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<完結>ダンジョンコンサルタント~魔王学院ダンジョン経営学部のエリートが劣等生女子とともにポンコツダンジョンを立て直します  作者: 楊楊
第一章 ダンジョン研修

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試練の塔へ

私達が話を聞く相手は、大手ダンジョンチェーンミスタリアの会長でミーナの父親のラッセルさんだった。ミーナがアポを取ってくれたみたいだった。女子学生のプレッシャーに耐え切れず逃げ出したことは悪いと思っていたらしい。私は、気にすることはないと言っておいた。


私とヘンりーさんとミーナは会長室に案内された。応接室に入るとラッセルさんが気さくに声を掛けてきた。


「二人ともよく来たね。研修の時以来だね。ヘンリー君には本当に助かったよ。マーナも大喜びさ。ああ、もちろんナタリーちゃんの作った燻製肉も美味しくいただいているよ」


ラッセルさんの中では、私は所詮、「燻製肉の人」なんだろう。

それは置いておいて、本題に入る。


「追加研修のことはミーナから聞いているよ。研修先は「試練の塔」か・・・・マスターのキョウカ様は強烈だからな・・・・」


そう言って、ラッセルさんは話し始めた。ラッセルさんの話によるとダンジョン協会主催のダンジョンマスターの定例会で定期的に会うみたいだ。マスター会議に出席できるのはダンジョン協会が定めたB級ダンジョン以上のマスターらしく、私の実家のような零細ダンジョンは呼ばれないらしい。


「あそこはオリジナルダンジョンだし、ダンジョン協会に入らなくてもいいのだけど、なぜか加入してるんだ。噂では何かにつけて自慢しにくるために加入したんじゃないかと言われているよ」


ラッセルさんによると絶対に怒らせてはいけないらしく、最上級の女帝に対する態度で臨むようにとのことだった。


「マスター会議で席が隣にでもなったら、胃が痛くなるよ。ただ、妹のミルカ様は話の分かるお方だ。我儘なキョウカ様をしっかりとサポートしているしね。いろんなところで板挟みになって大変そうではあるが、何かあればミルカ様に相談するといいだろう。それとナタリーちゃんの燻製肉は好きだどいう情報があるよ。手土産に持っていったらどうかな」


アドバイスもくれた。

話に聞く限り、近寄らないほうがいい人のようだ。しかし、研修はしなければならない。まあ、ヘンリーさんがなんとかしてくれるだろう。

「試練の塔」やダンジョンマスターの情報を聞き終え、雑談していたところ、会長室のドアがノックされた。入ってきたのはマーナさんだった。

私達はマーナさんに挨拶をすると、ラッセルさんが言った。


「私とマーナ、それとヘンリー君は3人で話したいことがあるから、ナタリーちゃんはミーナと二人でカフェにでも行ってきなさい。私の名前を言えば、無料だから好きに食べていい」


私は、一体何の話だろうかと思いはしたが、無料でケーキが食べられることのほうが嬉しかった。カフェに着くとミーナと他愛の無い会話が始まる。


「ここのケーキ美味しいのよね。ラッセルさんには感謝だわ」


「そうそう。ところでナタリーは、お姉ちゃん達が何の話をしていると思う?」


「もしかして、ラッセルさんに『ヘンリー君!!うちのマーナを嫁にもらってくれ』とか言われてるかもしれないよ」


「あり得るかも?パパもお姉ちゃんもヘンリーさんのことは大絶賛していたからね」


「やっぱりヘンリーさんは凄いよね。でもヘンリーさんが『僕が本当に好きなのは妹のミーナさんです』とか言ってたらどうする?」


「ナタリーは恋愛小説の読み過ぎだって!!そんなことはないよ。でも、もしそんなことになったら・・・・」


「間違いなく修羅場だね」


そんな話に花を咲かせていたら、ヘンリーさんがカフェにやってきた。話し合いは終わったそうだ。ヘンリーさんに聞いたところ、詳しくは教えてくれなかった。もしかしたら本当に縁談の関係かもしれない。


そして次の日、いよいよ「試練の塔」に出発することになった。移動はダンジョン協会の本部が臨時の転移スポットを用意してくれていたので、それで移動した。移動した先は、ダンジョンのマスタールームみたいであった。周囲は目がチカチカするくらいきらびやかに装飾されていた。絵画や彫刻は素人の私が見ても、かなりの値段がすることが分かる。

マスタールームには金髪で白い肌、エルフの特徴である長い耳の絶世の美女が立っていた。特に目につくのはその胸だ。まるでメロンのようだ。


(同じ女性として、正直に羨ましい)


お召し物は白色の飾り気のないドレスを着ていた。


「ミルカ・カノンと申します。マスターの姉に代わりましてお出迎えに参りました」

私達を出迎えてくれたのは、妹のミルカさんだった。情報どおり、控え目な感じがする。


「ヘンリー・グラシアスです。研修をさせていただきありがとうございます」


「ナタリー・ヒューゲルです。これは私どもが精根込めて作った燻製肉です。お口に合えばよろしいのですが」


「お気遣い感謝します。あなた方が噂で聞いているとおり、姉は少し・・・ユニークな感じなので・・・。一応トラブル防止のため、簡単に説明させていただきます」


それからマスターのキョウカ様に接するときの注意点を教えてもらった。

本当にヤバイ人だ。粗方の説明が終わったところで、ミルカ様は私の顔をじっと見つめてきた。

そして大変つらい事実を突きつけられた。


「ナタリーさんにお伝えしたいことがあります。少ししか接していませんが、私には分かります。あなたは姉に激しく虐められると思います」


「えっと・・・はい?」


思考が追い付かない。いきなりあなたは虐められると言われても・・・。私が混乱していると、ミルカ様が話を続ける。


「あなたは、友達なんかから、よくからかわれたりしませんか?本気で虐めるのではなく、コミュニケーションの一環として」


「はい。この前の研修では一緒に燻製肉を作っていたおばちゃんから、よくからかわれました。でも、すごく仲はいいんですよ」


「分かります。あなたを見てると無性にからかったり、ちょっと意地悪をしたくなるんですよ。もちろんコミュニケーションの一環としてですよ。仲良くなればなるほどそんな風になりますよね。姉はそれのひどいバージョンだと思ってください。異世界語でいうツンツンツン・・・・×30、デレ、みたいな感じでしょうか」


「はっ、はあ・・・」


「多分ひどい言葉を投げかけられたり、ひどい仕打ちをされたりするでしょうが、姉なりの愛情表現ですので、我慢してください。慣れないうちは私が念話で同時通訳します。ところで念話の経験はありますか?」


念話とは、魔法によって直接、意思疎通をするものだ。かなり、魔力を消費するので廃れた技術だ。今では通信の魔道具が主流となっている。それでもかなりの魔力が消費される。私が「経験がない」と答えるといきなり、頭の中にミルカ様の声が響いた。因みにヘンリーさんは経験があるみたいだ。


(ナタリーさん聞こえますか?聞こえたら返事をしてください)


「はい聞こえます!!」


(声に出さずに答えてください。コツを掴めばすぐにできますよ)


私は意識を集中さた。


(ミルカ様、聞こえますか?)


(聞こえますよ。コツは掴めましたか?)


(多分大丈夫だと思います)


(注意点としては、慣れていないと隠したいことなどを相手に知られたりしますよ)


(分かりました。気を付けます)


(試しにちょっとやってみましょうか?)


(何をでしょうか?)


すると、ミルカ様のイメージに合わない卑猥な声が頭の中に響いた。


(ひっひっひ・・・可愛い娘だねえ。今日は何色の下着を履いているんだい?)


私はミルカ様に突然そんなこと言われてパニックになった。そしてこともあろうに大声で叫んでしまった。


「し、白です!!」


恥ずかしい。死にたい。ヘンリーさんが聞いてくる。


「何が白なんだい?」


「ヘンリーさん、念話で好きな色を聞いただけですよ。ナタリーさんは、まだ慣れていないようなので、声に出ることがあるのでしょう」

(ヘンリーさんのことはどう思ってるんだい?ところでどこまで行ったのかな?)


私は恥ずかしくて顔を真っ赤にして俯いてしまった。


「慣れたらこのように会話しながらでも念話できるようになります。因みに姉はこんなもんでは済まないですから」


私は絶望に打ちひしがれた。

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