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<完結>ダンジョンコンサルタント~魔王学院ダンジョン経営学部のエリートが劣等生女子とともにポンコツダンジョンを立て直します  作者: 楊楊
第二章 新人コンサルタント

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新たな依頼

事務所には私達クライアントの他に大手ダンジョンチェーンの会長で、私の親友のミーナの父でもあるラッセルさんが来ている。私が入れたハーブティーを飲みながら、木の実のクッキーをつまんでいる。


「美味しいね。落ち着くよ。ミーナがナタリーちゃんを本部のカフェに引き抜こうとしたのも頷けるよ」


「ありがとうございます。ラッセルさんの体を思って、クッキーは甘さ控え目にしたんですよ」


「ありがとう。本当にうちに来てもらってもいいんだよ」


ラッセルさんと雑談を交わす。

ミランダ社長とヘンリーさんの準備が整ったみたいで、二人が資料を持ってやってくる。

ラッセルさんも優しく柔和な表情から険しいものに変わる。仕事モードだ。


「ラッセル会長。やっぱり抜かれてます。それもかなり・・・」


「ヘンリー君・・・。やはりそうか・・・」


(何?ランキングが下がったのかな?)


「会長、心中お察しします。こんなときこそ、我ら「ダンコル」にお任せください。ここは無難にヘンリー・・・」


「社長!!私にやらせてください。ラッセルさんにはお世話になったし、ミーナは親友なので、今回は私に仕事を任せてもらえませんか?話の内容からダンジョンのランキングが下がったか、ライバルに抜かれたということですね。大丈夫です。私が必ず立て直してみせます」


私は思わず声を上げてしまった。社長から「コンサルタントは顧客を笑顔にするために存在する」という話を聞いた後だったし、ラッセルさんの落ち込み具合を見ると何とかしてあげたくなった。それにダンジョンを2件も立て直した(ほとんどヘンリーさん)という根拠もない自信もあったからだ。


「ナタリーちゃん、ちょっと!!えっとね、詳しく話を・・・・」


「ラッセル会長!!そのまま話を進めましょう。こう見えてナタリーも一人前のダンジョンコンサルタントですから」


ヘンリーさんが嬉しいことを言ってくれる。「一人前のダンジョンコンサルタント」か、いい響きだ。

私ってもしかしたらデキる女なのかもしれない。あのエリートヘンリーさんが認めた女だ。間違いない。


「そうね。ナタリーちゃんに任せようかな?ヘンリー君、作戦を説明してあげて」





そして私は今、ミスタリアグループのA-2ダンジョンに来ている。初の単独任務だ。スパイみたいでカッコいい。

というのも、A-2ダンジョンの業績が落ちているからだそうだ。それもほんの少しずつ、よく見なければ分からない位に少しずつ。なので、潜入調査をしてほしいとのことだった。そして、何が原因でどのような対処をすれば業績が改善するのかを提案するのが今回の任務だ。


A-2ダンジョンは、Aブロック(神聖国ルキシア)で2番目にできたダンジョンと言う意味だ。因みにA-1ダンジョンはラッセルさんが最初に作った大失敗したダンジョンなので、実質ミスタリアグループの出発点と言えるダンジョンで、ラッセルさんの思い入れも強い。

位置的には神聖国ルキシアの西部、オルマン帝国との国境付近にあり、「試練の塔」から馬車で3日程の距離にある。


そして私の設定は、就職活動に失敗し、娘のミーナに泣きついて頼み、仕方なく採用した駄目人間、A-2ダンジョンのダンジョンマスターには「駄目ならクビにしろ。いや、むしろクビにしてくれ。上手いことクビにできたらボーナスをやろう」と指示しているらしい。

「ダンコル」に就職できなければ、リアルにありえた未来だ。


それと、嬉しいことに親友のミーナもスタッフとして勤務している。ただ、今回は任務であることをミーナにさえ話すことは許されない。親友にも話せない任務をこなす悲しき女スパイ、それが私だ。




ミスタリア本部の転移スポットからA-2ダンジョンのマスタールームに着くとミーナとダンジョンマスターのサギック・カスメルが迎えてくれた。サギックは眼鏡をかけて神経質そうな魔族の男性で、私を冷たい目で睨んでいた。


「ナタリー・ヒューゲルです。よろしくお願いします」


「話は聞いていますよ。完全なコネらしいですね。ミーナお嬢様も付き合う人を選ぶということを覚えたほうがいいですね」


そういうと私をスタッフとミーナに任せて、そそくさとどこかに行ってしまった。


「ナタリー久しぶり!!元気だった?そんな訳ないよね・・・。でも一緒に頑張ろうね」


ミーナは優しい。そんなミーナを騙すようなことをするのは心苦しい。でも仕方がない。私は悲しき女スパイなのだから・・・・。



それから2週間が経った。

結論から言おう、私はクビになった。最初からその兆候はあった。物品を壊したり、書類の記入ミスをしたりと、そして3日目にして大失敗をしてしまった。


鉱山エリアに設置する予定のスポーン(魔物発生装置)と湖エリアに設置するべきスポーンを間違えて反対に設置してしまった。そのため、ロックゴーレムが出現すると同時に湖に転落するという奇妙なシチュエーションを作り出し、反対に鉱山エリアでは、水もないのに魚系の魔物が出現し、すぐに死滅するという異常事態を引き起こした。マスターのサギックからは罵詈雑言を浴びた。


「死ね!!この出来損ないのクズが!!コネならコネらしく余計なことはするな!!次に何かやったら即クビにするからな」



これに驚いたのはダンジョン関係者だけではない。冒険者達はすぐに冒険者ギルドに報告、その後しばらくの間、ギルドの判断で冒険者のダンジョンへの立ち入りは禁止された。

冒険者がダンジョンに来なければDPダンジョンポイントは入ってこない。当然大赤字だ。


更に悪いことは続くもので、私は通常業務はさせてもらえず、備品倉庫の掃除を1日中させられていたのだが、勤務開始から1週間が経ったころ、私が倉庫で作業をしていたところ、倉庫が火事になってしまった。当然私が疑われる。


「この馬鹿!!クビだクビ!!問題ばっかり起こしやがって、お前の親はテロリストか?」


酷い、酷すぎる・・・・。サギックにみんなの前で罵倒される。

結局、ミスタリア本部から調査チームが来て、調査したが原因は不明とのことだった。その調査チームにはヘンリーさんが紛れ込んでいたのには少し驚いた。

ヘンリーさんはスタッフ全員から事情聴取するらしく、調査の合間にミーナと親し気に話していた。


そして、私はというと、火災発生からすぐに自宅謹慎となり、3日後、晴れて解雇となってしまった。

私の初任務は失敗に終わった。ラッセルさんもミーナも助けることができず、それだけではなく、ダンジョンに大損害を与えてしまった。


キョウカ様に言って、激しくお仕置きしてもらいたい気分だ。

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