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<完結>ダンジョンコンサルタント~魔王学院ダンジョン経営学部のエリートが劣等生女子とともにポンコツダンジョンを立て直します  作者: 楊楊
第二章 新人コンサルタント

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任務成功?

私は「ダンコル」の事務所でミランダ社長にA-2ダンジョンでの活動報告書を提出している。

もしかしたらここもクビになるかもしれない。そうなると本気で燻製肉職人かカフェを開くことを考えなければ・・・。


報告書を読んでいたミランダ社長が顔を上げて、私に指示する。


「もうすぐ来客があるからお茶の用意をお願いね。お昼も近いから燻製肉のサンドイッチも出して欲しいなあ」


「分かりました。すぐに用意します」


任務失敗から社長もヘンリーさんも凄く優しい。それがまた辛い。

しばらくして、やって来たのはラッセルさんとミーナさんだった。私はすぐに二人に謝罪しようとしたところ、遮られ、逆にミーナから謝られた。


「ナタリーごめんね。騙すような真似をして。でも上手くいったし、私も今回の件で自信が持てたから・・・」


一体どういうことだろうか?


「まあ、立ち話も何ですので、会長もミーナさんもこちらで座って話してください。今日はナタリーが特別に燻製肉のサッドイッチを作ってくれましたから」



そして、サンドイッチをつまみながら、話し合いが始まった。驚愕の事実が判明する。ラッセルさんが悩んでいたのは、ダンジョンランキングの順位が下がったり、ライバルに差をつけられたからではないらしい。A-2ダンジョンを含め多数のダンジョンで不正が疑われていたからだ。首謀者はダンジョンマスターのサギック・カスメルとサブマスターだったそうだ。やり口は巧妙だった。サギックはAブロックのエリアマネージャーも兼務しており、Aブロック全体のスポーン(魔物発生機)や素材生成器のDP購入の際に差額を着服していたようだ。それにダンジョン協会の担当者とも結託していたそうだ。


一例として3万ポイントのスポーンを8万ポイントと偽ってダンジョン協会から購入し、差額の5万ポイントをダンジョン協会の担当者に戻し、その代わりダンジョン協会の職員から現金を受け取るといったものだった。

サギックとサブマスターは拘束されているものの、ダンジョン協会の担当者は行方不明とのことだった。


「サギックはエリート意識の塊で、我がグループを見下していた。上手くいけばダンジョン協会本部での勤務を斡旋してくれると唆されて今回の事件を起こしたみたいだ。顧問契約をして早速結果を出してくれた「ダンコル」の皆さんには感謝しかない。それに今回は親馬鹿かもしれんが、ミーナが大活躍してくれたからね」


ミーナは嬉しそうに答える。ミーナはラッセルさんに頼まれて、内部調査をしていたらしい。それも私には秘密で。


「パパ、大活躍は言い過ぎよ。でも興奮したわ。親友のナタリーにも秘密の任務なんて、まるで女スパイみたいだったし・・・。それと証拠の資料を手に入れたときが一番ドキドキしたわ・・・・」


ミーナによると私が大失敗をして、倉庫の清掃をしていた時期、サギックとサブマスターの会話を聞いたそうだ。


『不正がバレそうだ。書類などの証拠品を倉庫の小火に見せかけて処分する。新しく来た馬鹿に全責任を押し付けよう。処分は任せたぞ』


『了解です。明日にでも』


そして、サギック達に気付かれないように証拠品の入っている箱とそれと良く似た別の箱を入れ替えたそうだ。


「証拠品を手に入れてからヘンリーさんに渡すまで、気が気じゃなかったけどね。これで私もグループのためになることができて嬉しいわ」


私は女スパイでは無かった。本当の女スパイはミーナだった。私はただのポンコツスタッフだ。

私が落ち込んでいると、ミランダ社長が資料を見せてくれた。


「ナタリーちゃん。サギックとサブマスターには馬鹿にされていたけど、他のスタッフからは人気があったみたいよ。『ナタリーを辞めさせないで!!』と申し出たスタッフが一人や二人ではなかったみたい」


資料を見る。

サギックとサブマスターは日頃からスタッフにつらく当たっていたらしい。責任を押し付けたり、無理難題を言ったりしていた。


『ナタリーちゃんが来てから、マスターのターゲットがナタリーちゃんになり、やりやすい』

『ナタリーはいい娘だ。最近はナタリーしか怒られないので、職場の雰囲気がいい』

『ナタリーがスポーンの設置をミスして大変なことになったとき、実は私も少しミスをしていた。もしかしたらナタリーが私を庇うためにやったのかもしれない・・・いや、それは考え過ぎか・・・』


複雑な心境だ。コメントのしようがない。


「何はともあれ、成功は成功だ。成功報酬は弾もう」


「ラッセル会長は太っ腹ですね。今後ともよろしくお願いします」


そこからはサンドイッチをつまみながら、和やかに雑談が始まった。私の学生時代の失敗談がメインだったけど・・・・。

そんな中で、いつになく険しい表情でヘンリーさんが口を開いた。いつものクールな感じと全然違う。怒りを無理やり抑え込んだ感じがする。


「ラッセル会長、今回の件はサギックと担当者だけで、できるようなことではないと思います。ダンジョン協会の上層部が関わらないとできないのでは?」


「そうだね。差額のDPもどこに行ったか不明。ダンジョン協会の担当者も行方不明。そして今回ダンジョン協会からの補償は破格の額をもらったよ。ということは?」


「これ以上何もするなということですか?」


「そうだね。何か大きな陰謀が渦巻いてるかもしれないけど、私には家族がいるからね。何か決定的な証拠がなければなんともできないかな」


「そうですね・・・・」


ヘンリーさんは悔しそうだった。こんな表情は見たことがない。

しかし、ヘンリーさんはすぐにいつもの冷静で柔和な表情に戻り、資料をラッセルさんに手渡した。


「今回の功績をもって、ミーナさんをA-2ダンジョンのサブマスターにするということなので、ミーナさんが大活躍したという資料を作りました。こちらで話を進めてみたらどうでしょうか?」


資料によると、ミーナは心優しい娘で就職活動が上手くいかない親友のためにラッセル会長を説得し、就職の世話をした。しかしその親友は、かなりのポンコツで、ミスを連発し、最終的には倉庫の掃除しかやらせてもらえなくなった。

しかし、心優しいミーナは倉庫の掃除を手伝っていたところ、たまたま今回の事件の証拠資料を見付けた。それを精査したら、不正が発覚したので、すぐにラッセル会長に報告したという流れだ。


「ちょっとヘンリーさん。盛りすぎじゃない?私が活躍しすぎてる。それにナタリーが・・・・」


分かるよミーナ。私がかなりポンコツだって・・・・。


「大げさなくらいがいいんだよ。これでいこう」


ラッセルさんの鶴の一声で決定した。


そしてミスタリアグループでは、語り継がれることになる。慈愛のミーナとポンコツ親友と。

それはまた別の話だ。


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