試練のパーティー
ダンジョンの視察を終えると私達は再びマスタールームに戻った。そこでヘンリーさんが提案をしてきた。
「今回の研修ですが、ナタリーとは別行動をしてもよろしいでしょうか。早速、明日から開始しようと思うのですが大丈夫ですか?それと私は一時的に「試練の塔」から離れるのは可能でしょうか?」
(もしかして私のポンコツ具合に耐えかねて、そんなことを・・・)
ミルカ様が答える。
「それで構いません」
「分かりました。ナタリーにはキョウカ様の専属メイドになってもらおうと思っています。キョウカ様もナタリーのことを気に入ってくれているようですし・・・」
「そうですね。昨日の食事会の感じからも姉とは相性が良さそうですし、一応姉に確認を取ってみます」
明日からというか、このときから別行動になってしまった。ヘンリーさんはロンメルさんに色々と質問することがあると言って、5階層に行ってしまった。私はというとパーティーのためのドレスアップをすることになった。
まずは体を綺麗にするために入浴することになった。そうしたところ、ミルカ様も浴室に入ってきた。間近でみると本当に立派なお胸だ。
「何か困ったことがあれば、遠慮なくいってくださいね」
「そ、そうですか?だったら・・・・」
私はミルカ様程ではないにしても、胸を少し大きく見せるドレスを用意して欲しいと要望したところ、すぐにスタッフに手配してくれた。
(これで少しは、みじめな思いをしなくて済む)
風呂から上がるとミルカ様と一緒にドレスアップする。私のドレスには胸を少し大きく見せる魔道具を取り付けているとのことだった。鏡で見るとこれで私もゴージャスな女になったと思ってしまった。
そんなことをしながら、メイクをしているとミルカ様が私に唐突に言ってきた。
「ミルカ様なんていう他人行儀な言い方はしなくていいわよ。例えば・・・お姉ちゃんとか・・・」
「ちょっとそれは・・・恐れ多いというか・・・」
「私も妹が欲しいなと思った時期があったんだけどね・・・・できれば研修の課題として・・・」
ミルカ様の話では、キョウカ様の症状を改善するにはまず、私とミルカ様が信頼関係を築くことが大事だとヘンリーさんに言われたらしい。なので、少し無理をして、言葉使いも変えて接してきたみたいだ。普段クールなミルカ様も頑張っているのだと感心した。
「ミルカ様がよろしいのであれば・・・じゃあ呼びますね・・・ミルカお姉様!!」
「あっ!!なんかいいかも・・・じゃあ私も・・・ナタリーちゃん」
「はい!!なんでしょうか?ミルカお姉様」
そんな感じで少しじゃれ合っていた。ミルカ様も久しぶりに笑ったと言って、楽しそうだった。
そんなとき、キョウカ様がやって来た。
私の悪い癖で、打ち解けると馴れ馴れしくなってしまう。調子に乗って言ってしまった。
「キョウカお姉様もこっちへ来て、遊びましょうよ。パーティーは三姉妹ということで出席したら面白いかもですね」
キョウカ様の顔が引き攣る。そして冷たい声で言ってきた。
「だったら望みどおり遊んであげますわ」
(本当に嬉しい、パーティーが楽しみだなんて久しぶりだわ・・・)
ミルカ様が念話で通訳してくれた。
「まずはそのドレスは脱いでこれを着なさい!!無駄に胸を膨らませて、詐欺師ですわね!!」
(胸の大きい小さいは関係ないわ。堂々としたらいいのに)
ミルカ様はお付きのスタッフに指示して、みすぼらしい廃棄寸前のメイド服を私に着させた。そして、なぜか魔獣に付ける鎖付きの首輪も付けられてしまった。
「あなたと姉妹なんて虫唾が走ります!!あなたは今日から奴隷です」
(姉妹だなんてうれしいわ!!それに専属メイドになってくれるんだから)
「そうですね。あなたに名前をあげましょう・・・今日からあなたは、アバズレ・ウソツキ・クソビッチです」
(名前は適当だと思います。お気になさらずに・・・)
パーティーが始まる前に気持ちが折れそうだ。ミルカ様の説明によると、嬉しくてテンションが上がり、普段より言葉がきつくなっているようだ。
そしていよいよパーティーが始まる。会場は人族の居住区にある最上級のホテルの一室を借り切って行うみたいだった。会場に着くと正装をした貴族達に出迎えられた。会場に入るとホテルのスタッフも締め出され、私達と参加者だけになった。
キョウカ様が一人一人声を掛けていく。まず最初にオルマン帝国の宰相、現皇帝の弟、公爵婦人の順番で声が掛けられた。ここでもミルカ様は念話で通訳してくれた。
「ブクブク太って、まるで白豚ですわね」
(仕事が大変なんでしょうね。ストレスでの食べ過ぎはよくないわ)
「血筋がいいだけのお馬鹿さん!!」
(王族は本当に大変だから頑張ってね)
「肌がガサガサですね。欲求不満じゃないの?」
(大丈夫?帰りにポーションをあげるわ)
そして、参加者に私とヘンリーさんを紹介する。
「このゴミどもは私の奴隷みたいなものです。お前達、こいつらに挨拶してやりなさい」
「ヘンリーです。分け合って家名は名乗れません。ご容赦ください」
出席している貴族たちに勝手に外国の貴族と勘違いさせる作戦だ。私も挨拶をする。
「ナタり・・・」
「ち・が・う・だ・ろ?!!!」
(先程いただいた名前を言ってください)
「アバズレ・ウソツキ・クソビッチです」
会場がどよめく。なぜ私はこんなことになったのだろうか?自問自答する。私は前世で悪いことをしたのかもしれない。
「ヘンリー、盛りのついたメス豚どもを相手にしておやりなさい。役立たずの男達は私のところまで来なさい」
キョウカ様の指示でヘンリーさんは女性陣のところに行き、談笑を始めた。私がキョウカ様の後ろで震えていると男性陣がキョウカ様の元に跪いた。
(時間が来たら男女を入れ替えて、お姉様と会話を楽しむのが通例です。私はヘンリーさんの案内しますので、しばらく念話はできませんので、頑張ってください)
そうなんですね。とにかく耐えるしかない。
キョウカ様と参加者の会話は、会話と呼べるものではなかった。ただ、キョウカ様が罵り、参加者が恍惚の表情を浮かべるといったものだった。しばらくすると、男性陣が下がり、女性陣がキョウカ様の前に跪いた。女性陣もキョウカ様の罵りに恍惚の表情を浮かべていた。
しばらくしてキョウカ様は言った。
「しばらく私は席を外します。その間、アバズレ達を虐めておやりなさい。虐め方が足りなければ、お前達が酷い目に遭いますわよ」
(私はこの人達にも虐められるのか・・・・)
そう思っていたが、そうはならなかった。私はなぜか、参加者に羨望の眼差しで見つめられている。そして宰相さんが声を掛けてきた。
「お嬢さんは素晴らしい才能をお持ちだ。キョウカ様に名前までいただけるなんて」
「そ、そうですか?」
「羨ましいかぎりだ。どうすれば、そんなに気に入られるのか教えてほしいくらいだ」
公爵婦人も会話に入ってくる。
「そうですわ。それにこんな立派なお洋服と魔道具の首輪をいただけるなんて・・・」
(この首輪は、魔道具なの?)
「それに比べて、ヘンリーさんはまだまだね。まあ気にすることはないわ。最初は相手にもされないから、根気よく頑張ってね」
ここでは、なぜかヘンリーさんよりも私のほうが評価が高いようだ。
冷静に考えてみる。貴族の男性陣は、昼間は骸骨騎士様にダンジョンでボコボコにされ、夜は夜でキョウカ様に虐め抜かれる。一体どういう神経をしているのだろうか?
私はオルマン帝国民ではないが、こんな人達が帝国の主要人物だなんて、オルマン帝国の将来が心配でならない。
気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!




