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第7話 精霊と魔法

カーティスは、小さな石像を見つめている。

そういえば、こいつ____

野盗の存在に気が付かないくらい、夢中になってこの像を見つめてたな。


ウィル「話って、この像についてか?」


カーティス「ああ。その昔___この像には精霊が宿っていたそうだ」


スピカ「せ、精霊って! 小さくてかわいい、あの精霊さんのことですか!?」


カーティス「__まるで見たことがあるような口ぶりだね?」


スピカ「いや、その......イメージです! イメージ!」


カーティス「なるほど。それは面白いな。___私も見たことはないから、どのような見た目をしているかまではわからないがね」

「ただ、遥か昔には確かに存在し、信仰の対象にもなっていたそうだ」


ウィル「遥か昔って......今はもういないってことなのか?」


カーティス「わからない。ただ、かつてはその地を守り、人々との交流もあったらしい。今は精霊の存在自体、忘れ去られているがね」

「こうやって訪れる物好きな人間は、私くらいだろう」


スピカ「なんで......みんな精霊さんのことを忘れてしまったんでしょう?」


スピカは少し悲しそうな表情をしている。


カーティス「それを調べるために私はここに来たんだ。まあ、それだけではないんだがね」


そういうとカーティスは、その小さな石像にそっと触れた。


カーティス「……ふむ、やはり……つくられて……とほうもない……年月が……」


ぼそっと呟くその声は、部分部分しか聞き取ることができなかった。


それにしても____精霊か。

ファンタジー世界では、切っても切れない存在だが......

この世界にはもう存在してないってことなのかな。

ところで___


ウィル「なぁ、スピカ」


俺は小声でスピカに話しかけた。


スピカ「どうしたんです? そんなちっちゃい声で?」


スピカもつられて小声になる。


ウィル「さっきの、精霊が小さくてかわいいって......あれなんなんだ?」


スピカ「え? だって、アニメとかだと、精霊さんって背中に羽が生えて......小人みたいに小さいじゃないですか」


ウィル「......それ、多分妖精だな」


スピカ「......なにが違うんです?」


カーティス「一体なにを話しているんだい?」


ウィル「うわ!!」


気が付くと、カーティスは俺のすぐ隣にいた。

ビックリさせやがって。


ウィル「あ~......いやさ! 精霊ってどうやって生まれるんだろうな~って!!」


よくわからないやつに、あまりこっちの情報は漏らしたくない。

それに__ちょっと気になる。


カーティス「ふむ。 精霊はね、マナの集合体だと言われているんだ」


スピカ「マ......ナ?」


カーティス「そう。世界中に溢れているマナ。はるか昔、それらが多く集まる場所がいくつか存在していたようでね。そこから精霊が生まれたとされている」


スピカ「なるほど~......世界中にあるってことは、マナは空気みたいなものなんですか?」


スピカの言葉に、カーティスは首を傾げる。


カーティス「キミは本当に面白いね。魔法を使うのに、まるでマナを知らないような口ぶりだ」


カーティスの言葉を聞いて俺は瞬時に察した。

マナ......それは多分、この世界でいう魔力のようなものなのだろう。

そして、魔法を使うためにはマナを使う必要がある。

魔法使いがマナのことを知らないなんて......不自然にも程がある。


ウィル「え~っと! そ、それは......」


俺がなにか言い訳を探していると


カーティス「ん? その杖は......」


カーティスは、スピカの杖をじっと見つめている。


カーティス「なるほど、魔石がはめられているな」

「スピカ。もしかして君は、先ほどの氷の魔法以外は使えないんじゃあないのかな?」


ウィル「え!? そうなのか?」


スピカ「あ__確かにそうですね。意識を集中すると氷の棘は出てきますけど......それしかできません」


カーティス「やはり。それはこの魔石の効果だ」


スピカ「え~っと......どういうことですか?」


カーティス「本来、魔法というのは学ばなければ使えない。モノによっては、習得するのに多くの年月を費やすものもある。まあ、個々の資質にもよるがね」

「ただ、魔石自体に詠唱紋を刻み、武器に取り付けることで誰でも魔法が使えるようになるんだ。自身のマナは消費するがね」


ウィル「そうなのか__なあ、こういう武器は他にもあるもんなのか?」


カーティス「そこまで多いわけではないが、存在はしているよ。その昔、こういった武器を大量生産しようなどという試みもあったようだが__一つの魔石に詠唱文を刻むには膨大なマナを必要とする。先ほどスピカが使っていた初級の魔法でさえね」

「より強大な魔法となれば、気が遠くなるほどの年月がかかるだろう。人的コストがかかりすぎるということで、自然と作られなくなったというわけさ」


スピカは魔法使いってわけではないのか。

じゃあなんだ......フードファイターとか?


カーティス「これまで魔法を学んだことは?」


スピカ「いえ、一度もありません」


カーティス「なるほど。であれば......まあ知らないということもあるか。珍しい話ではあるが」


はぁ……良かった。なんとか納得してもらえたみたいだな。


カーティス「まあどちらにせよ、魔法を使えない者にとっては便利なしろも......」

そう言いながら杖に触れた瞬間、カーティスは一瞬目を見開いた。


そして__静かに口を開く。


カーティス「......この杖、どこで手に入れたんだい?」


スピカ「つ、杖ですか!? え、え~っと......」


ウィル「村のじいさんからもらったんだよ!」


あ~くそ! こうなったらもうヤケだ!


ウィル「俺たちずっと村から出たことがなくてさ! で、最近になって旅をし始めたんだけど......餞別がわりに持ってけって!!」


カーティス「ほう......因みにどこの村の出身なんだい?」


ウィル「言ってもわからね~よ! よそとの交流もないような村だしさ」


カーティス「そうか......いつか訪ねてみたいものだな」

「最近になって旅に出たということは、この大陸にある村ということかな?どこらへんにあるんだい?」


ウィル「大陸の……一番右下あたりかな」


カーティス「右下……」


なんなんだ!? なにかを疑ってる?

くそ! 何考えてんのか、全くわからね~!


カーティス「いや、すまない。好奇心が人一倍旺盛なようでね。気分を害したなら謝るよ」

「ところで、これからどこへ向かうんだい?」


スピカ「私たち、これからアグネス村へ行くんです。村長さんへのお使いを頼まれてまして」


カーティス「ほう? アグネスならここからすぐだね。ふむふむ......」

「良ければ、少しのあいだ同行させてもらってもいいかい?」


ウィル「え!? どうしてだよ?」


カーティス「私もそちらの方角に用事があってね。もうすぐ日も暮れる。どうせなら、一晩お世話になろうと思ってね」

「......迷惑だろうか?」


いやいや! そりゃ迷惑だよ!

ただでさえ何考えてるのかわかんね~のに!


カーティス「お礼と言っては何だが___良ければいくつか魔法を教えてあげよう」


スピカ「え!? 魔法ですか?」


カーティス「ああ。少し心得があってね。......習得できるかどうかは、キミ次第だが」


スピカ「やります! やりたいです!! __いいですよね!? ウィルさん!!」


あぁ......またそんなキラキラした瞳をして。

これで断ったら、完全に悪者じゃね~かよ。


ウィル「わかったよ。それじゃあ、とりあえず村まで行くか」


カーティス「ありがとう。では、改めて____よろしく。ウィル。スピカ」


ウィル「ああ、よろしくな」


スピカ「よろしくお願いします♪」


まあ、村で一晩過ごしたらそれで終いだ。

とりあえず、スピカにはボロを出さないように念を押しとかないと。

__ん?


街道へ向かおうとすると、像の前でスピカが両手を組んで目をつむっている。


ウィル「なにしてるんだ?」


スピカ「あ、すみません。ちょっとその......お話してました」


ウィル「はな......し?」


スピカ「はい。一人ぼっちで寂しかったんじゃないかなって。だから__また、遊びにくるからねって! 勝手に約束してました!」


ウィル「スピカ......」


スピカは生前、ずっとベットの上で生活をしてた。

詳しく聞いたわけじゃあないけど、

一人で過ごすことも多かったのかもしれない。

信仰を失って忘れ去られた精霊__

彼女には、他人事のように思えないのかもしれないな。


ウィル「うん、必ずまた来ような」


スピカ「はい♪」


スピカは、カバンの中から酒場の店主に包んでもらったサンドウィッチを取り出すと、像の前に置いた。


スピカ「お腹空いてたら......これ、どうぞ♪」


そう言うと、スピカは小走りで駆け寄ってきた。


スピカ「じゃあ、行きましょう!」


ウィル「ああ!」


もうすぐ日も暮れようとするころ。

俺たちは、謎の男カーティスを連れてアグネス村へと向かった。



スンスン......


・・・・・・


パクッ......


・・・・・・

・・・・・・

・・・・・・


「うんま!」









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