第30話 星の髪飾り
スピカ「カーティスさんと王女様.........あれ、絶対に恋人同士ですよね!?」
露店で売っていた焼き菓子や果物を一通り食べた後、スピカは思い出したかのように興奮気味に語り出した。
スピカ「王女様のことを話している時のカーティスさんのあのお顔.........はぁぁぁぁ。キュンキュンが止まりません......♪」
ウィル「でも、相手は王女だろ? いくら協会の会長職って言っても.......身分の違いとかあったりするんじゃないのか? まあ、この世界のことはまだよく知らんからなんとも言えないけど」
スピカ「それはそれで.......いいんですよ! 障害がある恋なんて........盛り上がるじゃないですか!」
なんか______
昼ドラみたいなこと言ってんな。
スピカ「ウィルさんは興味ないんですか!? カーティスさんの禁断の恋について!」
ウィル「いや......まだ禁断かどうかわからんし。そもそもまだ恋人同士と決まったわけじゃあ.......」
そう言うと、スピカは人差し指を立てて左右に振った。
スピカ「ちっちっちっ........甘いですね! この私の目は誤魔化せませんよ!? カーティスさんのあの目は........愛する人を想う時の目をしていましたから♪」
一体どんな目なんだよそれは。
それにしても_______
恋人か。
そういうのとは全く無縁の人生だったよな。
この子可愛いなとか思うことはあっても、誰かを好きになったことなんて一度もなかったし。
20年間ずっとそんな感じだから、ドラマとか映画観ててもそこらへんリアルに想像できなかったんだよな。
スピカは______
どうなんだろうか。
ウィル「スピカはさ........前の世界で好きな人とかいたのか?」
スピカ「いません! ずっとベッドの上で生活してましたから!」
ウィル「即答かよ!」
なんだよ!
あれだけ語ってたのに自分も経験ないのかよ!
まあ、ちょっと安心したけど.......
ん?
なんで、安心なんだ?
スピカ「どうかしましたか?」
ウィル「うおぉ!!」
やべぇ、なんかボーっとしてた!
ってか急に覗き込むなよ!
スピカ「なんか.......変な顔してますよ?」
ウィル「へ、変な顔とは失礼な!」
スピカ「えへへ♪ あ! あっちに人だかりができてますよ!? 行ってみましょう!」
そう言うと、スピカは広場へ向かって走り出した。
ウィル「ホント.......台風みたいなやつだな」
それにしても___
さっきはなんか、変に意識しちまったな。
あぁ、いかんいかん!
「ちょっとそこのお兄さん」
振り返ると、露店の店主が俺に声をかけているのがわかった。
小奇麗な恰好をした年配の女性。
店には銀や鉱石で作られた綺麗な細工が置いてある。
「一緒にいた彼女にプレゼントなんてどうだい? 値段はまけておくよ!」
ウィル「え? いやいや! あの子は彼女なんかじゃないって!」
「そうなのかい? じゃあ、お兄さんの片想い?」
ウィル「違うってば! あの子は仲間だよ。友達みたいなもんだ」
「へぇ? そうは見えなかったけど.......」
なんなんだよ急に!
今日は恋バナの日とかだったりすんのか?
どいつもこいつも愛だの恋だの。
でも_______
今、片想いって言ったよな。
ウィル「なあ........なんでそんな風に思ったんだ?」
「そりゃあ........」
「相手を想う目をしていたからね」
ウィル「どっかで聞いたなそれ........一体どんな目なんだよ」
「女にはわかるもんなのよ。そういうのに敏感なんだから」
「しかも、私の目なんて年季入ってるしね! 間違いないわよ!」
年季が入ってたら逆に見えなくなりそうだけどな_______
ふと視線をおとすと、ひとつの銀細工に目が留まった。
店には他にも沢山の品が置いてあるが_______
なぜか、それだけが特別目を引いた。
店主は俺の視線に気が付くと、それを手に取り俺に見せてくれた。
「これが気になるの? だったら.......1000グレミルにまけといてあげる!」
ウィル「1000!? 一日の宿代と一緒じゃねぇか!」
「バカね! ホントはもっと高いのよ!? でも、特別に売ってあげる! あの子にプレゼントしてあげなさい!」
ウィル「だから、彼女は友達みたいなもんなんだって!」
「友達にだってプレゼントくらいするわよ! それに.......」
「きっかけにはなるんじゃないの?」
ウィル「きっかけって.......なんのだよ?」
「なにかのよ」
意味不明だよ全く........
でも、なんでだろう。
俺は___
これを買わなきゃいけない気がした。
理由なんてわからない。
でも_________
なぜか.......そう思ったんだ。
*
スピカ「あれ!? ウィルさんどこに行ってたんですか?」
広場に行くと、人だかりがばらけていく中にスピカの姿を見つけた。
スピカ「今ここで大道芸人さんがパフォーマンスしてたんですよ!? もう、すぅぅごかったんですから!! 」
両手を一杯に広げて凄さをアピールしているが、これだけでは何が行われていたかは全く見当がつかなかった。
ウィル「悪い。ちょっと買い物してたんだ」
スピカ「えー!? なにを買ったんですか!? 食べ物ですか!?」
ホントに______
頭の中そればっかだな。
ウィル「これ........」
「スピカに似合うと思ってさ」
俺はさっき露店で買った銀細工をスピカに手渡した。
スピカ「これを.......私にですか?」
ウィル「ああ。気に入るといいんだけど」
スピカ「綺麗.......つけてみてもいいですか?」
俺が頷くと、スピカは早速その銀細工をつけて見せてくれた。
スピカ「どう......でしょう?」
水色の髪に銀の色が映える。
星の細工が日に照らされ、キラリと光を放った。
ウィル「すげぇ.......似合ってるよ」
スピカ「えへへ♪」
値段を聞いた時は正直「たかっ!」って思ったが.......
買って正解だったな。
それにしても______
本当によく似合ってるな、うん。
髪飾りに触れながら上機嫌にしていたスピカだったが、急に動きがピタリと止まった。
スピカ「あ......私、ひとつ思い出したことがあります」
ウィル「思い出したこと?」
スピカ「はい。好きな人はいなかったんですが.......理想の王子さまはいたんですよ」
「夢の中にたまに出て来てくれたんです。目覚めると顔も忘れちゃうし、何をしていたのかも覚えてないんですけど........」
「髪飾りをもらったことだけは覚えてるんです。銀色の.......鳥の髪飾りでした」
鳥の髪飾り___
鳥........
渡したのは.........
ウィル「悪かったな。鳥じゃなくて星でさ」
ふてくされたように呟くと、スピカは俺の顔をみてにっこりと笑った。
スピカ「大事にします。ずっと、ずっと♪」
ウィル「.......ああ」
まあ取り合えず、こんだけ喜んでくれてるし_______
今はこれでいいか!
スピカ「もうすぐ夕方ですね」
ウィル「ああ。取り合えずカーティスと合流しなきゃな」
夕焼け色に染まる空を見上げた後、俺たちはカーティスの待つ協会へと向かった。




