第22話 村の守護者と大宴会
洞窟から出ると、村長のコーネルが駆け寄って来た。
どうやら、俺たちを心配してずっと入口付近で待っていたらしい。
ゾーイ討伐を報告したところ、とても喜んでくれたのだが___
すぐにカーティスがいないことに気が付き、顔が青ざめてしまう。
事情を説明し安心してくれたと思ったら、今度はイリアの存在に気が付いて腰を抜かしてしまった。
完全に情報処理が追いついてない感じで、なんだか少し気の毒だ。
イリアとは出会ったばかりだったので、ことのいきさつだけ簡単に説明した。
すると、その外見的特徴から昔洞窟で目撃された幽霊はイリアなのではという結論に至った。
月光浴をしているところを、たまたま村人のひとりが覗いてしまって勘違いしたんだろうと。
まあ、そんなもんだよな。
そもそも幽霊なんているわけないし_______
魔族はいたけど。
「で.......ご馳走はどこなの?」というイリアの言葉を合図に、村長は俺たちを宴の席へと案内してくれた。
*
村には大きな火が焚かれていた。
その周りには沢山のご馳走や酒が載ったテーブルがいくつも置いてある。
既に、宴の準備は整っていた。
コーネル「みんな聞いてくれ! 魔族の脅威は去った!」
「ウィルさん、スピカさん、カーティスさんが、この村を救ってくれたんだ!」
村長の呼びかけに、村の人々は歓喜した。
「やった.......本当にやってくれたんだ!」
「俺たち、助かったんだな.......」
「みなさん.......村を救ってくれて、ありがとうございます!」
俺はなんだか無性に照れ臭くなってしまった。
まさか自分が救世主扱いされる日が来るなんて______
にしても、隣にいるスピカは俺と違ってすっごいニコニコしてるな。
「ところで.......そちらにいらっしゃる方は?」
村人のひとりがイリアを見ながら口を開いた。
なんだか彼女を怖がっているようにも見える。
コーネル「........水の精霊様だ! この方も、魔族の脅威を祓うのに力を貸してくださったそうだ!」
「せい......れい?」
村人たちはイリアの姿に戸惑っている。
害があるようには見えないが、確かに少し場違いな見た目をしているし。
それに____
前にカーティスが言っていた。
精霊は既に忘れられた存在だと。
それもあって、精霊と言われても皆いまいちピンとこないのだろう。
せっかく魔族の脅威が去ったんだ。
これ以上、不安にさせるのもあれだし___
ウィル「彼女は、ここら一帯を守ってくれているありがたい存在なんだよ!」
スピカ「ウィル......さん?」
イリア「ちょっと........あんたなに言ってんのよ?」
ウィル「いいからいいから」
睨みを利かせてくるイリアをひとまずなだめ、俺は話を続けた。
ウィル「今回も村に魔族がいることを知って慌てて駆けつけてくれたんだ! 彼女の助けがなかったら.......正直どうなっていたか」
「そ.......そうなのか?」
「でも、今まで姿を見たことなんてないよな......?」
ウィル「恥ずかしがり屋だから、普段めったなことでは姿を見せないんだ! でも.......いつもみんなのことを見守ってくれている!」
「見守って......?」
お、いいぞ。
動揺はだいぶ収まってきているな。
あとひと押しできれば___
イリア「恥ずかしがり屋.......いつも見守ってる........ねぇ.......?」
「おまえ、あとで絶対シメルからな」
イリアの殺気を纏った視線がかなり痛い。
カーティス「どうかしたのかい?」
後ろからカーティスの声が聞こえた。
良かった。ちゃんと結界から出られたんだな。
スピカ「カーティスさん! あぁ良かった! 安心しましたよぉ........」
カーティス「ああ。心配かけたね。ところで_____これは一体?」
俺はカーティスに今の状況を説明した。
カーティス「なるほど______そういうことなら........イリア、少しいいかな?」
カーティスはイリアの耳元で何かを囁いている。
イリア「できるけど.......なんでわたしがそんなことしなきゃなんないのよ?」
カーティス「君のためになるからさ。信じてくれ」
「みなさん。精霊様から、この村にプレゼントがあるそうです」
イリア「はぁ..........」
イリアは杖を振り上げ、詠唱を始めた。
すると_______
ドドドドドドドッッッッ!!
何かが迫ってくるような音が地下から聴こえてくる。
そして____
ブシャァァァァァァアアア!!!
井戸から大量の水が噴水のように吹き出した。
コーネル「こ、これは!?」
カーティス「精霊様が井戸に水脈を繋げてくれました。これで今後は、湖まで水を汲みに行く必要はありませんよ」
「す、すげぇ」
「うお! ビショビショになっちまった! ハハッ!!」
カーティス「それと、みなさんにひとつお願いがあります______湖には小さな石像がありますよね? 精霊様は普段、石像の中で眠っています」
「今後は、定期的にお食事を供えてください。そうすれば、この村の平穏は守られるでしょう」
「お........おおおぉぉぉぉ!!!」
「水の女神様! ばんざーい!!」
「愛してるわ女神様ーーー!!」
「今度から女神様の分の弁当も嫁に作らせます!!!」
噴水パフォーマンスで村人たちの心は一気に鷲掴みにされた。
それにしてもカーティス___
本当に頭が良く回るやつだな。
イリア「........随分と面倒なことしてくれたわね?」
イリアは冷ややかな視線をカーティスにおくった。
カーティス「まあまあ。ご馳走という言葉にあれだけ反応していた君だ........定期的に美味しい食事にありつけるのなら、悪い話でもあるまい?」
イリア「はぁ.......だからってね~」
スピカ「ありがとうございます、イリアさん!」
イリア「な、なんであんたがお礼なんてすんのよ!?」
スピカ「みなさんが喜んでるのが........なんだか私も凄く嬉しくて!」
「だから......ありがとうございます♪」
イリア「べ、別にいいわよ、お礼なんて.....]
「それと.......呼び捨てでいいから。さん付けなんていらないわよ」
それを聞いて、スピカは一瞬驚いた表情見せた後_______
満面の笑みを浮かべた。
スピカ「うん! ありがとう、イリア♪」
イリア「ふ、ふん! まあいいわ! 取り合えず.........思いっきり食べるわよ!」
スピカ「おぉ♪」
イリア「ウィル.......あんたは酒を注ぎなさい」
ウィル「へいへい」
こうして村の宴は水飛沫とともに幕を開け、食って飲んでのどんちゃん騒ぎは夜遅くまで続いた。
因みに___
用意されたご馳走は、本来なら食いきれる量ではないはずなのだが........
フードファイター2名(スピカ、イリア)の爆食いによって、2度もおかわりが運ばれることに。
......このふたりの胃袋は、一体どうなってんだよ。




