私も頑張って研修してます!!
しばらくの間、キョウカ会(通称「試練のパーティー」)に参加している貴族達と談笑する。私はまるで有名舞台女優のようにもてはやされた。もしかすると、将来、舞台に立つことになるかもしれない。
ヘンリーさんはというと巧みな話術で会話を弾ませていた。オルマン帝国のことやダンジョンについてなど、幅広く情報を集めている。
そんなとき、キョウカ様が戻って来た。
そして女性陣にいきなり、液体をぶちまけた。一同驚いている。
「今日は本当に気分が悪いわ!!私はもう帰ります。ミルカさん、今回参加した皆さんに個別に罰を用意したから説明してあげなさい」
そう言うとすぐに会場を去って行った。
参加者はというと歓喜の表情を浮かべており、涙を流しているご婦人もいる。
ミルカ様は、参加者に一人一人声を掛けながらお土産のようなものを渡していく。お土産を配り終えたところでパーティーは終了となった。
「今までで一番素晴らしい」(白豚さんです)
「最高ですわ、次回も来られるように頑張りましょうね」(欲求不満女です)
「そうだ!!この後、皆で反省会をしないか?会場はこっちで抑えさせるから」
(血筋がいいだけのお馬鹿さんです)
「いいですね。キョウカ会としては成功ですが、自分としてはもっとやれることがあったと思います」
(脳筋クソ野郎です)
(ミルカ様!!そこは解説いただかなくても・・・)
そう口々に言うと貴族達は去って行った。帰り際、宰相(白豚)さんが近付いてきて
「お嬢さん、次回も是非出席してくれ」
と言ってきた。
貴族達が帰った後、私達もダンジョンのマスタールームに戻る。私とヘンリーさんとミルカ様で今後の方針について話し合うことになった。
「まず、パーティーが盛り上がったことはお礼申し上げます。特にナタリーさんにはお世話になりました」
「私はただ耐えていただけなんで・・・。それにしても液体をぶっ掛けるなんて、さすがにやりすぎなように思うのですが?」
「あれは肌荒れを治すポーションで、姉の手作りですよ。参加者に配ったお土産もその方にあった薬草やポーション、リラックスできるお茶などですね。白豚・・・ではなく、宰相さんには便秘薬を特別に調合してます。ストレスで、かなり苦労されているみたいですから・・・」
異種族と交流を持ち始めたころからキョウカ会の最後にお土産を渡しているということだった。因みに薬類はワザと悪臭をつけ、かなり不味く作っているそうだ。しかし参加者からは「この匂いを嗅ぐだけで効いている感じがする」と評判がいいようだ。
そんな話の後、ヘンリーさんが話始めた。
「ミルカ様。今回のパーティーで必要な情報は集まりました。早速明日、出発したいのです。行先はセントラルハイツです」
セントラルハイツは、セントラルハイツ学園を中心とした学園都市だ。成り立ちは人族の各国要人の子女を集めて教育するために作られた。将来、各国を担う若者が同じ学び舎で学ぶことにより、結果的に平和になるという思想が基になっている。
現在、人族の間で戦争が起きていないことを考えるとその試みは成功していると言っていい。
「分かりました。セントラルハイツ学園の学生向けダンジョンに臨時の転移スポットを設置しましょう」
その日はそれで終わった。私はすぐに休むことにしたが、ヘンリーさんはミルカ様と遅くまで打ち合わせをしていた。骸骨騎士様に使った禁忌魔法についてのようだったが、話が難しすぎて、私には分からなかった。
「なるほど・・・スポーン(魔物発生装置)を分解して、術式に組み込み・・・・この魔力量では・・・」
しばらく聞いていたが、やはり私には無理だった。
次の日、朝からヘンリーさんは出発していった。
私はというと例のみすぼらしいメイド服と首輪を身に着け、ミルカ様と一緒にキョウカ様の私室に向かう。専属メイドとして研修するためだ。
簡単な挨拶をした後、私はキョウカ様に提案した。
「キョウカ様。私に提案があります・・・」
これでも私なりに頑張っていこうと思っており、色々と考えた。ヘンリーさんやミルカ様にも相談した。ヘンリーさんの話では、少しずつでもいいので、人に優しくしたり、感謝の気持ちを示せるようになれば、精神的な不安定さもなくなるとのことだった。それにはまず、人に優しくすれば相手もそれに答えてくれることを体験すればいいとも言っていた。
私なりに分析したところ、キョウカ会の参加者は虐められるときにも喜んでいるが、最後にお土産を渡されたときはこれまでにない表情を見せていた。
異世界から転移してきた異世界人が言うには「ツンデレ」というものがあるらしい。冷たい態度の後に好意を向けられると大抵の人が喜ぶみたいだ。私にはよく分からないが、高貴な貴族ともなると異世界人の高尚な考えも理解できるのかもしれない。
キョウカ様の症状が改善するかどうか分からないが、「デレ」を増やせばいいのではないかと思った。
根本的な解決にはならないかもしれないが、多少は精神が安定するのではとも考えた。
「なので、「ツン10回でデレ1回」、「1日1デレ」を目標に・・・・」
そう言いかけたところで、キョウカ様に遮られた。
「そこまで言うのなら、付き合ってあげましょう。結果が出なければそれ相応の罰を与えます」
それ相応の罰とは?
私は震えていたが、ここで引き下がってはならない。私は続ける。
「まずは、キョウカ様にとっても最も身近な存在であるミルカ様に「デレる」練習をしましょう」
そういうと私はキョウカ様の肩を揉み始めた。
「ちょっと!!一体何をなさるの?」
「マッサージです。私がキョウカ様にお教えしますので、後でミルカ様にやってあげてください」
こう見えて私はマッサージが得意だ。テイムした魔獣には大評判だ。人間にも効果があるみたいで、ミーナにしてあげたら大喜びだった。今もキョウカ様はうっとりした表情を浮かべている。
しばらくマッサージした後で、キョウカ様にも指導した。さすが1000年以上生きているハイエルフだけあって、すぐにマスターしてミルカ様にマッサージを始めた。
「お、お姉様・・・気持ちいい・・・本当にありがとうございます」
作戦は上手くいったようだ。私は自分で自分を褒めたくなった。しかし3日後、本当に後悔してしまう。
その日は突然キョウカ様に声を掛けられた。
「今日はあなたに私が直々にマッサージをしてあげるわ。私なりに改良したのよ」
そう言うとキョウカ様は私をベッドに寝かせた。キョウカ様のマッサージが始まる。地獄が始まった。体中のありとあらゆる場所に激痛が走る。
「ギヤー!!グワー!!」
思わず叫び声を上げてしまった。見ていたミルカ様の話では10分程度だったとのことだが、私には永遠のような長い時間に感じられた。しかし、終わってみれば今までになく、体が軽くなっていた。いい感じでツボが刺激されたのだろう。
「あくまで「デレ」の練習ですから。嫌ですが、これから毎日あなたにマッサージしてあげますわ」
(キョウカ様!!それは「デレ」とは言いません)
後日談であるが、キョウカ様のマッサージはキョウカ会のメンバーにも施術するようになり、「ツンデレマッサージ」として人気を博することとなる。
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