカーン男爵領に来られないので、罠が仕掛けやすくなるし、効果も高い。それにこちらは弓兵の数が多く、その弓兵も狩人からの転向組がほとんどなので、森での戦闘は得意だ。

これなら兵数の差を埋められる。


南のグリード子爵領へつながる街道は封鎖していない。

これには理由がある。グリード子爵は、カーン男爵領の東西から盗賊(実質はグリード子爵の領兵)を侵入させる。カーン男爵が困り果てたところで、グリード子爵が領兵を率いて駆け付ける。そこで、半ば脅しのように交渉して、ダンジョンの利権を奪うというのがその作戦だろう。

盗賊の侵入に見せかける作戦は、こちらとしても有難い。大規模な部隊を一気に相手にしなくて済むからだ。

なので、グリード子爵の思惑にギリギリまで気付かない振りをするために、あえてグリード子爵領へとつながる街道を封鎖しなかったのだ。


そして、ある程度こちらの準備が整ったところで、盗賊が侵入してきたのだ。

しかし、慌てることはない。私が手塩にかけて育てた優秀な偵察部隊員のおかげで、盗賊の動きは丸裸だ。


(盗賊みたいな恰好をしているけど、キチンと行軍してるよ)


(了解!!場所はどこら辺かな?)


(大きな木が3本並んでいるところだよ)


(ありがとう。戦闘が始まったらすぐに離れてね)


魔獣達に付けた首輪の魔道具のおかげで、念話で遠くまで会話できるし、場所も把握できる。

ヘンリーさんに情報を伝える。

部隊編成だが、100人の兵力を3分割していた。第一部隊は長男のオゴディさんが隊長でヘンリーさんが補佐に就く、第二部隊は三男のプラグさんとミルカ様、第三部隊は四男のアリクさんと骸骨騎士様ロンメルさんだ。経験の少ない三男プラグさんと四男アリクさんに人外のスーパー戦力のミルカ様と骸骨騎士様ロンメルさんを補佐に付けた部隊編成だ。


今回は初陣となるので、第一部隊に加えて隊長クラスも戦線に出る。後の戦闘に生かすためだ。

私は魔獣を通じて情報を得る。どうやら街道が封鎖されていて、困惑しているようだ。予定通り森の迂回路に入って来た。もう目視で敵の部隊を確認できる。魔獣達からの報告にあった通り、盗賊のような格好だが、組織だって行軍している。数は30名弱。

一応ここで勧告をしておく。オゴディさんが代表して行う。こちらが正しいと証明するためだ。


「そこの者達止まれ!!我はカーン男爵が息子オゴディだ。ここはカーン男爵領と知ってのことか?すぐに武装を解除しろ!!」


ここで、「グリード子爵の領兵です。迷って入ってしまいました。帰ります」みたいなことを言われたらそれで終わりだ。しかし、そうはならなかった。


「俺達は名の無い盗賊だ!!ぶっ殺してやる」


そう叫んだ。

(あーあ、ご愁傷様)


するとすでに待ち伏せしていた弓兵が一斉に射撃する。ほとんどの盗賊が絶命した。かろうじて生き残った盗賊たちは四方八方に逃げ出す。ここで重要なことは、誰一人生きて返さないことだ。作戦がバレてしまっては、今後の戦い方に影響が出るからだ。

逃げそうなところには罠を張っているし、そもそもが過剰戦力だからね。


しばらくして、盗賊はすべて討ち取られた。


「それでは、死体はすべて持ち帰り、ダンジョンに入れてください。もちろん身ぐるみは剥いでからですが・・・・」


ヘンリーさんが指示する。死体が相手に渡れば、多くの情報も一緒に渡ってしまうからだ。なので、盗賊の殲滅から死体の回収までが一連の流れになる。これにはダンジョンマスターのマーナさんは大喜びだ。だって、何もしなくてもDPダンジョンポイントが3万ポイント近く入るからだ。

(基本ポイント10ポイント×死亡ポイント100倍×30人)


戦闘終了後、領都に帰り、骸骨騎士様ロンメルさんが訓示をする。


「正義は我らにあり!!これもみんなが一丸となって準備や訓練をしてきた成果だ。これからどんどんと戦闘が激しくなる。絶対に油断はするな!!しかし、今日くらいはいいだろう。オゴディ殿!!」


「よし、今日は宴だ!!」


大歓声が上がる。

私達の初戦は大勝利だった。死者はなく、軽症者が若干いたぐらいだったからだ。

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