第27話 希望の芽
カーティスに案内されたのは、協会内にある客間だった。
「少し待っていてくれ」と言って部屋に残された俺たちは、言葉を交わすこともなく黙ってうつむいていた。
さっきのカーティスの言葉に驚いたからだろうか。
お互いに何を話したらいいのかもわからなかった。
それにしても_______
カーティスは、なにをどこまで知っているんだろう。
しばらくすると、カーティスが客間に戻って来た。
カーティス「すまない、待たせてしまったね」
ウィル「いや.........」
カーティス「その様子だと.......随分と驚いているようだね」
カーティスが席に着くと、途端に緊張が増した。
まずいな、一体なにを話したらいいのか_______
必死に言葉を探していると、スピカが先に話を切り出してくれた。
スピカ「カーティスさんは、どうして私たちが異世界からきたことがわかったんですか?」
たったそれだけのセリフだったが、緊張が少し和らいだ気がした。
すぐに本題に入ってくれたことで俺も覚悟が決まったんだろう。
カーティス「そうだね.......その説明をする前に、君たちがどういう経緯でこの世界に来たのか。そして、どんなスキルを持っているのかを聞いてもいいかな?」
俺たちはカーティスにことのいきさつを話した。
死んで女神アラネスに出会ったこと。
厄介なユニークスキルを授かったこと。
女神の力でこの世界に飛ばされたこと。
そして______
カーティス「なるほど........やはり、ここには来たばかりだったんだね」
ウィル「ごめん。本当はもっと早く話さなきゃいけなかったのに.......」
カーティス「いや、むしろ懸命な判断だよ。異世界からやってきたことが知れたら、それこそ大事になる可能性もある。最悪捕まって.......人体実験を受けることだって」
スピカ「えぇ!? そ、それはいくらなんでも怖すぎますよ!!」
カーティス「ふふ。まあ、それは流石に言い過ぎたね。だが、身を守るためには必要なことだよ。だから、謝らないでくれ」
良かった。
もしかしたら黙ってたことを咎められるかと思ってたけど_______
むしろ理解してもらえるとは。
カーティス「では、次は私の番だね。順を追って説明しよう。まず、スキルの変更に関しては_______可能だ。それは間違いない」
それを聞いて、俺とスピカは顔を見合わせた。
彼女はとても嬉しそうだ。
そりゃそうだよな_______
これで、理想の王子様に先立たれる可能性が100%ではなくなるわけだし。
カーティス「相手を死に至らしめるスキルと、死ねない身体........聞いたことのない非常に珍しいものだ。"生前の望みが色濃く反映される"というのであれば、この世界で授かるユニークスキルとは何か理が違うのかもしれないね」
「私としては非常に興味深いものではあるが_______君たちからしてみれば呪いのようなものなのだろう。問題を解消したいのであれば、ユークラテスへ向かうべきだ」
ウィル「じゃあ_____やっぱり酒場のおっさんが言ってたことは本当だったんだな! カーティスは、スキルを変更したことで強くなったんだろ? それで会長なれたって聞いたぜ!?」
カーティス「それは........半分正解で半分不正解だ」
スピカ「え~っと.......どういうことなんでしょうか?」
カーティス「スキルを変えたのは本当だ。もう5年ほど前になるかな。 ただ、それによって会長に推されたわけではないんだよ」
「なぜなら_______私は弱くなってしまったからね」
ウィル「弱く.......?」
いや、でも________
洞窟での戦いで、あれだけあった黒い球体を一瞬で消してたよな?
それまで余裕面してたゾーイがあんなに警戒するくらいだから.......
実力も相当なはず。
なのに、それでも弱いってのか?
カーティス「もともと私が持っていたスキルは”無限の叡智”と言ってね。この世界に溢れているマナを、自らのものとして扱えるスキルだったんだ。つまり___昔の私は、どんな魔法でも制限なく使うことができたんだよ」
マジかよ!
そりゃあ、とんでもないチートスキルだわ。
魔法ってのはその存在自体が反則みたいなもんだけど、だからこそ乱発できないようにMPとかで制限されてるもんな(RPG調べ)
それがないってことは、大技撃ち放題。
下手するとカーティスひとりで_______
ウィル「なぁカーティス.......世界征服とか.........考えたことある?」
カーティス「世界征服か........残念ながら、考えたことはないよ。ただ、以前の私であれば_______簡単にできただろうね」
やっぱり。
この世界の住人は、カーティスがまともな奴で助かったな。
カーティス「だが、今はそうもいかない。魔法を使うにも制限があるし、自身の限界を超えるような強大な魔法は使えなくなってしまった」
「皆が"銀の叡智"と呼ぶ者は_______5年前に死んだんだよ」




