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<完結>ダンジョンコンサルタント~魔王学院ダンジョン経営学部のエリートが劣等生女子とともにポンコツダンジョンを立て直します  作者: 楊楊
第一章 ダンジョン研修

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勇者パーティー

ヘンリーさんが「試練の塔」から旅立ってから1週間が経った。

私とミルカ様とキョウカ様はせっせと燻製肉を作っている。断っておくが、私は燻製肉職人でも、マッサージ師でもない。歴としたダンジョン経営学部の学生である。時々忘れそうになるので、復習しておくと、今はダンジョン研修中で課題は


1キョウカ様の症状(不安定な精神状態)の改善


2ロンメルさんとミルカ様の関係改善


3必要があればダンジョン自体を改善する


だったと思う。


キョウカ様は「ツン10回、デレ1回。1日1デレ」という課題はクリアしたので、今度は「デレる」対象を増やそうということになり、スタッフ達にプレゼントするため、せっせと燻製肉を作っているのだ。因みに骸骨騎士様にはミルカ様が直接渡すそうだ。お酒好きなので、喜びそうだ。


「キョウカお姉様、ミルカお姉様。もうすぐ出来上がりますよ」


(人に心を開く訓練で、私は妹という設定でとおしている)


「ミルカさん。何か懐かしいわね。故郷の集落を思い出すわ・・・」


出来栄えは上々で、スタッフさんは大喜びだった。それにキョウカ様が


「ちょっと作り過ぎたから・・・。捨てるのはもったいないから・・・・」


と言ってスタッフさん達に手渡す姿は、非常に微笑ましい光景だった。


経過は順調だと思う。

しかし、これは本当にダンジョン研修なのだろうかと思ってしまう。ダンジョン経営に必要な技能は何一つ身に付いていないようにも思われる。ミルカ様に「何か要望はある?」と聞かれたときに意を決して言ってしまった。


「お姉様!!ダンジョン研修がしたいです」


事情を説明する。前回の研修でもほとんどダンジョンの経営に携わっていないし、今回もとなると将来かなり不安だ。


「だったら、ちょっとやってみましょうか?大したことではないのですが・・・」


ミルカ様が言うには現在、勇者パーティーが「試練の塔」に挑戦中とのことだった。人族領では勇者制度があり、人族の代表として魔族の代表と戦うそうだ。なぜそういうことになったのかは、分からないが、戦争するよりコスパがいいのだという。


「ダンジョンに入って来た勇者パーティーを分析して「勇者パーティー発見報告書」を作成してください。ダンジョン協会に提出すればDPダンジョンポイントももらえますしね」


(今更DPなんて必要ないだろうに・・・私への気遣いを感じる)


講義で習ったことを思い返す、「勇者パーティー発見報告書」の他にも「特異パーティー発見報告書」というのもあったと思う。ダンジョン協会として注意したほうがいい情報を報告書にすればDPがもらえる制度がある。実習で作成したこともあり、例として挙げられるのは、ダンジョンに潜んでダンジョンに入ってきた他の冒険者を襲って身ぐるみを剥ぎ、殺してしまうパーティーだろう。ダンジョン内で死体を長時間放置するとダンジョンに吸収されてDPになる。死体が残らないので昔からこの方法で殺しを行うことも人族の間でも割と有名な話だ。あまりにも酷いとダンジョン側としても排除の対象にもなってしまう。

今回、ミルカ様に頼まれたことは私にとって、初めてダンジョン経営に携わる機会だと思い、興奮する。


「是非やらせていただきます」



マスタールームでモニターを見ると、勇者パーティーは3階層を攻略中だった。勇者パーティーは、勇者、聖女、赤髪の女剣士、細身の魔術士にサポーターと呼ばれる荷物持ちを加えた5人組だった。

サポーターは小柄な少年で、カーン男爵の奥様に顔立ちがよく似ていた。多分、カーン男爵の五男さんなんだろう。

勇者は横暴な性格らしく、サポーターの少年につらく当たっていた。何かにつけて文句を言い、殴ったりもしていた。愛情のある虐め方のキョウカ様と全く違い、腹立たしくなる。


「あの勇者には腹が立ちます!!お世話になったカーン男爵の息子さんにあんなことをして・・・」


「だったら、死なない程度にお仕置きしてもいいですよ」


ミルカさんに許可を受けて、私は勇者にお仕置きすることにした。分析したところ、勇者は傲慢で考えなしの馬鹿のようだったので、豪華目の宝箱に爆発する魔石を詰めたトラップを設置することにした。

作戦は成功し、サポーターの少年が止めるのも聞かず、勇者が宝箱を空ける。

ドーンという音とともに宝箱は爆発した。そこには顔が真っ黒になり、金髪の美しい髪がチリチリになた勇者がいた。


「ざまあ見ろ!!」


つい叫んでしまった。私は胸のすく思いはしたが、勇者は


「クソチビが!!罠解除はお前の仕事だろうが、この能無しめ!!」


と言って、サポーターの少年を顔が腫れるくらい何度も殴っていた。

(ごめん!!私のせいで・・・・)


これにはミルカ様も苦い表情を浮かべる。


「ロンメルにお仕置きをしてもらいましょう」



4階層にたどり着いた勇者パーティーであったが、勇者はそこでもサポーターの少年につらく当たっていた。

4階層は森林フィールドで家族連れでキャンプができるくらい静かな森だ。ただし、1日経過しないと5階層への転移スポットは現れない。ここでもサポーターの少年はつらく当たられていた。食事の用意やテントの設営等、雑用はすべてやらされ、誰も手伝わない。挙句の果てに一人で夜間の警戒をさせられていた。


丁度そのころ、ミルカ様はマスタールームに骸骨騎士様ロンメルさんを呼び出して事情を説明した。


「誇り高きオルマン帝国貴族がなんという有様だ!!性根を叩き直してくれる!!」


勇者、聖女、赤髪の女剣士、細身の魔術士はオルマン帝国の四大公爵家の子女だそうだ。それが余計に骸骨騎士様には腹が立ったらしい。

私も骸骨騎士様を煽る。


「ロンメルさん!!ボコボコにしてやってください」


そして次の日、勇者パーティーは5階層にやって来た。

骸骨騎士様は勇者たちに問う。


「貴殿達の実力を見定めてやろう。全員でかかってくるか?それとも一騎打ちを望むかね?」


すると勇者が歩み出る。

骸骨騎士様は勇者に


「それではまず名乗りを上げよ。帝国の正式な作法は手袋を投げるというものがあるが、ここはダンジョン省略して・・・」


と言いかけたところで、勇者が


「ごちゃごちゃうるせえんだよ!!この化物が!!」


と言っていきなり切りかかった。骸骨騎士様は武人の中の武人といった感じで礼儀にうるさい人(スケルトン?)で、これに骸骨騎士様は激怒した。勇者はそれなりに実力はあるが骸骨騎士様には全く通用せず、剣を弾き飛ばされた。骸骨騎士様は問う。


「これ以上続けるかね?」


「負けだ。降参する」


「実力は申し分ないが人としてどうかと思うぞ。自分を見つめ直し、心を鍛えてから出直せ!!」


そういうと骸骨騎士様は踵を返した。


そのとき私は、信じられない光景を目にする。

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