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露草の持つ宝石  作者: 藤白 卯希
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未来と日記の終わり

 私は、一人きりの病室で呟くのです。しかし、その言葉は口にした瞬間、気体になりました。

自然と湧き出た涙は、顔の横に流れ拭うことも出来ず、耳にポタッと落ち、溝に留まった。涙のつたったあとが、乾いてそこだけ温度が下がっていきます。涙とは、こんなにも早く消えてしまうのですね。涙が下げた皮膚の温度だけが、それが存在していた証。この涙は、朝露。小さい頃に見た儚い宝石。たしか、持ち主は露草でした。

 涙と命が、空気の中に溶け出しているのが分かります。私が死んで、誰か泣いてくれるでしょうか。いや、少し考えれば分かることです。朝露が蒸発して消えたとして、朝露のために泣く露草があるのでしょうか。そんなことあるはずがないのです。あるはずが。だって、そんなことで泣いていたらきりがないもの。私のために泣いてくれだなんて言いません。だけど、せめてあなただけには、私のこと忘れないでほしい。なんて言葉を口にすることでさえ、今はおこがましく感じます。では、私が望むこととはなんでしょう。最期なのに、もう、見つかりそうにありません。でも、ひとつ思いつきました。朝のなかで死んでいきたい。



 今年の4月12日から日記をつけることにしました。

飽き性な私なので、たぶん日付はとびとびだと思いますが、とりあえず始めてみることにしました。どうして日記なんかつけ始めたかといいますと、苦手をひとつ克服してみたかったのです。日記は、いままで何回も挑戦してみましたが、長くて2週間ほどしか続けられませんでした。私には、毎日何かを欠かさず続けるという習慣がそもそもありません。あるとするなら、食べることと寝ることでしょう。しかし、これは生きている人間すべてが行っていること。なので、それ以外と言われても他に思いつくことがありませんし。

 そこで、今まで挫折を繰り返してきた日記にまた、手を出してみるのでした。せめて、次の春が来るまでは続けていたいです。毎日は絶対無理だと自分でも諦めていますので、一週間に1度書けてれば良しとすることにしました。今考えてみれば、ずいぶんと甘ったれた苦手克服だと我ながら思います。

 日記は、日々の出来事や思ったことなどを記録していくものです。

変わらない私の日々は、記録を残すほど価値のあるものとも思えません。そして、数日経つと気づくのです。最後に日記をつけたのは、何日だったか。日記を開いてみると、日に日に減っていく文字を見るたびに思うのです。また、無駄なことをしてしまった。どうして、いつもいつも同じことを繰り返してしまうのだろうか。結果の予想がついていたとして、懲りずに手を出してしまう私は、きっと馬鹿なのです。







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